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Global Perspective 2012
2012年12月5日掲載

シリア:インターネット遮断にみる「コミュニケーション手段」の重要性

(株)報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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シリアでの内戦が続いていることは周知の事実である。そのシリアで2012年11月29日、インターネットへのアクセスが9割以上遮断されたと報じられている。2日後の12月1日には復活している。テロリストによるケーブル切断だと報じられている。シリアでは2011年6月にもインターネットへのアクセスが遮断された。シリアでのインターネット普及は15%程度であるが、アクセスが完全に遮断される影響は小さくない。

(図1)CloudFlareによるシリアからのインターネットのトラヒック
2012年11月29日11:00から2012年12月1日14:45までシリアからのトラヒックがないことがわかる。
CloudFlareによるシリアからのインターネットのトラヒック
(出典:CloudFlare)

「Speak To Tweet」:携帯電話からのつぶやき

シリアでインターネットが遮断されてから、Googleでは、携帯電話(音声)でつぶやいた内容をTwitterに投稿できるサービス「Speak To Tweet」を提供した(注1)。同サービスは、2011年1月にエジプトでの革命の際にも提供された(参考記事)。当時エジプトでは多くの投稿があったが、今回のシリアでは当時のエジプトに比べると多くなかった。一部の報道によると首都ダマスカス周辺では携帯電話の回線も止まっていたと言われているので、それが原因かもしれない。携帯電話回線も止まっていたとしたら、電話が通じないので同サービスの特徴である「携帯電話の音声による投稿」も利用できない。

「コミュニケーション手段」としてのインターネットと携帯電話

今回、シリアでは2日後にはインターネットは回復し、携帯電話も現在は正常なようだ。
 インターネットも携帯電話も現代社会では日常的かつ常識的なコミュニケーション手段になっている。インターネットが遮断されることは外部世界からの情報を遮断されることであると同時に、自らが世界に向けた情報発信手段を断たれることである。
さらに携帯電話が不通になると、家族、友人、知人らとのコミュニケーションが断たれる。インターネットと携帯電話はコミュニケーション手段として日常生活で当たり前の手段(ツール)になっている。
 シリアではインターネットのアクセスは日本や欧米のように自由ではない。しかし、アクセスそのものが遮断されてしまっては何らコミュニケーション手段が無くなり「陸の孤島」になってしまう。
今回のシリアでのインターネットと携帯電話の遮断はコミュニケーション手段としてのインターネットと携帯電話の重要性を改めて世界中に認識させることとなった。

そしてそれらを支えるネットワーク・インフラストラクチャーが保守され正常な通信ができることの大切さを考えさせられた。平時、戦時を問わずネットワーク・インフラストラクチャーは国民生活の「コミュニケーション手段」を支える「なくてはならない重要なインフラ」である。そのため、戦時において物理的攻撃の標的とされてしまう。
 インターネットや携帯電話が「いつでも自由にアクセスできて、好きなことを発言できる」環境が当たりであることがどれだけ恵まれたことなのか、国際社会は改めて認識した。

シリアの携帯電話事情

最後にシリアの携帯電話事情を見てみよう。
シリアの携帯電話加入者数は約1,300万(普及率約60%)。主要通信事業者はSyriaTelとMTN Syriaの2社である。90%以上が2Gでプリペイド方式を利用している。3Gも導入されているが両社合計で約70万加入と全体の5%程度である。

通信事業者 加入者数(シェア)
SyriaTel 約700万(54%)
MTN Syria 約600万(46%)
(2012年12月2日時点では上記2社のサイトへはアクセス可能)

【参考動画】シリアでのインターネット遮断を報じているニュース(2012年)

※1 2012年11月30日Google Plusで「Speak To Tweet」の提供を発表。
但し、同サービスは所定の電話番号に電話をしてボイスメールを残すことによって投稿ができるので、シリアからの投稿かどうか不明である。
https://plus.google.com/+google/posts/dKiBsQq6nxw#+google/posts/dKiBsQq6nxw

*本情報は2012年12月2日時点のものである。

(参考)

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