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2013年6月17日掲載 |
2013年6月13日、フィンランド第3の通信事業者DNAが「Jolla」のスマートフォンを2013年中にリリースすることを発表した(※1)。「Jolla」のスマートフォンをリリースすると発表した通信事業者はDNAが世界初となる。 フィンランドから登場した新たなモバイルOS「Sailfish OS」「Jolla」はNokiaで「MeeGo OS」の開発に携わっていた元Nokia社員らが2012年7月に立ち上げたベンチャー企業である。その「Jolla」が新たに開発を行ったモバイルOSが「Sailfish OS」である。2011年に設立された「Sailfish Alliance」があり、その頃からDNAも参加していたため、今回DNAが「Jolla」のスマートフォンをリリースすることは自然の流れであり、驚くことではない(参考レポート)。「Jolla」は「Sailfish OS」を2012年11月に公開し、2013年5月には、出荷予定は2013年末とのことで、端末価格を399.99ユーロ(約5万円)で同社サイトでの事前予約も開始した(参考レポート)。 (図1)「Jolla」のスマートフォン (出典:Jolla) 2013年6月、フィンランド第3の通信事業者DNAが「Jolla」のスマートフォンを2013年中に販売することをついに発表した。DNAのPekka Väisänen氏(Vice President for DNA’s Consumer Business)は、「フィンランドの通信事業者として、フィンランドの新たなサクセス・ストーリーを支援することは重要なことだと考えている」として、DNAの顧客に新たな価値を提供できることだろうと述べ、スタートアップのメンタリティを通信事業者としても学びたいと指摘し、「面白いイノベーション」が生まれることに期待を寄せた(※2)。 「Jolla」のCEOであるTomi Pienimäki.氏もフィンランド国内市場で通信事業者であるDNAと提携することによって、通信事業者が抱える顧客からのフィードバックが期待できる等の利点があると述べた(※3)。 フィンランド携帯電話市場フィンランドは人口約530万の国である(北海道の人口が約550万)。携帯電話加入者は約960万で普及率は約181%と飽和市場である。主な通信事業者はElisa(シェア41 %)、TeliaSonera(シェア34%)、DNA(シェア34%)である。 (表1)フィンランドの主要通信事業者
(公開情報を元に筆者作成) サムスン、ノキアの本拠地フィンランドでシェア1位フィンランドの代表的な端末メーカーとしてノキアがある。かつては世界一の携帯電話メーカーだったが、現在ではサムスンやアップルに圧倒されてしまい、世界市場で見ても売上、シェアともに急減している。 そしてついにノキアの本拠地フィンランドでの携帯電話市場でもサムスンが販売シェア1位となった。調査会社IDCは2013年5月28日、2013年1〜3月期の地域別携帯電話シェアを集計した結果、フィンランドでサムスンがノキアを抜いて1位になったことを明らかにした。2013年1〜3月期においてサムスンがフィンランドで210,972台(シェア36.1%)の携帯電話を販売したのに対し、ノキアは196,045台(シェア33.6%)で、僅差ではあるがサムスンがフィンランドでノキアの販売台数を抜いた。サムスンがフィンランド市場で販売シェア1位となったのは、同国の携帯電話市場に進出して以来初めてである。なお3位はシェア14%のアップルである。フィンランドでサムスンは前年比で携帯電話販売数が38%増加したのに対し、ノキアは28%減少している。また、フィンランド市場でノキアの販売実績の80%はフィーチャーフォンであるのに対し、サムスンは販売実績の80%はスマートフォンである。ノキアは2011年2月にマイクロソフトと提携し、Windows Phoneを同社のスマートフォンの中心に据えており、Android OSのスマートフォンは開発していない。そして現在では世界のスマートフォン市場を見渡すとAndroidかiPhone(iOS)である。スマートフォンにおけるノキアの戦略は地元フィンランドでも受け入れられなかったのであろう。 サムスンはノキアの御膝元に研究開発センターさらにサムスンはフィンランドのノキアの本拠地エスポーに研究開発センターを開設すると報じられた。サムスンが北欧に研究開発センターを開設するのは初めてである。フィンランドには、過去にノキアや系列会社に勤務していたエンジニアやソフト開発者が多く、華為技術やインテルなどのハイテク企業が研究開発施設を開設していることから、サムスンもそれに続いた。また、ノキアは経営悪化のため、ここ数年で数千人の人員削減をしているため、優秀ながらも職がない元ノキア社員も多い。 「Jolla」はフィンランド活性化に繋がるのかここまで見てきたように、かつて一世を風靡していたフィンランドのノキアも現在では地元のフィンランドでもシェアを落としてきており、その勢いを回復させる兆しは見えていない。フィンランドにとってノキアは同国の経済を支える重要な企業だった。1999年の同国GDP成長率4%のうち1%以上がノキアによる貢献で、GDPのうち4%を占めたこともあった。まさに1企業が1国の経済を支えていたのだ。そのくらいフィンランドにとってノキアは同国の経済、雇用確保、ブランドイメージ向上などにおいて重要な企業であった。 「Jolla」は、そのノキアで「MeeGo OS」を開発していた社員らが立ち上げたベンチャー企業である。フィンランドとしてはかつてのノキアのようにフィンランド経済の主役になってほしいという同社に対する期待も大きいことだろう。「Jolla」は再びフィンランドを代表する企業となるのだろうか。 (図2)「Jolla」とノキアの遷移 (筆者作成) クリックで画像を拡大します。 【参考動画】 *本情報は2013年6月14日時点のものである。 ※1 DNA(2013) Jun 13, 2013, “DNA to launch the Jolla smartphone as the first operator in the world” ※2 原文:"As a Finnish operator, we consider it important to support this new Finnish success story, in which we see enormous potential. The partnership with Jolla reflects DNA's manner of doing business and is a fantastic example of the way in which we want to be involved in interesting innovations that bring real added value to their users. We boldly apply this start-up mentality to our own operations as well," ※3 原文:”It is valuable to find a good operator as a partner in the domestic market. The cooperation between DNA and Jolla has been extremely rewarding, and we place particular value on the feedback regarding the wishes of customers, received from an operator that knows its clientele. Our two companies are equally enthusiastic about the launch of Jolla smart phones at DNA Stores nationwide during the last quarter,” |
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