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2013年5月31日掲載 |
2013年5月19日のNew York Timesによると、中国軍からアメリカ企業などに対して再びサイバー攻撃が行われていると報じた(※1)。5月28日のWashington Postでアメリカ軍の戦闘機や輸送機などの最新技術情報が中国からのサイバー攻撃によって盗まれていると報じた(※2)。まだまだ米中でのサイバー攻撃は終わらない。 繰り返される米中でのサイバー攻撃中国軍によるサイバー攻撃を巡っては、2013年2月に米情報セキュリティー会社Mandiantが「人民解放軍の部隊が関与している」とする報告書を発表し、軍総参謀部所属の「61398部隊」による攻撃だと明らかにした(参考レポート)。この発表直後に中国からのサイバー攻撃は停止したが、2か月前から新たなサーバーを使って攻撃を再開してきており、以前の60%〜70%程度の規模であると報じられている。 また、5月28日のワシントンポストで報じられたアメリカの軍事情報が中国からのサイバー攻撃によって窃取されている件について、米国防総省のリトル報道官は「サイバー攻撃の脅威は非常に深刻だが、中国からのサイバー攻撃がアメリカの軍事能力や技術的優位の侵食につながるという指摘は誤りである」と強調した(※3)。つまり中国からのサイバー攻撃は現時点ではまだアメリカの軍事能力や技術優位を奪取されるほどの影響を与えていないということだ。 中国側はアメリカの主張を否定しており、人民日報を通じてアメリカを「本物のハッカー帝国(the real hacking empire)」と称している。またいつものように米中ではサイバー攻撃をめぐって「やられている」「やっていない」の舌戦になっている。アメリカと中国はサイバーセキュリティをめぐって二国間で新たなワーキンググループを作って対応していくことが検討されたり、相互対話を通じて解決を模索しようとしている。 サイバー攻撃に対する武力行使はあり得るのか?米中ではサイバーセキュリティをめぐって対話を進めようとしている一方で、アメリカのDennis C. Blair氏(former director of national intelligence)は「(サイバー攻撃に対して)中国は説得だけでは動かない。何か別のものが必要だ」と述べており(※4)、対話による説得だけで中国からアメリカへのサイバー攻撃を止めることは難しいという見解を示している。 国家間の紛争の要因が説得や対話だけで解決しない場合は武力行使や兵器による攻撃を示唆することによって抑止力を働かせることも可能である。しかし「サイバー攻撃に対する報復措置としての武力行使」は国家にとって本当に最終手段であろう。 現時点でサイバー攻撃は「やられた」「知らない」の主張を繰り返しているため、武力行使に至るまでの確証を本当に掴むことは難しい。また、現在の米中間では情報窃取(cyber espionage)を目的としたサイバー攻撃が主流であるため、基幹システム破壊などによる社会や経済または軍事施設への直接的攻撃による安全保障に大きな支障、混乱をもたらすまでには至ってない。 もちろん、サイバー攻撃による情報窃取も大きな問題である。アメリカはサイバー攻撃の年間被害総額は3,000億ドルで、そのうちの70%が中国からの攻撃によるアメリカ企業の知的財産や貿易情報の流出と推定されている(※5)。アメリカの経済に与える影響は決して小さくないが、これだけでアメリカは中国に対して兵器による武力行使を実行することはできない。そして本当に中国が国家としてサイバー攻撃を実行しているかどうか証明することが難しい。 2013年6月7〜8日にカリフォルニアで米中首脳会談が開催される。両国にとってサイバーセキュリティは重要なイシューである。カーニー米大統領報道官は5 月28日、オバマ大統領が6月の習近平国家主席との会談時に、中国からのサイバー攻撃の問題を主要なアジェンダにすることを明らかにした(※6)。二国間でサイバーセキュリティに関してどのような枠組みが形成されるのか、引き続き注視していく必要がある。 【参考動画】 ※1 New York Times(2013), May 19, 2013 “Hackers From China Resume Attacks on U.S. Targets” ※2 Washington Post(2013), May 28, 2013, “Confidential report lists U.S. weapons system designs compromised by Chinese cyberspies” ※3 原文:"We maintain full confidence in our weapons platforms," Little said in a statement. "Suggestions that cyber intrusions have somehow led to the erosion of our capabilities or technological edge are incorrect." ※4 原文:“Jawboning alone won’t work,” Mr. Blair said Saturday. “Something has to change China’s calculus.” ※5 New York Times(2013), May 25, 2013 “Preventing a U.S.-China Cyberwar” http://www.nytimes.com/2013/05/26/opinion/sunday/preventing-a-us-china-cyberwar.html ※6 NDTV(2013), May 29 2013, “Obama, China's Xi to discuss cyber-security in June meeting” |
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