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海外情報
2003年5月掲載

米中韓、動乱の通信市場の全貌

韓国

世界一のブロードバンド大国

米国 中国 韓国
ケーブルテレビを中心にブロードバンド化が進む米国、ADSL中心の韓国、そして、携帯電話網が急速に発展する中国の現状をリポートする。

 韓国の情報通信部(MIC)は、2002年10月に「ブロードバンドインターネットの加入者が1,000を越えた」と発表した。これは、世帯普及率にして約7割、人口普及率にして2割強となる。03年2月末時点での事業者別、回線別のブロードバンド加入者の内訳は表のようになっている。
 日本でもこの1年でブロードバンドの加入数が急速に伸び,加入者数は900万人を伺う勢いであるが、世帯普及率で比べるとまだ遠く及ばない。
 経済危機後の生き残り策をITに集中し当時の韓国政府が高速インフラの開発に対して強力な支援を行ったことが、急激にブロードバンドが普及した大きな理由の一つと言われている。キムデジュン金大中前大統領は就任直後に「知識基盤国家の建設」を提唱し、経済発展には情報化が不可欠であることを強く訴えかけている。

表 韓国のブロードバンド加入者数(2003年2月末現在)

(注)単位は人
出所:MIC(Ministry of Information and Communication)

xDSL ケーブル
モデム
アパート
LAN
衛星 合計
KT 462万5841 49万8309 5632 512万9782
ハナロ通信 118万4629  135万9675  38万6951 -  293万1255
ドゥルネット - 128万4963 8543 - 129万3506
オンセ通信 - 48万2172 6967 - 48万9139
ドリームライン 7万3075 8万7554 3663 - 16万4292
デーコム - 6万9630 7万4653 - 14万4283
その他通信事業者 5万4041 36万3632 12万9242 - 54万6915
合計 593万7586 364万7626 110万8328 5632 1069万9172

■セキュリーティ−が課題

 このブロードバンド先進国において、今年に入ってから大きな出来事が2つあった。1つは1月に起こった「ネット障害」、もう1つはその1ヶ月後の「新大統領就任」である。
 まだ記憶に新しい世界中で起こったワームによる「ネット障害」事件では、世界の中で韓国が最も大きな被害を被っている。この障害の直接の原因はある大手ソフトベンダーのデータベースプログラムのセキュリティ−問題であったわけだが、この問題は事前に通告され対策プログラムをアップデートすることも指示されていた。しかし、韓国ではセキュリティーに関する認識が甘く、加えて不正コピーのソフトウェアが多く出回っていたためこの問題に対応できなかった。この事件は世界一のIT大国を誇ってきた韓国に大きな衝撃を与えた。
 ただこの混乱は大きな転換点となったことは間違いない。情報通信部では「情報通信基盤保護法」の改正案をまとめ国会に提出することを決めている。また、KTやハナロ通信などのインターネットサービス事業者に対しては、リスク分散仕組みを整えるようにする一方、一定セキュリティ−を備えていない業者にはインターネットサービスを提供しないように規制する方針である。

■電子政府の具現化

 そして、この事件の1ヶ月後、韓国に盧新大統領が誕生した。今年2月に新大統領に就任したノムヒョン盧武鉉大統領は、韓国のブロードバンドとネチズンが誕生させたとも言われ、ネットを選挙活動にうまく結びつけたことが当選に大きく寄与したとされている。
 そのためか盧武鉉大統領は、ITに対する関心が非常に高い。前の金大中政権も強力にIT政策を推進してきたことは前述の通りであるが、盧武鉉大統領は前政権が推進したインフラを活用しさらに魅力的なものを実現する政策を打ち出している。一例として「電子政府の具現化」が挙げられる。
 現政権では、前政権が行政のオンライン化を実現した第1段階を引き継ぎ、第2段階として、行政、立法、司法機関における共通データベ−ス構築による国家業務改革(BPR)を推進する予定としている。これらの実現スピードを高めるため、国務大臣配下であった情報化推進委員会を大統領直轄に格上げし、IT首席のポストを新設する。
 世界一のブロードバンドインフラ大国となった韓国では今後「セキュリティ−対策の強化」や「アプリケーションの開発」を行い、そのインフラをより魅力的なものとするためにさまざまな政策を実行していく予定である。
 世界の通信業界を語る上で、今後も注目すべき国の一つであり続けることは間違いない

週刊エコノミスト 5/13日号に掲載

情報流通プラットフォーム研究G
大黒 能寛 daikoku@icr.co.jp
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