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2013年8月7日掲載 |
2013年7月24日の日本経済新聞の夕刊1面に「サイバー防衛 日米で:指揮系統や原発想定」というタイトルで以下のように記されていた。サイバースペースをめぐる同盟関係について考えてみたい。 「サイバー防衛 日米で:指揮系統や原発想定」(日本経済新聞報道より)少し長くなるが2013年7月24日の日本経済新聞の夕刊1面に出ていた「サイバー防衛 日米で:指揮系統や原発想定」は日米でのサイバーセキュリティにおける協力を考えるうえで重要だろうから引用しておく(※1)。(下線筆者) (以下引用) (ここまで。下線筆者) 「日米サイバー対話 共同声明」(2013年5月)上記の記事の中にあった日米両政府が2013年5月10日に発表した「日米サイバー対話共同声明」(外務省発表)のポイントは以下の通りである(※2)(参考レポート)。 日米サイバー対話は、以下の取組により、サイバーに関する幅広い協力を深化させ、日米同盟を強化した。
(出典:外務省 2013年5月) また、防衛省では日米でのサイバーセキュリティの協力について、日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表(※3)に基づいて以下のように記している(※4)。
(出典:防衛省 2012年9月) 同盟国間によるサイバーセキュリティアメリカや日本など先進国は国家の様々なインフラをサイバースペースに依拠しており、各国でほぼ同等の能力を保有している。そして同盟国は基本的に価値観を共有している。日米同盟は、世界の民主主義国同士の同盟をみても、異文化圏でしかも異人種の間で結ばれる同盟としてきわめて例外的である、と米国政治学者ケント・E・カルダーは述べている(※5)。それでも防衛同盟において重要なのは、対外的脅威に対する安全保障であり、それはサイバーセキュリティでも同じであろう。「安全を確保するためには自己強化が、それが不可能な場合、同盟の形成が必要になる」、と米国政治学者ケネス・ウォルツは述べている(※6)。サイバースペースは情報通信技術という世界でほぼ標準化された技術で構成されており、そこには多くの未知の脆弱性が潜んでいる。それらを自国のみ、すなわち「自己強化」だけで防衛することは不可能に近いだろう。そこで国家間での協力が重要になってくる。 同盟国間での相互のサイバー攻撃が問題になるということは少ない。国家間でサイバー攻撃が問題になるのは、「アメリカと中国」、「インドとパキスタン」、「朝鮮半島」、「アラブ諸国とイスラエル」、「ロシアと周辺諸国」がほとんどである。つまりサイバースペースも現実の国際関係での国家間対立をそのまま反映している。その点から日本はアメリカとサイバースペース防衛について同盟国同士として協力することができる。そしてサイバーセキュリティにおける同盟国同士の協力は大きな抑止力になりうる。つまり、攻撃を仕掛ける側からする相手にとって「手強い防衛」をしているのではないかという懸念を抱かせることができる。例えば、日本にサイバー攻撃を仕掛けたらアメリカが動いてくる可能性があるから、日本にサイバー攻撃を仕掛けるのはやめようと思わせることができるだろう。また、同盟国同士で協力してサイバー攻撃を仕掛けてくるのではないかという畏怖を敵国に対して与えることができる。アメリカとイスラエルが協力してイランの核施設を標的としたと言われているサイバー攻撃Stuxnetがこの例であろう。 サイバー同盟において重要なのは「弱い環」を作らないことサイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけの問題ではない。サイバー攻撃はどこから侵入してきて自国のサイバースペースから情報窃取やシステム破壊を行うかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。そして日本もサイバースペースにおいて「弱い環」になってはいけないのだ。現代社会のインフラはサイバースペースに大きく依拠しており、各国がネットワークで接続されていることから、サイバースペースの中で「弱い環」になることは、現実の国際関係の中でも孤立しかねない。 日本とアメリカの二国間または同盟国同士の多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、マルウェア対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを継続して行っていく必要がある。 *本情報は2013年8月6日時点のものである。 ※1 日本経済新聞(2013年7月24日)夕刊1面 ※2 外務省(2013年5月10日)「日米サイバー対話 共同声明」 ※3 「日米安全保障協議委員会共同発表」(2011年6月)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/joint1106_01.pdf ※4 防衛省(平成24年9月)「防衛省・自衛隊によるサイバー空間の安定的・効果的な利用に向けて」 ※5 ケント・E・カルダー著、渡辺将人訳『日米同盟の静かなる危機』ウェッジ、2008年 p295 ※6 ケネス・ウォルツ著、河野勝訳『国際政治の理論』勁草書房、2010年p220 |
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