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2011年4月27日掲載 |
2011年4月16日、フィリピン通信事業者のSmartがLTE商用化を開始したと発表した。観光地で有名なボラカイ島で開始し、順次エリアを拡大していくとのこと。まずはUSBタイプのモジュール(データ通信)から開始する。Smartは2009年10月から、商用化に向けてLTEのトライアルを実施していた。 (表1)商用LTE開始国(2011年3月24日現在)
フィリピンの携帯電話市場について概観してみたい。 携帯電話加入者:約8,868万加入。人口普及率約96%。3G加入者は2010年12月で約430万加入。3Gが全体に占めるのは4.8%と非常に低い。プリペイド利用者が90%以上で、端末はローエンド端末や中古品が主流である。
新興国においては、固定回線を敷設するよりも、無線基地局を設置した方が設備面では効率的である。固定回線電話やブロードバンド環境はないが、携帯電話は持っているという人は新興国では非常に多い。フィリピンの携帯電話普及率は約96%で、日本とほぼ同じである。しかしフィリピンの3Gの普及率は5%にも満たない。今回のフィリピンSmart社のLTEもデータ通信としての開始だから携帯電話端末としての利用ではない。では、携帯電話での利用を想定した際に3G普及率が5%未満であるフィリピンにおいて、今後、現在2Gを利用しているユーザーが3Gを通り越してLTEに移行することがあるだろうか。 「端末およびカバレッジ」の問題を考慮すると一筋縄にはいかないだろう。フィリピン市場で受け入れられているようなローエンド端末でLTE対応した端末が現時点ではない。中古品として市場に流通するまでにも時間がかかる。LTE携帯端末が出回るようになったとしても、ネットワークカバレッジが悪いエリアではローミングが必要になる。その場合LTEと2G 、3Gにも対応したチップを搭載した端末が必要になるだろう。そのような仕様で、フィリピン市場にも出回るようなローエンド端末の登場を期待するのは現時点では時期尚早であろう。またローエンド端末においてはLTEのトラフィックを必要とするような大容量コンテンツの利用は想定しにくい。 フィリピン市場の携帯電話端末において2GからLTEへのいきなりの移行は考えにくい。まずは3Gのネットワーク設備構築を推進し3G対応端末の普及とモバイルコンテンツの拡充も図るべきであろう。フィリピンでは当面の間は、LTEは高速データ通信モジュール専用として、携帯電話とは棲み分けられた利用をされるのだろう。 フィリピンではGlobe社のHSPA+とSmart社のLTEで「4G戦争勃発」という記事もある。(2010年12月にITUがLTE、HSPA+もマーケティング用語として「4G」の呼称を認めた。) アジアでLTEを導入している香港、日本はともに3Gが発展している市場である。携帯電話市場に占める3Gの割合は2010年12月現在(※)で、香港が約50%、日本はほぼ100%である。LTEは2011年4月現在データ通信のみでの利用である。韓国サムスンなどからLTE対応携帯電話が発表され始めた。但しカバレッジを考慮すると日本でもLTE対応の携帯電話が普及するのはもう少し先のことだと考える。 ※Telegeograpy データ2010年12月現在 GSAによると、現在75ヶ国196の通信事業者でトライアルや今後の計画が発表されているとのことだ。通信の進化はとどまることはないし、一度高速通信に慣れたユーザーは後戻りできない。 (参考サイト)Smart社Facebookページ (参考) 【参考動画:Smart社LTE通信(大きなモジュールをラップトップに取りつけている)(2011年)】 本情報は2011年4月26日現在のものである。 |
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