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2008年5月掲載 |
Yahoo! Inc.とヤフー株式会社
グローバル研究グループ 清水 憲人
今年の2月1日に発表されたマイクロソフトによるヤフー買収は、5月3日にマイクロソフトが買収交渉からの撤退を表明したことを受けて小休止となった。しかし、これで一件落着というわけではなく、ヤフーの置かれている不安定な立場は今後も続きそうだ。ところで、何気なくニュースを見ていると混同してしまうことも多いが、マイクロソフトが買収しようとしていた「ヤフー」は米ヤフー(Yahoo! Inc.)のことであり、日本のヤフー(ヤフー株式会社)ではない。 ここであらためて、Yahoo! Inc.とヤフー株式会社の関係を整理しておこう。 ヤフー株式会社の筆頭株主はソフトバンクであり、Yahoo! Inc.の出資比率はそれに次ぐ2番目。会計用語で言えば、ヤフー株式会社は「ソフトバンクの連結子会社」であり、「Yahoo! Inc.の持分法対象関連会社」になる。 しかし、筆頭株主でないとはいえ、Yahoo! Inc.とヤフー株式会社の関係は強い。Yahoo! Inc.はヤフー株式会社設立時にソフトバンクと交わした株主間合意に従い、取締役の選任、重要な資産の譲渡、新株発行決議などについて影響力を行使することができ、現在はジェリー・ヤンCEOがヤフー株式会社の非常勤取締役を兼任している。またヤフー株式会社は、Yahoo! Inc.の検索サービスや商標等の日本における利用についてのライセンス契約を締結しており、Yahoo! Inc.に対してロイヤルティを支払っている。 そのため、Yahoo! Inc.が買収された場合、買収企業の日本戦略次第では、ヤフー株式会社の経営戦略に少なからぬ影響が及ぶ可能性がある。 次に企業規模の比較をしておこう。 Yahoo! Inc.とヤフー株式会社の企業規模比較
Yahoo! Inc.の売上高は円換算で7,000億円を超えており、ヤフー株式会社の2.8倍である。しかし株式時価総額は1.4倍に過ぎない。その背景には、グーグルとの競争でなかなか業績を伸ばせないYahoo! Inc.と、着実に成長を続けるヤフー株式会社の経営状況の差がある。Yahoo! Inc.は米国の検索市場シェアでグーグルに次ぐ2位だが、ヤフー株式会社は、検索、ネット・オークションなどの分野で日本のトップ企業である。 このような経営状況を鑑みると、「Yahoo! Inc.が買収されたとしても、ただちにヤフー株式会社との関係を見直すことにはならないだろう」との観測が強いのだが、果たしてどうなるのか。Yahoo! Inc.を巡る動きは今後も目が放せないニュースの一つである。 |
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