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2003年5月掲載

米中韓、動乱の通信市場の全貌

中国

携帯電話市場が急拡大

米国 中国 韓国
ケーブルテレビを中心にブロードバンド化が進む米国、ADSL中心の韓国、そして、携帯電話網が急速に発展する中国の現状をリポートする。

 中国では、7つの事業者が電気通信サービスを提供しており、その加入者数を急激に増やしている。なかでも携帯電話の加入者数は2002年末において2億人を越え、既に米国を抜いて世界最大となっている。しかし、普及率で見ればまだまだ低く、依然として1ヵ月当たり400〜500万の新規加入者を獲得し成長を続けている。
 現在、「中国移動通信」と「中国聯合通信」との間で激しい競争が繰り広げられているが、今後は中国最大の通信事業者である「中国電信」が移動通信市場に参入することも考えられ、同市場における競争は今後ますます激しくなると予想される。

■中国移動通信、ボーダフォンと提携

 中国移動通信は、中国電信が3つの会社に分割されるのに伴い00年4月に発足した、中国最大かつ世界で最も多くの加入者を有する移動体通信事業者である。中国移動通信が中国国内10の省と自治区を、そして子会社の「中国移動通信(香港)」が残りエリアについてサービスを提供している。なお、中国移動通信(香港)は97年9月、香港で法人化され同年10月に香港およびニューヨーク市場に上場している。中国移動の動向で最も注目されるのが、ボーダフォンとの提携である。
 ボーダフォンは02年5月、中国移動通信(香港)の新株獲得に7億5000万ドルを投資し、同社への出資率を2.18%から3.27%に拡大した。中国移動通信(香港)は、新株の発行で得た資金により親会社から中国8地方のGSM(ヨーロッパ、アジアを中心に使われている無線通信方式)通信事業者を買収した。ボーダフォンは、今回の出資をユーザー数で世界最大の中国市場への進出拡大と位置付けており、長期的には中国移動通信(香港)の株式の20%取得を目指しているという。
 なお、ボーダフォンは既に北京に事務所を開設しており、同社と料金請求や顧客関連マネジメント、ネットワーク技術サービス、マーケティング並びに新製品開発等の分野での提携も強化していく方針である。
 また中国移動通信は02年10月、1ユーザー当たり月額使用料(ARPU)の向上とハイエンド・ユーザーのつなぎとめを狙い、マルチメディア・メッセージ・サービス(MMS)「彩信」のサービスを開始した。彩信の料金は1通0.9人民元(RMB)とコストを度外視してまず新サービスの普及を優先する。

■中国聯合通信、好調な成長カーブ

 中国第2の移動通信事業者の中国聯合通信は02年9月17日、中国の基本通信事業者としては初めて国内で株式を公開した。中国で国営の大型通信企業が株式を公開したのは初めてであったため、法人枠には39.2倍、個人枠には36.4倍の申し込みが殺到した。この人気からもうかがえるとおり、同社は確実にユーザー数を増やし事業を拡大させ、好調な成長カーブを描いている。
 02年から本格的に開始したCDMA(デジタル携帯電話方式の一つ)方式によるサービスは、当初は加入者の獲得が伸び悩んでいたものの、02年末には利用者が700万人を突破した。02年末現在のGSM利用者を合わせた全ユーザー数は6,800万余に達し、99年末時点ではわずか11%程度であった市場シェアが初めて30%を超えた。さらに株式公開で調達した資金などをCDMAネットワークの拡充に投入し、03年内にCDMAのユーザー数を2000万人に拡大する計画である。
 また、中国聯合通信は03年3月、「cdma2000 1x」方式の次世代サービス「ユー・マックス(U―Max)」を開始した。主要都市における数ヵ月間の試験サービスを経て、03年中にはすべてのCDMA網をアップグレードする見込みで、足早に3Gへの移行を進める。なお中国聯合通信は、05年までに携帯電話ユーザー数を8000万から1億人、市場シェアを35%までに高めることを目標に掲げるが、現在の好調さを維持すれば無理な数字ではない。

中国通信市場再編の流れ

■中国電信、最大キャリア、移動体に意欲

 中国電信は長く中国全土の通信市場を握っていた旧中国誘電部から94年に企業として分離したのが始まりで、02年5月に中国政府により旧中国通信の南方部分を分離して現在の形態となった、1億2,800万人の加入者を持ち、売上高110億ドル(約153億6000万円)を誇る中国最大の固定回線事業者である。
 中国電信は移動体通信サービスとして現在、「PHS(小霊通)」を提供しており各地でブームとなるほど非常に好調であるが、携帯電話市場参入に対しても強い意欲を見せている。その背景には、熾烈な通信市場での競争がある。確かに固定電話の市場価値も高く、市内通話に限れば中国電信の優勢は明らかであるが、今後「鉄通」などがライバルとなってくるであろう。また、長距離電話の領域はIP電話の勢いに呑まれれば、中国電信の絶対的な優位性が危うくなる可能性も大きいからだ。

躍進する中国の端末ベンダー

 MII(情報産業部)によると、現在中国では1ヶ月に平均450万台の携帯電話端末が販売されており、潜在市場は4億台とも8億台ともいわれている。このような喉から手が出るような巨大市場には30社を超える端末ベンダーが参入している。
 その市場は長年の間、モトローラ、ノキア、シーメンス、サムソン、アルカテルの海外主要ベンダー5社で80%を占めており、依然としてその影響力は大きい。しかしながら近年、中国の端末ベンダーも台頭してきており、そのシェアは02年末時点で約23%と01年の15%から約8ポイント上昇した。MIIが02年2月に公表したデータよると、02年の携帯電話売上ランキングにおいて中国ベンダーのTCLが4位にランクインした。さらに特筆すべき点は、国産メーカー3社の伸び率が300%以上と著しいことである。
 好調な中国ベンダーであるが、日本メーカーもパナソニックのカメラ付き携帯電話「GD88」がプレミアがつくほどの大ヒットとなるなどケータイ先進国の存在感を見せつつある。これまでわずか数パーセントのシェアに甘んじてきた日本メーカーであるが、立ち上がりつつあるカメラ付き、動画像配信、位置情報コンテンツなどの新市場を狙っており、日本での経験が大いに生かされる。

携帯端末の供給相関図

更なる競争

 中国政府当局は、今後2年以内をメドとして、中国電信と旧中国電信の北方部分を運営する「中国網絡通信」の2社にも移動電信営業許可書を譲渡することをほのめかしているほか、3G経営免許についても競売方式による発行を見直す方針を明らかにしている。予定通り進めば、03年5月にも関連規定が公布される見込み。いまのところ、中国移動通信がW―CDMA、中国聯通通信がcdma2000方式の3Gサービスを開始すると見込まれており、両陣営の市場争いが益々加速しそうだ。また、大唐電信がドイツのシーメンスと共同で国家プロジェクトとして開発した中国独自規格のTD―SCDMAも注目されている。
 開放が進む中国市場の中で外資参入が最も予想される産業の1つである同業界において、新規事業者の参入など競争が激しくなる中、各事業者がどのように対応していくか今後も注目される。

週刊エコノミスト 5/13日号に掲載

移動パーソナル研究G 吉川 誠
編集室宛>nl@icr.co.jp
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