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1. Global CrossingとQwestの争いは双方勝利で決着

 99年7月19日にUSWestがQwest Communications International Inc.の405億ドル買収提案を受入れ、一方、Global CrossingがFrontier Corp.に対する129億ドル買収提案を詰めることで、長期にわたる買収合戦が決着した。新興長距離設備提供事業者のQwestベル系市内電話会社のUSWestを手に入れて、強大なSBC Communications/Ameritech(世界No.2)やBell Atlantic/GTE(同No.5)に対抗でき、新興国際設備提供事業者のGlobal Crossing独立系電話会社Frontierによって米国内網を補完でき、それぞれM&A戦略の基本は達成される。

 買収折衝の発端は、Global CrossingのFrontier買収(99年3月17日合意、125億ドル)で、そのGlobal CrossingがUS Westとの対等合併を決めたのに(99年5月17日合意、US West買収339億ドル、Frontier買収129億ドル)、QwestがUSWestとFrontierに敵対的買収をしかけたため(99年6月14日提案、509億ドル)、合戦となり、USWestとFrontierが拒否した後、Qwestが提案額を引き上げ(543億ドル)、関係者皆満足の形で決着したものである。

 QwestのUS West買収方法はUS West株主に1株69ドル相当のQwest株を交付することで行われ、新会社株式の53%が旧WS Wes株主のものとなり、旧Qwest株式は47%になる。現在BellSouthがQwest株式の!0%を所  有しており、全面買収を検討中と伝えられてきたが、その可能性は今回薄まっ  たと思われる。新会社名はQwest、取締役は両社7名づつ、新CEOは旧Qwestのジョセフ・ナッチオ(Joseph Nacchio)CEOに、旧US Westのソロモン・トゥルヒーヨ(Solomon Trujillo)CEOと旧Qwestのフィリップ・アン  シュッツ(Philip Anschutz)社主が共同会長となり、企業戦略・年次計画・事  業買収/分割・投資決定を分担する。新会社の株式時価総額は650億ドル、売上高は185億ドル、従業員数は64,000名、電話加入数は2,900万名と見込まれる。


2. SITA は組織再編成を決定

 航空産業のネットワーク・サービス・プロバイダーSITA SC(Societe Internationale de Telecommunications Aeronautiques 、国際航空通信共同組織)は、非営利のベルギー法人から692航空会社にサービスするSITA SCとシステムインテグレーター株式会社EQUANT NVの複合組織(図参照)へ99年10月に移行することを決定した。

SITAの新組織

 SITAには11航空会社によって1949年に創立され、翌年最初の航空通信センターをローマに開き、1963年までに40カ国に67センターを開設した歴史がある。1972年にメンバー向け国際通信サービスITSの提供を始め、1981年に高度データ転送網を導入し、1991年に子会社Scitorを設立してメンバー外への情報通信サービス事業も始めた。1995年にこれをEQUANT NVと改称し、(1)EQUANT Network Services(managed data net services、VPN、Internet support servicesなど)、(2)EQUANT Integration Services(WAN、LAN、Internetworking、端末等)、(3)EQUANT Application Services(ソフト/システム・コンサルタントサービス)を提供している。EQUANTの主要ユーザはゼロックス、シェル、シェラトン、アメリカン・エクスプレスなどで、98年売上高は7億ドルであった。

 SITAは世界692航空会社が参加する業界共同網で、最初のグローバル・シームレス情報通信サービス事業者であるが、航空業界プロトコルのしばりが利かないIPネットワーク時代を迎え、より広く多国籍企業にグローバル・ソリューションを提供するため、組織を再編成するものである。


3. DTはFTと別れて独自路線を追求

 FTは、DTがテレコム・イタリア(TelItal)と無断で合併交渉をしたとしてアトラス提携協定違反の損害賠償訴訟を起こしている。FTは、DT株式2%出資の引揚げを検討しており、時価約20億ドルの出資を直ぐさま一挙に引揚げることはないが、信頼が損なわれた以上元に戻れないとしているものの、FTもDTも、スプリントを加えた3社合弁グローバル情報通信事業Global Oneは今後とも継続していくとしている。
こうした複雑な環境下、DTはTelItalに代る国際M&A先を求めて、米国と英国の移動通信会社やインターネット・プロバイダーを中心に高成長企業を探してきて、一番手として英国第4位の移動電話会社One 2 Oneの買収を折半所有者C&WおよびMedia Oneと8月6日に合意した。DTは93年9月創立で加入数265万、98年度売上高12.6億ドルだが年率42%で急成長して黒字転換したOne 2 Oneを135.5億ドルで買収することによりグループの加入数1,080万に達し、テレコム・イタリア(1,660万加入)、マンネスマン(1,450万加入)、エアタッチ・ボーダホン(1,110万加入)に次ぐ欧州第4位の 移動電話グループになる。
 DTがビジネス市場に重点を置くのに対してFTは住宅市場を指向しており、7月15日に英国のCATV事業者NTLへの10億ドル出資を決めた。NTLはCWC、Telewestに次ぐ英国第3位だったが、7月末にCWCの住宅部門事業(CATV・電話)を買収して英国最大手になった。FTの出資金は買収資金(提案額125億ドル)の一部に使われたのである。

世界の通信企業の戦略提携(1999年7月末現在)

(関西大学総合情報学部教授 高橋洋文)

(入稿:1999.8)

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