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情報通信 ニュースの正鵠
2012年1月6日掲載

2011年情報通信業界の10大ニュース

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 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

  さて、2012年最初のコラムは、昨年末にアップし損ねた「2011年情報通信業界の10大ニュース」です。

 例によって、個人的な印象に基づくものではありますが、ランキング形式で一年間の情報通信業界を振り返っておきたいと思います。

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第10位 存在感を増すSNS

 グーグルがFacebookの対抗馬として期待しているGoogle+が提供開始されたことをはじめ、2011年もSNS関連のニュースがたくさんあった。エジプトのムバラク政権崩壊など、中東諸国における反政府運動においても、FacebookやTwitterが利用された。また、SNSを活用した就職活動が「ソー活」と呼ばれるようになるなど、人々の生活の中にSNSが浸透してきていることを示す事例も多数報じられた。

第9位 ネット企業のIPOブーム再び

 ビジネス用SNSサイトのLinkedin(5月)、クーポンサイト運営のGroupon(6月)、インターネット・ラジオのPandra Media(6月)、オンラインゲームのNexon(12月)、ソーシャル・ゲーム開発のZynga(12月)など、注目されるネット企業の株式公開が相次いで実施された。2012年にIPOを実施すると見られるFacebookの評価額はなんと1,000億ドル(7.7兆円)を超えると噂されている。1990年代後半のネット・バブルの再来を予想する声も一部に出始めた。

第8位 スマートフォンとプライバシー問題

 4月に、iPhoneやiPadが位置情報の履歴を端末に保存していたことが問題になり、アップルは仕様の変更を余儀なくされた。また11月には、主として米国で販売されているアンドロイド携帯に、ユーザの利用履歴を記録する「キャリアIQ」と呼ばれるソフトウェアがプレインストールされていることが判明。こちらも波紋を呼んだ。一方日本では、スマートフォンの位置情報や通話記録を確認することができるアプリ「カレログ」が提供され、プライバシーを侵害するものとして批判を浴びた。

第7位 ソーシャル・ゲームの隆盛

 GREEが東京ゲームショーに巨大ブースを出展したり、DeNAが横浜ベイスターズを買収するなど、ソーシャル・ゲーム会社が大きな注目を集めた。伝統的なゲーム会社が苦戦するなかで、両社の業績は好調。一方、「無料」を喧伝することでサービスを利用させ、有料のアイテム課金に誘導するビジネス・モデルを批判する声も根強い。

第6位 明暗が分かれたタブレット市場/eリーダー系タブレットの躍進

 iPadの登場によって開拓された「タブレット市場」に、数多くのメーカーが参入した。しかし、パソコン・メーカーや携帯端末メーカーが発売した製品は軒並み苦戦し、iPadの独り勝ち状態が続いた。そんななか、アマゾンが11月に発売したKindle Fireの売れ行きが好調。iPadの牙城を崩す可能性を持つのは、「機能で勝負する」メーカー入魂の端末ではなく、電子書籍事業者が安価で提供するeリーダー系タブレットになりそうだ。

第5位 大震災と情報通信

 3月11日に起きた東日本大震災は、情報通信の分野にも、さまざまな影響を与えた。地震と津波によって引き起こされた想像を絶する規模の被害は、通信事業者に対し災害対策の在り方の見直しを迫るものとなった。また、震災後の安否確認や情報収集においてインターネットが果たした役割の功罪についても議論された。

第4位 ICT製品の“Sensorization”

 ICT製品市場における最近のトレンドの一つは“Sensorization”。適切な日本語訳はないが、要するにセンサーを搭載することでスマート化するという意味。GPSや加速度センサー、カメラなどのセンサー類が小型化/低価格化したことを受けて、さまざまな製品に搭載されるようになってきた。例えば、観測したい天体の名前を入力すると、カメラで自動的に探しあてて、焦点を合わせてくれる天体望遠鏡などがでてきている。Sensorizationによって、いろいろな製品やサービスがとても便利になっていく。

第3位 スマートフォン市場の競争激化と特許戦争

 スマートフォン市場における競争が激化している。iPhoneとアンドロイド端末が販売数を伸ばす一方で、ブラックベリーは苦戦。ブラックベリーを提供するRIM(リサーチインモーション)の株価は、1年間で77%も値下がりした。一方、iPhoneを提供するアップルと、グーグル、サムスン、HTCなどのアンドロイド陣営との間で特許戦争が激化。グーグルが8月に発表したモトローラ・モビリティ買収の最大の目的は特許を手に入れることであると指摘されている。

第2位 注目を集める「パーソナル・クラウド」

 当初、どちらかといえば法人ユーザ向けのサービスとして脚光を浴び始めたクラウド・サービスであるが、徐々に個人ユーザ向けのサービスにも注目が集まり始めている。インターネット上に、音楽、映像、文書などを保存しておけば、いつでもどの端末からでも利用することができるので、スマートフォンやタブレットなど、パソコン以外の端末を複数所有するユーザにとって合理性が高い。2011年は、6月にアップルがiCloudの提供開始を発表。12月にはEvernoteがユーザ数2,000万超えを発表した。一方、グーグルは、すべてをクラウド上で処理する野心的なノートパソコン「クロームブック」を5月に発売開始。未来のパソコンの一つの方向性として注目を集めた。

第1位 アップルの快進撃とスティーブ・ジョブズ氏逝去

 iPod、iPhoneに次ぎ、iPadも大ヒットさせたアップルは、2011年も大きく業績を伸ばした。株式時価総額は一時、石油会社のエクソン・モービルを抜いて、世界最大の企業になった。しかし、奇跡の成長を牽引してきたスティーブ・ジョブズ氏が健康問題からCEOを引退し、その後亡くなった。世界のICT業界の在り方に多大な影響を与えた経営者の死に世界中が衝撃を受けた。

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 この他にも、「ビッグ・データ」という言葉がキーワードとしてもてはやされるようになったり、「サイバー・アタック」に関するニュースがメディアを賑わせたりした。また、ある意味でネット社会を象徴する存在ともいえるWikileaksが「米政府の金融機関への圧力による資金不足で存続の危機に陥っている」というニュースも大きな注目を集めた。

 2011年も、いろいろなできごとがあった情報通信業界だが、トップ10のニュースを眺めてみると、スマートフォンやタブレット端末関連のニュースが非常に多いことに気付く。2011年を一言で総括するならば「スマートフォンやタブレットが家庭用情報端末の主役になりつつあることがはっきりと認識されるようになった年」ということになるであろうか。

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<過去の10大ニュース>
「2010年情報通信業界の10大ニュース」をみる
「2009年情報通信業界の10大ニュース」をみる
「2008年情報通信業界の10大ニュース」をみる


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