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Global Perspective 2012
2012年10月18日掲載

インド:携帯電話SMSを活用した輸血情報サービス:克服すべき課題

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年10月1日、インドの通信事業者Vodafone Indiaが緊急時の輸血サービス登録サービスを開始した。輸血提供者の検索と輸血提供者としての登録が可能である。IndianBlooddonors.comと提携してサービスを提供する。
利用者はドナー登録時に自分の電話番号をSMSで登録することができる。血液を必要な人がいた場合にその電話番号宛にSMS(ショートメッセージ)が送付されるというシンプルな仕組みである。また登録しているドナーの検索を行うことも可能である。
インドでは既に同様の輸血登録者サービスを現地通信事業者のAirtelやTata DOCOMOが提供している(参考レポート)。

インドにおける輸血での課題:文化・社会的問題

2012年10月1日、インドの通信事業者Vodafone Indiaが緊急時の輸血サービス登録サービスを開始した。輸血提供者の検索と輸血提供者としての登録が可能である。IndianBlooddonors.comと提携しインドではまだ輸血に対する下記のような課題が残っている。

(1)輸血によるHIV感染が多く安全ではない
  2011年9月には、インド西部グジュラート州のジュナガド地区で無料での輸血によって23人の子供がエイズに集団感染したことが報じられた。
 採決や輸血の過程で確認し、回避することができるだろう。

(2)同性愛者からの輸血を受け付けない習慣が根強い
 インド品質委員会(QCI)は輸血によるHIVや伝染病の肝炎の患者を減らすことを目的として、輸血用血液の安全性確保のためインド全土にある2,635箇所の血液バンクに委員会を設置し、対策と啓蒙活動を行っている。

(3)異なるカーストからの輸血を受け付けない習慣が根強い
特に農村地域にはその伝統が残っており、国土が広く血液センターや医療機関の整備がまだ遅れているためにドナーの大部分は近親者、もしくは同じカーストの知人になってしまう。
異なるカーストからの輸血拒否については、インドの長い歴史と社会的な風習に依拠する部分が多いため、一朝一夕で解決できるような問題ではない。長い時間がかかるだろうし、我々外国人が容易に対処できる問題ではない。

SMSによる輸血情報サービスにおける課題

今度は、携帯電話SMS(ショートメッセージ)を活用した輸血情報サービス側の課題を見ていきたい。

インドだけでなく新興国においては、携帯電話はプリペイド方式が主流である。インドにおいても90%以上がプリペイドである。そして1人で何枚ものSIMカードを保有しており、その都度必要に応じて使い分けを行っている。プリペイドなので、必要な時に使いたい分だけチャージして利用するので、基本料金がかかることがないので1人で複数枚持っている。そのため、ほとんどの国において携帯電話普及率が100%を超過している。通信事業者も利用者獲得に向けて様々なキャンペーンなどを行い、利用者はその度に新しいSIMカードを購入する。つまり新しい番号を入手することになる。1人が複数のSIMカードを保有しているということは、1人が複数の電話番号を保有しているということである。2012年9月時点で、インドでの携帯電話加入者数は約9億2,200万である。
またインドでは番号ポータビリティが2011年から導入されて、2012年7月までの約5,900万人が利用している。

携帯電話が普及し、1人で複数の電話番号を保有するようになると、利用者に善意があって輸血サービスに登録したとしても、実際に血液を必要な人がいた場合、その人とコンタクトすることができなくなってしまうことがある。登録した時の番号のSIMカードがどれだかわからなくなってしまったり、その番号は番号ポータビリティで違う事業者のものになっていて、輸血サービス提供のメッセージが送信されないこともある。
 これではせっかく輸血の意思がありドナー登録してくれても、血液が必要な時に本人を見つけることができないということになってしまう。
 これはドナー登録者各人の意識と運用上の問題で回避できるだろう。

輸血に対する偏見が根強く残るインドにおいて、携帯電話のSMSを活用した新たな輸血登録サービスが登場したことによって簡単にドナーになることが可能になった。

一方で、インドにおける携帯電話の爆発的な急増に伴った「連絡先不明の状態」が血液提供時の足枷にならないような運用と登録者の自覚に期待したい。

【参考動画】
インドでの輸血を推奨する広告
最後の”Don’t think too much” こそ、輸血に対する偏見が残っているインド国民へのメッセージだろう

輸血をしても体力が落ちないことを訴求するインドの広告

(参考) インド:携帯電話SMSを活用した輸血情報提供サービス

*本情報は2012年10月3日時点のものである。

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