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Global Perspective 2012
2012年8月1日掲載

インドネシア:若者中心に人気急上昇のLINE、拡大するモバイル広告市場

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年7月26日、NHN Japanは、「LINE」の登録ユーザー数が、全世界で5,000万人を突破したことを発表した。LINEはユーザー同士であれば国内・海外を問わず、無料で音声通話やメッセージが利用できるアプリである。2011年6月23日にサービスを開始してから約1年後の7月2日には、登録ユーザー数が全世界で4,500万人を突破(日本国内で約2,000万)した。その後も、1週間に100万人以上のペースで利用者数が増えており、4,500万達成から約3週間で5,000万(日本国内で約2,354万)を突破した。なお、5,000万を達成するのに要した期間はサービス開始後399日。Twitterが1,096日、Facebookが1,325日なので、LINEが急速なペースで増加していることが伺える。

今回はLINEを皮切りにインドネシアのモバイル市場概況を見ていきたい。

LINE、インドネシア通信事業者Telkomselとの提携

2012年7月にLINEはKDDIと提携したほかに台湾の通信事業者VIBO、タイの通信事業者AISと提携した。さらにインドネシアTelkomselとも業務提携を行った。現在インドネシアはラマダン(イスラム教徒の断食)の時期だが、ラマダン期間限定でキャンペーンを行っており、さらにテレビ広告も放送している。LINEのほかにインドネシア版のタウンページのようなサービス「Love Indonesia」などのサービスへのアクセス費用に特別割引料金が適用されるキャンペーンを実施している。

Telkomselでは2010年2月にはNimbuzz、2011年10月にはSkype、2012年4月にはWhatsAppとも提携していたことがある。同社はインドネシアではシェア1位の通信事業者であるが、インドネシアにおける通信事業者の市場競争は非常に激しい。学生や若者は少々サービスやカバレッジが悪くても1ルピーでも安い事業者のSIMを購入する傾向が強い。事業者は様々な差別化を図ってサービスを提供している。

Telkomselでは、LINE向けにスタンプ(インドネシアではスティッカー)を無料で提供している。「Blob」というキャラクターのようだ。かわいいキャラクターは全世界の若者に受け入れられるのであろう。インドネシアでもLINEのスタンプ(スティッカー)は大人気である。今後もますますインドネシアにおいてLINEは拡大していくことが予想される。

(図1)LINE(インドネシア)のスタンプ(スティッカー)の
Telkomselのキャラクター
(図1)LINE(インドネシア)のスタンプ(スティッカー)のTelkomselのキャラクター

若者が多いインドネシアではソーシャルメディアが大人気

インドネシアはFacebookのユーザーが2012年7月末現在で、約4,400万いる。アジアではインドについで2位で世界でも4位である。昨年まではアメリカに次いで世界2位だったがブラジル、インドでのユーザー数増加に伴って4位になったが、今でも着実に増え続けている。人口が約2億4,200万(世界銀行)のインドネシアではFacebookの普及率も約18%程度でまだまだ普及の余地は多いにある。
Twitterも大人気である。Semiocastの調査によると2012年6月現在、インドネシアには2,940万のTwitter利用者がいて世界5位である。さらにジャカルタはツイートが発信される都市1位である。(東京は2位)

インドネシアは他の新興国同様に若者が多い。インドネシアの平均年齢は28.2歳(男性:27.7歳、女性:28.7歳/ CIA World Fact book 2011)である。(日本の平均年齢は約44歳)

FacebookやLINEといったソーシャルメディア、コミュニケーションアプリは若者を中心に大人気である。一人でいくつものサービスに登録して使い分けており、FacebookやLINE以外ではWeChat、Path、WhatsAppの人気が高い。

(図2)インドネシア(上)と日本(下)の人口ピラミッド(2010年)
日本と比較すると圧倒的に若年層が多いことがわかる。
(図2)インドネシア(左)と日本(右)の人口ピラミッド(2010年) 日本と比較すると圧倒的に若年層が多いことがわかる。)
(出所:アメリカ統計局 国際データベース)

ジャカルタなどの都市部の若者の多くが、街のコンビニエンスストア(インドネシアではコンビニ内に座席がある店が多く、店内で購入したものを食べている)やスターバックスのようなカフェ、マクドナルドのようなファーストフード店や大学の構内には若者が多く集まって、携帯電話やスマートフォンを触っている。インドネシアは1年中暑いので、涼を求めて店舗にやってくる。そのような店舗ではたいてい無線LANの利用が可能である。

インドネシアのスターバックスは日本と同じくらいの値段で、インドネシアの物価を鑑みると安いとは言い難い。そして彼らはカフェなどに何時間も座っていることが多く、店内では携帯やスマホでFacebookやらLINEを楽しんだり、友達同士で喋ったりしている。次々とスナックやら飲み物を注文しているので、店舗にとってもそれほど迷惑ではないようだ。店舗側もソーシャルメディアを活用して積極的な宣伝やクーポン配布などを行っており、マーケティングツールとして多いに活用している。ネットやモバイルがなかった頃からインドネシア人は老若男女を問わずにクーポンや割引券が大好きであった。

(図3)インドネシアのセブンイレブン店内(左)とスターバックス(右)
コンビニでは座席があり、購入したものをその場で食べながら、多くの人が携帯電話を操作している。 スターバックスも日本やアメリカとほぼ同じ。
(図3)インドネシアのセブンイレブン店内(左)とスターバックス(右),コンビニでは座席があり、購入したものをその場で食べながら、多くの人が携帯電話を操作している。スターバックスも日本やアメリカとほぼ同じ。
(筆者撮影)

インドネシアで急拡大するモバイル広告

2012年6月、モバイル広告会社のインモビは、インドネシアのモバイル広告市場が急速に拡大していることを発表した。特にAndroidのスマートフォン向けの広告が大きくシェアを伸ばしている。

同社によると2012年5月までの1年間でのインドネシア・モバイル広告市場のインプレッション数は270億回と前年から99%増加した。スマートフォンでのインプレッションは昨年から123%増加しており、インドネシアにおけるスマートフォンの拡大が覗える。

かつては、インドネシアだけでなく諸外国ではSMSを送付してくるテキストの広告が主流だったが、これからはスマートフォンを対象にしたアプリやバナーなどの広告とテキスト広告が並存していくことになるだろう。スマートフォンにもSMSのテキスト広告は頻繁に送付されてくる。インドネシアではテキスト広告の内容として、通信事業者からのサービス案内、不動産、車、金融商品のセールスや紹介などをよく見かける。

(図4)インドネシアでのモバイル広告概要(インモビ 2012年)
(図4)インドネシアでのモバイル広告概要(インモビ 2012年)

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まとめ

インドネシアは若者が多く活気に溢れている。人口も2億人以上である。今後もモバイルを軸にしてますます多くの周辺産業が発展していくだろう。今後もインドネシア市場には注目である。

【参考動画】Telkomselのテレビ広告(2012年)
LINEや「Love Indonesia」の利用促進を訴求した内容になっている。

WhatsAppやOpera miniの利用促進を訴求したテレビ広告

(参考)

*本情報は2012年7月28日時点のものである。

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