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2011年2月7日掲載

Visa Europe、欧州でiPhone向け決済サービスを発表

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年1月25日、Visa EuropeがiPhoneを用いたNFCによるモバイルペイメントの取組を発表した。同社は、カナダのWireless Dynamicsと提携して、同社の「iCarter」というアクセサリ(アダプタ)を装着し、App Store から「Visa Mobile」のアプリケーションをダウンロードしてiPhoneでのモバイルペイメントを実現する。「iCarte」にNFC用のアンテナとセキュアチップが内蔵されており、ここにVisaクレジットカード情報が格納されている。アプリケーションを起動し、専用リーダーライターで読み取り、決済を行う仕組みだ。「iCarte」のチップを一度アクティベートされると、以後はアプリケーションが起動している限りいつでも決済ができて、PINコード入力は必要なくなる。
「iCarte」は、iOS3.1以上のiPhone 3GS、iPhone3G、iPhone 4で利用が可能だ。

 現在、Visa Europeはイギリスとトルコでトライアルを実施している。トルコではYapi Kredi銀行と通信事業者Turkcellと提携し、トルコ国内で4万台のリーダーライターを設置し利用できる。今後は更にイタリア、フランス、ポーランド、スペイン、スイスでも銀行、通信事業者と提携して商用化を進めてゆく予定と発表している。但し同社の発表では通信事業者の役割は明確に明記されていない。

 Visaは2010年12月7日に、アメリカ、欧州のVisaでモバイルペイメントのトライアルを発表したばかりだ。その後、約2ヵ月も経たないうちにVisa Europeでの、新たなトライアルの発表となったという形になる。
やはりアメリカと欧州では同じシステムでトライアル、商用化に向けて実現するのは難しかったのだろうか。欧米で共通のシステムが普及するのではないかと想定していたから残念であるが、文化や商習慣を考慮すると仕方がないだろう。

 iPhoneは欧州では2007年のイギリスO2での販売を皮切りに、2011年2月現在で欧州では34ヵ国で販売されている。iPhone5 ではNFCを端末側でサポートするだろうとの推測もある。また、Androidはバージョン2.3からすでにNFC対応を表明しているし、NokiaのSymbianにも既にNFC対応端末がある。

 今回、Visa Europeはイタリア、ポーランド、トルコ、イギリスでのマーケティング調査の結果、iPhoneでのモバイルペイメントの利用意向が高いことがあることを報じているが、商用化される頃にはiPhoneも端末側でNFCをサポートしているのではないだろうか。

 2011年1月31日に英調査会社CANALYSによると、2010年第4四半期の世界のスマートフォンOSの市場シェアで、AndroidがSymbianを抜いて首位になったと発表した。iOSは3位の16.3%である。今後Visa Europeのモバイルペイメントの商用化に向けてはiPhone以外への端末対応も急務であろう。

 なお、Visa Europeは2011年2月3日に、モバイルペイメントソリューションベンダーとして有名なMonitise社と提携を発表した。これにより、欧州でVisa Europeを中心としたモバイルペイメントの動きが加速するだろう。

 いつも論じていることだが、NFCによるモバイルペイメントはリアルでの店舗で利用できてユーザの利便性が向上する。同社の店舗開拓に向けた取組みに注目したい。また、今後のVisa EuropeのiPhone以外の端末への展開を考慮すると今回の「iCarte」アダプタと「Visa Mobile」アプリケーションは利用できないであろうからどのような対応するか注目したい。
さらに、昨年Visa(米国)とVisa Europeとして発表したトライアル(現在サンフランシスコで実施している)との棲み分けもどのようにしていくか動向を追ってく。

 余談だが、ご存知のように日本ではソフトバンクが2010年12月27日に、iPhone 4で電子マネー利用が可能となる「電子マネーシール for iPhone 4」を発表している。

参考サイト
iCarte: http://www.icarte.ca/

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