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2012年10月12日掲載 |
2012年10月8日、米下院情報特別委員会は華為技術(Huawei)および中興通訊(ZTE)がアメリカに対する国家安全保障上の脅威であるとの文書を公表した。 Huawei全体の売上に占めるアメリカでの割合は約4%、ZTEは2-3%と報じられている。中国メーカーがアメリカにおいて、アメリカ人の雇用を奪っているということはないので、今回の報告書は経済的な理由によるものではなく、安全保障の観点からアメリカが中国に対して懸念を抱いていることが伺える。 サイバーセキュリティをめぐる米中での新たな冷戦2012年9月に訪中したクリントン国務長官は、米中での今後のサイバーセキュリティの協力関係を申し出た。それに対して中国の楊外相も同調した。(参考レポート) 冷戦期の米ソ関係との違いは、サイバー攻撃を仕掛けてくるのは国家だけではない。サイバースペースをめぐる攻防は国家間だけでなく個人でも参戦が可能な世界である。どこの誰が攻撃してきたかわからないのが特徴であり、そこは米ソ冷戦期のミサイル・核競争とは大きく異なる。 世界が注目するサイバーセキュリティをめぐる米中関係今回のアメリカの発表は中国や諸外国に対しての抑止力にはなったかもしれない。しかし、現在はグローバル化が発展した時代である。「人・物・金・技術」の移動が活発なグローバル化社会において、HuaweiとZTEの2社を封じたところで、本当にアメリカのサイバースペースは防衛できるのだろうか。 かつて冷戦期には、COCOM(Coordinating Commmittee for Multilateral Export Controls:ココム)が存在した。これはアメリカを中心とした資本主義諸国が、ソ連を中心とした共産主義諸国に対して軍事技術や物資の輸出規制を行っていた。これは資本主義側諸国の技術が敵対する共産主義圏で活用されないようにすることが目的であった。現在でもアメリカはイラン等特定の国との輸出規制は存在している。 一方で、現代社会のサイバースペースを構成するソフトウェアやハードウェアなど民生インフラは全世界でコモデティ化している。特にインターネットのような全世界と相互接続性のあるオープンな技術開発においては、世界中で開発、製造され流通することによって規模の経済も働くようになる。アメリカだけに特化した製品を開発していくことはアメリカにとってもメリットは少ない。また人口10億を超え世界経済の一角を担う中国を無視することもできない。世界中で大人気のiPhoneも中国で製造されている。 今回のアメリカの発表を受けて、カナダや欧州委員会も動き出しているとロイターは報じている。実際、2012年3月にはオーストラリアでの国家ブロードバンド網設備の入札においてHuaweiの参加を禁止したことが報じられている。 今回のアメリカの中国大手2社に対する報告書は、サイバーセキュリティをめぐって米中間の緊張関係が高まるだろう。一方で、サイバーセキュリティにおいて米中間は対立関係だけでなく、今後なんらかの協力関係も構築されていくことも全世界が注目している。 【参考動画】 *本情報は2012年10月10日時点のものである。 |
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