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Global Perspective 2011
2011年11月7日掲載

ケニア・ソマリア紛争〜Twitterによる攻撃宣言、注意喚起、戦況報告:「デジタル・デバイド」が生む「犠牲の格差」

グローバル研究グループ 佐藤 仁
[tweet]

 2011年10月にケニア軍がソマリアへ進軍したことは周知の事実だ。
今回は、紛争におけるインターネットの活用と在り方について見てみたい。

Twitterによる攻撃宣言、注意喚起、戦況報告

 2011年11月2月、ケニア軍スポークスマンの公式Twitterにおいてソマリアの10都市を攻撃する宣言を行った。

 攻撃宣言では、以下のようにツイートしている。

"BAIDOA, BAADHEERE,BAYDHABO,DINSUR, AFGOOYE,BWALE, BARAWE,JILIB,KISMAYO and AFMADHOW will be under attack continously"

 さらに上記ツイート直後に、以下のようにツイートしてソマリアの10都市にいる親族や友人たちに注意喚起を行っている。

"The Kenya Defence Forces urges anyone with relatives and friends in the 10 towns to advise them accordingly."

 ケニア軍の公式Twitterでは、さらに紛争の現状も「#OperationLindaNchi」のハッシュタグを付与してツイートしている。攻撃宣言を開始してからフォロワー数も約2,800から、2011年11月7日現在では約5,000に増加した。

 以下のようなツイートが行われ、近況がネットを通じて報告されているので抜粋していくつか紹介したい。

11月3日、ケニア軍は無事であるという戦況が伝わるツイート

"Our Forces are safe, Our mission on course, the enemy militia on the run and our efforts trained on destroying weapons delivered yesterday"

 11月3日、攻撃報告で戦況が伝わるツイート

"We will destroy all weapons delivered by two planes in Baidoa yesterday, we will make them impossible to use"

ケニア軍スポークスマンのEmmanuel Chirchir少佐は以下のようにもツイートして、ケニアのメディアやソーシャルメディアユーザに対して批判や意見を求めている。

"I salute Kenyan media and social media users, you are doing this country a great  favour in #operationlindanchi both in critic and opinion"

ケニア・ソマリア国境付近でロバの売買をしているケニア人に対して、ソマリア人にはロバを売らないように警告を行うツイートをしている。

"Kenyans dealing in donkey trade along the Kenya-Somali border are advised not to sell their animals to Al Shabaab"

更には、以下のようなツイートでケニア国民へ警戒の忠告と同時にケニア軍によって守られているから安心するように呼びかけている。

"I urge Kenyans to remain vigilant, BUT to enjoy life and be assured that Kenya is protected by its soldiers despite threats by Al Shabaab"

11月5日は、Twitterなどソーシャルメディアを活用したことは非常に良い決断であったとツイートしている。

“One of the best decisions - to join Twitter, Scribd,Facebook and now You Tube anywhere else i need to be? I love the Kenyans here”

などのツイートが続いている。またフォロワーへもリプライを返している。

紛争時のインターネットの活用

 ここ最近の国際社会での安全保障問題はサイバー攻撃に関するものが注目を集めていた。2011年7月にはアメリカがサイバー攻撃も戦争とみなすと宣言した。2011年11月にはロンドンで「サイバースペース会議」が開催され、キャメロン首相らも参加し、サイバー世界での安全保障に関しても議論された。アメリカからはヒラリークリントン国務長官が出席予定だったが、急遽母親の病気で参加が出来なくなり、バイデン副大統領がビデオ中継で参加した。日本からも山根外務副大臣が参加した。

 今回のケニアとソマリアの紛争はリアルな紛争である。そのリアルな紛争での攻撃宣言、注意喚起、戦況報告を軍の公式Twitterを通してネット上で行うというのは新たなスタイルとして注目に値する。

「デジタル・デバイド」から「犠牲の格差」へ

 一方で、ITUの発表している統計によると、インターネット普及率は2010年ケニアが20.9%、ソマリアは2009年に1.1%である。(2010年はデータなし)
ネットを見ることができる環境にいる国内外の人々は、これらのツイートで状況を把握することが可能かもしれないが、実際に現地にいる人々にケニア軍のTwitterでの攻撃宣言、注意喚起がいったいどれだけの人に届くことができているのであろうか。

 本当にこのような情報が必要な人々に情報が届かないで犠牲になってしまうこともあるだろう。

 ネットを介した紛争時の攻撃宣言、注意喚起、現状報告というのは今後の紛争時の情報伝達手段として新たな方式になるだろう。また、今までは反戦の署名を集めたり、政府間での交渉に頼らざるをえなかったが、国際社会はネットを通じて一般市民の戦争反対の声を直接政府、軍に伝えることもできる。今回のケニア軍もいくつかのリプライを返してフォロワーらとコミュニケーションをしている。

 紛争時のメディアの在り方が変わりつつあることが理解できる。しかし、21世紀のリアルな紛争、内戦、武力行使の犠牲となる人々はインターネットにアクセスして情報収集することができる環境にはいないことが多いだろう。情報にアクセスできる人々とできない人々との「デジタル・デバイド」が紛争時の「犠牲の格差」を生じることが大きな問題になる可能性が想定される。紛争終了後に、何らかの形式で事前に通知していたという人道的な立場からも国際社会からの非難は軽減できる可能性がある。しかし何らかの形式としてネット(Twitter)を用いたとしても、どの程度の人にまで情報が届き、攻撃前に避難することができるかが重要である。他にはICTの活用例としては、携帯電話でのSMS(ショートメッセージ)を活用した周知方法なども考えられる。いずれにせよ携帯電話の保有率やSMSを読める識字率を考慮する必要があるだろう。

 今後は「デジタル・デバイド」が紛争時の「犠牲の格差」につながる可能性が出てくることを国際社会は認識する必要がある。

 願わくは、あらゆる形式の紛争がなくなることを祈願している。
今回のケニア軍の戦況を伝えるツイートも早く終わり、平和になることを祈願している。

(参考サイト)ケニア軍スポークスマン公式アカウント

【参考動画:今回の両国の紛争問題とケニア軍広報担当Emmanuel Chirchir少佐(2011年10月)】
Twitterで情報収集ができるような環境ではないことが伝わってくる。

(参考)

*本情報は2011年11月6日時点のものである。

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