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2001年7月掲載 |
シンガポール、通信・CATV2社が合併 シンガポールの通信会社スターハブと同国唯一のCATV会社であるシンガポール・ケーブルビジョン(SCV)が合併を発表した。通信再編の機運が高まるシンガポールの通信市場を、2001年6月15日付の日本経済新聞および同年6月20日の日経産業新聞を中心に取上げる。
■スターハブとSCV、合併で合意
スターハブとシンガポール・ケーブルビジョン(SCV)は、2001年4月30日、「両社は合併交渉中である」としていたが、6月14日、「合併することで合意に達した」と発表した。合併の比率や時期などの詳細は未定で、スターハブ広報担当者は「最終的な合意にはあと2ヶ月ほどかかる」との見通しを示した。 スターハブは、1998年4月に基本(国内・国際)通信と移動体通信事業の新規免許を付与され、2000年4月からサービスを開始している。他方、規制機関であるシンガポール電気通信庁(IDA)は、当初2002年4月に予定していた通信の完全自由化(免許制の下で参入規制なし、外資規制なし)をスターハブの開業時期と合せて、2年前倒しで実施した。このため、スターハブにとっては厳しい事業環境となっている。(「シンガポールの通信市場、自由化」Hyper Asia 2000.4参照) 1998年の事業免許取得時、スターハブは、全住宅の近辺までネットワークを構築する義務を課せられている。同社は、商業ビルへの回線引込を中心に実施しているが、通信自由化前倒しにより計画変更を余儀なくされ、上述のネットワーク構築および住宅への加入者回線の敷設を棚上げしている。今回の合併により、SCVがすでにシンガポール島全域に完成させているケーブル網を義務履行に活用したい考えである。 合併が、シンガポール・テレコムに対して、直ちに同社の業績に大きなマイナス影響を及ぼすとは考えられない。シンガポール・テレコムの総資産(2000年3月期末)は139.2億シンガポール・ドル(以下Sドル、約9,500億円)、従業員数は約1万円に対して、未上場であるスターハブとSCVの合計資産(推計)は、約30億Sドル(約2,000億円)、合計従業員数は約2,000人である。ただし、シンガポール・テレコムは新会社の存在に危機意識を感じ、むしろ、同社の民営化や海外進出を一層促すなど、シンガポール国家にとってプラスに働くことが考えられる。(KDD総研R&A 2001.6) ■スターハブの概要スターハブには、Singapore Technologies Telemedia(STT)が60%、NTTコミュニケーションズが22%、BTが18%出資している。当初は、現地資本構成として、STTが34.5%、電力・ガス供給のSingapore Power(SP)(25.5%)であったが、SPは別に設立した子会社(SP Telecommunications)を通じて通信事業を展開することとしたため、持株をSTTに売却した。 STTは、政府系の巨大コングロマリットSingapre Technologiesの電気通信ユニットで、1994年以来、グローバルに活動している。今回、合併合意に至ったスターハブとSCVのへの出資以外にも、モバイル・データ、衛星事業、業務用無線、ページング、インターネット事業、IT企業向けリサーチパークといったビジネスに関与している。 なお、BTは当面は株主として残るものの、海外事業縮小の一環で、株式売却が検討されていると言われている。BTは、2001年5月にマレーシアのMAXIS Communicationsの持株33.33%をパートナーのUsaha Tegasに3億5,000万ポンド(約610億円)で売却することを決定している(BT Media Center 2001.5.4)。 スターハブの携帯電話の加入者は2000年末で約243,000で、シェアは約10%となっている(2001年2月には30万加入を達成)。2000年12月時点の国際電話シェアは8%である。 財務的には、2001年3月期の売上が2億5,000万Sドル(約170億円)を超える見込みである。ただし、一部の現地アナリストによると、依然、赤字状態であり、単年度黒字を達成するには5〜6年かかると分析されている。なお、次世代携帯電話のネットワーク構築等に、今後6〜9ヶ月間で10億Sドル(約6,800億円)以上の長期借入を行う予定である。(KDD総研R&A 2001.6) ■シンガポール・ケーブルビジョンの概要シンガポール・ケーブルビジョン(SCV)は、1995年にCATV用のHybrid Fiber Coax(HFC)網の構築を開始、4年間で全国網を完成した。また95年末から通信事業者としてインターネット接続サービスを開始、2000年にはIDAから設備ベースの通信事業者(FBO)に指定されている。 株主構成は、Media Corp. of Singapore(41.3%)、STT傘下のSTT Communications(32%)、Singapore Press Holding(26.7%)となっている。Media Corp. of Singaporeは、かつのシンガポール放送公社(SBC)が1994年放送法に基づいて私企業化された総合メディア事業者(TV、ラジオ、新聞、出版等)である。同社は持株形態をとっており、傘下に事業会社を持つ。資本的には政府系であるため、株式は未公開であるが、通信系子会社(FBO)にMedia Corp T&Tもある。 主要サービスは、SCV Max TV(95年6月開始)とSCV Max Online(92年12月開始)である。前者は多チャンネルCATVサービスで、CCTV4(中国)、TV5(仏)、Deutshe Welle(独)、NHK(日)、TVBJ(香港)、AusTV(豪)、Worldnet(米)、Zee TV/Sun TV(印)等の外国番組も視聴可能である。後者は、広帯域インターネット接続サービスで、ダイヤルアップの常時接続、広帯域(最大1.5Mbps)、定額制(月額96Sドル、Max TVとの抱合せ割引や学生割引等あり)で利用可能である。 SCVは、シンガポールで唯一のCATV事業者である。CATV加入者は2001年4月末で約265,000(世帯普及率:20%程度)、広帯域インターネット接続加入数は同時期で約5万である。 ■通信市場への参入状況2000年4月の完全自由化以来、多くの設備ベース事業者(FBO)、サービス・ベース事業者(SBO)が参入している。2001年6月15日現在で、FBOが29社、SBOが219社(複数のSBO免許を保有する事業者を免許毎にカウントすると、のべ630社)となっている。 日経産業(2001.6.20)によると、携帯電話事業者のモバイル・ワン(M1)もまた、外資2社が買収に名乗りを上げている。M1は、アジア事業の売却を進めている英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)など株主が全株を売却する方針を固めている。買い手の候補は、香港のパシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCS)、マレーシアのMAXIS Communications。 表1:FBO免許事業者(2001年6月15日時点)
表2:SBO免許事業者数(2001年6月15日時点)
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<寄稿> 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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