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2014年6月2日掲載 |
2014年5月12日、安倍首相とイスラエルのネタニヤフ首相は首相官邸で会談し、共同声明に署名した(※1)。今回の2か国の共同声明では、特にサイバーセキュリティに関する対話実施への期待が表明された。安倍首相は「両国の国家安全保障機関の意見交換開始、および国防とサイバーセキュリティの分野での協力推進で合意した」と発言した(※2)。 毎日新聞Web版(2014年5月13日)にネタニヤフ首相へのインタビュー記事が掲載されていた(※3)。非常に長いインタビュー記事なので、一部を引用して掲載しておく。(下線筆者)
サイバーセキュリティは「バンドワゴン」戦略イスラエルはサイバーセキュリティの分野においてはアメリカに次ぐ大国である。それは同国が中東周辺諸国から常日頃から多くのサイバー攻撃の標的とされているからである。イスラエル電力公社(IEC)は1時間に1万回ものサイバー攻撃を受けている(参考レポート)。そのような環境にあるイスラエルのサイバー攻撃の検知、防衛対策の技術力は相当に秀でている。 また標的とされ攻撃を受けているだけでなく、自らも相当な攻撃力を保有している。2010年にはイランの核施設を標的とした協力マルウェアStuxnetによるサイバー攻撃はアメリカとイスラエルによって行われたと報じられている。また2012年にはStuxnetに続く強力マルウェアFlameも同様にアメリカ、イスラエルによってイランに仕掛けられたと報じられたことがある(参考レポート)。 一方で、日本はイスラエルほどのサイバー攻撃の被害は少ないだろう、また日本が自らサイバー攻撃を仕掛けているということもない。そのことから日本は決してサイバーセキュリティにおいては大国とは言い難い。 国際関係の中でのサイバーセキュリティにおいては、日本のような国はイスラエルやアメリカのような大国に「バンドワゴン」するのが良いだろう。バンドワゴンは、「勝ち馬に乗ること」や「追従」などと訳されることが多いが、国際政治学における「バンドワゴン」戦略とは力の強い側と組むことによって、その勢力の持つ余分の力や安全の恩恵に与ろうとするものである。中小国にとっては、強国に対抗するより強国に合わせる方が簡単なのである(※4)。サイバーセキュリティにおいてイスラエルは日本よりも遥かに大国である。今後も国際関係のサイバーセキュリティ分野においては「バンドワゴン」の関係は増えていくことが想定される。そうなるとサイバー大国はますますサイバーセキュリティ分野において強大化していくだろう。 テルアビブのハリキヤにある国防省 ![]() (出典:筆者撮影) *本情報は2014年5月15日時点のものである。 ※1 外務省(2014年5月12日)「日イスラエル首脳会談」 ※2 Bloomberg(2014年5月12日)「日イスラエル首脳会談:国防やサイバーセキュリティーで協力」 ※3 毎日新聞Web版(2014年5月14日)「イスラエル:ネタニヤフ首相単独インタビュー 一問一答」 ※4 土山實男『安全保障の国際政治学』有斐閣、2004年(P304) |
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