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GSM圏で移動機販売価格に影響を与える諸要素の状況

 第3世代携帯電話サービスでは、GSM方式のSIM(Subscuriber Identity Module:加入者認証モジュール)に相当するUIM(User Identity Module)が導入される予定であり、このUIMを差し換えることで様々な移動機や携帯端末のフレキシブルな利用が見込まれている。同時に、移動機と加入契約の分離販売が可能となり、これが移動機販売価格に与える影響も大きい。例えば、同じ移動機であっても、加入契約を伴う場合とそうでない場合で移動機の販売価格が異なってくることが想定される。一方では、移動機に他事業者のUIMを差し換えて利用される可能性もある。SIMが標準化されているGSM圏では、このように事業者の端末補助した安価な移動機を他事業者のSIMで利用されてしまう状況を未然に防ぐため、販売時にパッケージングした移動機1台についてのみ、あるいは契約した事業者の移動機にのみそのSIMを機能させる、いわゆる「SIMロック」を導入している場合がある。SIMロックは、端末補助、最低契約期間、料金プランなどの各要素を伴って、ユーザーの囲い込みと移動機販売価格を決定づける重要な要素にもなっており、同機種の移動機でも事業者や国によって販売価格差を生じさせる要因となっている。

 例えば、英国のBTセルネットは、契約を伴うポストペイド端末、プリペイド端末の双方に端末補助をしているが、その金額はポストペイド端末の方が多い。そして、そのポストペイド端末には最低契約期間を設定し、プリペイド端末にはSIMロックを行っている。万一、最低期間内に解約した場合は、料金プランにもよるが残月数の基本使用料相当額をペナルティとして課すことで、端末補助の損失を回収している。また、MVNO(仮想移動網事業者)のヴァージン・モバイルは、端末補助は一切しておらず、SIMロック、最低契約期間もないため端末価格は他事業者よりも明らかに高いが、基本使用料を無料にするなど独特の料金体系を構築することでトータルとしてのコストパフォーマンスを追求している。さらに、フィンランドでは、もともと加入契約と移動機の抱合せ販売が電気通信法で禁止されているため加入契約と移動機の分離販売が一般的であり、当然ながらSIMロック、端末補助、最低契約期間は一切存在せず、移動機販売価格には影響を及ぼしていない。

 一方、アジアのGSM圏ではまた異なった販売戦略が採られている。シングテル・モバイルではSIMロックこそ実施していないものの、最低契約期間に1年間、2年間の2種類を設定している。そして、例えばノキア6210を2年契約で購入した場合、SG$15/月を6カ月間に渡って請求額から差し引くことで、1年契約で購入した場合よりも合計SG$90を割引いている。また、香港のHKTでは、例えば加入契約を伴ってノキア6210を購入した場合、HK$50/月を6ヵ月間に渡って請求額から差し引くことで合計HK$300を割引いており、この期間が実質的な最低契約期間となっている。しかも、このリベート返還期間や返還額は端末や料金プランによって異なり、バンドル部分の最も大きい料金プランを選択した場合は、移動機の販売価格全額を返還するといった場合もある。

図表

高田博樹(入稿:2001.3)


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