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情報通信の新潮流
2002年9月掲載

第1回

IT戦略とブロードバンドの国際競争
〜先進国の韓国、世界の実験場に〜


通信事業研究グループ
エグゼクティブリサーチャー
堀 伸樹 hori@icr.co.jp

■ヤフーBBが発火点に

 eラーニング、eヘルス、eコマース、電子行政サービスなどの利用を可能とするブロードバンド・アクセスを全国規模で早期に普及する主要国間の競争が2000年後半頃から次第に顕著となってきた。

 日本でも2001年7月に「ヤフーBB」が高速の常時接続で1ヶ月あたり2,250円という当時の半分以下の定額料金でに提供を開始してからブロードバンド市場に火がついて、電話回線による高速サービス(DSL)は毎月30万加入単位で急増し、本年8月段階でケーブル・インターネット(約150万加入)と合わせてブロードバンドは500万加入を突破した。

 ブロードバンドが21世紀の「高度情報ネットワーク社会」において、日常生活の質や利便性の向上、経済・産業活動の効率化、教育・医療・娯楽やeコマースの広範な普及、電子政府・自治体による住民サービスの向上などの様々な経済的・社会的側面で極めて重要な役割をはたすという認識は国際的に見ても急速に高まっている。

 このような情報通信(IT)技術を全国に普及するという動きは、1990年代前半、デジタル通信網による音声・データ・画像を統合する「マルチメディア」から開始され、90年代末には「ダイヤルアップ・インターネット」に発展、新しい世紀を迎えた今日では、「ブロードバンド・モバイルの通信・放送融合サービス」をだれでも(都市のみならず農村でも、所得・教育水準のいかん、障害者や人種にかかわらず)利用できるようにするIT戦略を追求する時代を迎えている。(日本の「e-Japan戦略」については、第2回で取上げる。)

■さながら倍々ゲーム

 ブロードバンドの定義も技術進歩と競争の進展に伴ってダイナミックにとらえられており、家庭用ブロードバンドは現在では500kbps−1.5Mbps、2005年頃には6−10Mbps、2010年頃には30−100Mbpsと高速化すると予想されている。将来的には、電話回線は自宅まですべて光ファイバー化するFTTHが必要となると見られている。

 ブロードバンド・アクセスの全国的展開は、基本的には固定回線(DSL、FTTH、高速ケーブル・モデム)、ワイヤレス(セルラ、固定無線)、衛星などによる民間企業の競争下で行われ、農村地域や低所得などの非採算分野では政府がサポートするという図式である。

 ブロードバンドの普及では韓国がずば抜けており、本年末には1,000万加入と世帯普及率も70%以上となると見込まれ、今や韓国はブロードバンドと携帯電話及びインターネットの世界の実験場となっている。

 今や各国のターゲットは韓国に追いつけだ。

諸外国におけるブロードバンドの普及状況

総務省「平成14年版情報通信白書」

ブロードバンド加入数 世帯普及率
米国 916万 (2001.6) 8.6%
韓国 879万 (2002.3) 56.7
日本 389万 (2002.3) 8.2
ドイツ 210万 (2001.12) 5.5
英国 54万 (2002.4) 2.2
フランス 35万 (2001.6) 1.5

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月17日掲載

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