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118. 経済の基調変化と情報通信産業(概要) 最近世界株安が続くことから2000年半ば以降の景気後退が2年で終わるとの説が消え、世界はデフレ時代を迎えたとの認識が浸透してきた。今の議論は景気回復が何時かではなくデフレがどの位長く続くかになっている。 日本経済新聞は「時価総額1500兆円減ー世界の株式市場2年半で4割り縮小」と題して、日米欧アジア主要9株式市場の時価総額が2年半前のピーク時に比べ$12兆強減少、2001年の世界GDP$31兆強の4割に匹敵する資産価値が目減りしたと報じ、特に収益環境の改善が鈍いハイテク株の落ち込みが大きいとした(2002.9.25)。 こうした現況を情報通信サービス企業について見ると次表の通りである。 上表によればボーダフォン(VOD)とNTTドコモ(DCM)の移動通信企業2社が比較的順調で、しかもDCMが不況色を代表するのに対しVODは拡大戦略を益々進めると言う違いを見せている。米国の地域通信企業(RBOC)3社、つまりベライズン(Verizon Comm.)、SBCコミュニケーションズ(SBC Comm.)、ベルサウス(BellSouthCorp.)が回復途上にあるのに対し、ドイツテレコム(DT)とフランステレコム(FT)の欧州2大固定通信企業およびAOLタイムワーナー(AOL TW)とヴィヴァンディ・ユニバーサル(VU)のメガメディア2社が不調である。 DTは7月以来H.ジーラーが暫定CEOで累積債務$656億の削減策を検討中だがまとまらず、10月2日にT.ブルトン新社長が就任したFTも短期債務$150億の借換策に直面し累積債務$700億削減のため政府資本増強策を折衝中である。国際問題化したFT支援打切りに伴うモビルコムの$46.6億債務の返済期限は再再延期された。 AOL TWは10月23日に2002年第3四半期決算について、売上高は対前年同期比+6%の$100億、利払い税償却前利益(EBITDA)は前年同期比-1%の$22億と発表したが、同時にSECへ2000第3四半期から2002年第2四半期までの2年間の売上高$1.9億水増ししていたと決算修正報告を行ったことを明らかにした。早速SECと司法省の調査が始まったが、2001年1月11日に手続完了した株式交換合併の基盤が変わると、訴訟社会アメリカの常として訴訟が提起される場合が考えられる。 不況の到来は需要減を通じて情報通信サービス企業に影響するが、予想外の空き設備を抱えて設備投資を控えるため情報通信機器メーカーに大きなインパクトをもたらす。カメラ付き携帯電話など新機能開発で先行したノキアの時価総額は8月30日現在$632億、10月31日現在$791億と快調に伸びているが、伝統的機器の比重が高い通信機メーカーはそれぞれ、エリクソンが$58億から$56億、ルーセント・テクノロジーズが$59から$42億、アルカテルが$$62億から$61億、富士通が$109億から$67億、NECが$40億から$47億と低調である。 119. EU独禁政策は見直されるか?(概要) 2002年10月第4週に欧州委員会(EC)合併規制担当M.モンティ委員は、二つの企業合併差止決定が第一審裁判所により無効にされる打撃を受けた。 これより先にECは、英国の2旅行代理店エアツアーとファースト・チョイスの合併差止決定について、2002年6月6日に第一審裁判所から不十分な情報と不公正な決定により合併が誤って阻止されたと判示されており、10月の事件は又かと言う印象である。しかし、3件が重なってECのモンティ委員と合併審査タスクフォースは相当なプレシャーを受けている。 合併・買収審査についてはECと裁判所の重複のほか、ECと米国独禁当局の調整問題がある。2000年10月にジェネラル・エレクトリックのハネウェル買収が合意されると、米国司法省とECの審査が併行して行われ、2001年5月に司法省はヘリコプター・エンジンなど両社競合分野の分割を条件に合併を承認したが、ECは両社が競合しない市場での合併効果を問題にして2001年7月に合併を禁止した。 こうした合併審査における米国とEUの視点やルールの違いを調整する協議が最近行われた。ECは2002年10月30日にECと米国司法省・連邦取引委員会との間で、米欧双方の審査が必要な企業合併・買収案件について主要な審査手続を同時に進め情報や見解を交換する協力体制を構築することで合意したと発表した。要は実行・実効であろう。 120. マイクロソフト独禁法違反訴訟は終結に向かう(概要)米国司法省(DOJ)の対マイクロソフト(MS)独禁法違反訴訟が2002年3月に再開されてからの経過は次の通りである。
2001年11月1日にワシントン連邦地裁はDOJとMSが2001年11月6日に合意した和解案を基本的に承認する諸決定を発表した。 訴訟継続組9州が決定を不服として最高裁に上訴すれば2年はかかるが、本件はこれまで4年半続いたところで終結する公算が大きい。 |
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<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授) 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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