3.法規制が存在するアプリケーション
- 3-1 主として対面への要請に基づくもの
- 3-1-1 オンラインでの商品販売
- (1)制約の現状
a.医薬品
- 医薬品の販売は対面販売が必要とされている。その理由は国民の健康を守るため、責任の明確化、消費者への十分な説明、品質の管理等への要請があるからである。このため一部の医薬品を除いてカタログ販売することが制限されている(1988年薬務局監視指導課長通知)。現行法上、オンライン販売はカタログ販売の一種とみなされているため、オンラインでの販売も同等の制約がある。
- 一部の医薬品とは、容器等が壊れにくく、長持ちし、副作用の少ないもので、服用しても安全性の高い薬効群(17薬効群が指定されている)とされているが、風邪薬、目薬、頭痛薬等の常備薬的な売薬が含まれていない。
- しかしながら最近、日本からもアクセスできる米国事業者のオンラインショップ上で、医薬品等が販売されている事例もあり、国内だけを規制することの意味が問われている。
b.酒類
- アルコールの販売は、アルコール専売法により政府又は政府が指定する事業者に限られている。その理由としては、未成年者保護のために対面販売を義務づけていることも否定できないが、主たる目的は酒税確保のためであるとされている。
- 通信販売は通達(1991年「通信販売酒類小売業免許について」)により、.デパートでの販売のほかは、一般の酒販店では普通買えない少量生産の種類/品目(各々ごとの課税移出数量が、すべて年間1000キロ・リットル未満の製造業者の酒)に限られている。通信販売規制は、当然オンライン販売にも適用される。
- しかしながら酒税は蔵出し段階で課されているため、オンライン販売であっても酒税確保を困難にするとは考えられない。また対面販売義務の面でも、酒類の自動販売機やスーパー等での販売が一般化した今、オンライン販売を規制する根拠は乏しいといえよう。
c.旅行業者の主催旅行
- 旅行業者は旅行業法により、旅行の手配をしたり、主催旅行の販売を行う際には、旅行者とのトラブルを避けるため、原則として対面による取引条件等の説明が義務づけられている。その説明は文書でも口頭でもよいが、掲示をもって説明に代えることはできないため、オンライン上で旅行情報を見て、そのまま申し込むことは認められていないと理解されている。
- 但し鉄道会社、航空会社、バス会社、ホテル等は旅行業法が適用されないため、オンラインでチケット販売するのは自由である。
- (2)調査結果の特徴
- 主催旅行については95%以上、酒類は9割弱、常備薬程度の医薬品は8割弱が、オンライン販売を認めるべきだとしている。
- オンライン販売を認めるべきではないとする回答が、医薬品では2割強、酒類で1割強ある。
- 医薬品、酒類ともほぼ半数が、自分は買わないあるいは販売すべきではないとしているが、旅行に関しては2割弱と低率であり、自らも利用しようとする意向が見られる。
- 3-1-2 在宅勤務の業種
- (1)制約の現状
- 労働基準法では、通常の事業場以外の労働で、労働時間を算定しがたい時に「事業場外労働」を認めているが、その範囲を超えて、自らの裁量によって勤務場所や勤務時間を決定できる労働形態として「裁量労働制」(いわゆる「在宅勤務」等)が認められている。
- しかし、使用者が恣意的に運用すると労働者に過重な労働を強いる恐れがあり、また労働災害の認定問題などがあるため、労働者保護の観点からこの裁量労働が適用される範囲としては次の5つの例が、制限列挙する形で指導されている(労働省労働基準局の「解釈例規」)。
- 新製品又は新技術の研究開発等の業務
- 情報処理システムの分析又は設計の業務
- 記事の取材又は編集の業務
- デザイナーの業務
- プロデューサー又はディレクターの業務
- 一方米国ではSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)、テレワーク(テレコミューティング)と呼ばれる在宅勤務形態が広く普及し初めている(「日経情報ストラテジー」3月号)。いづれもPCやネットワーク機器/回線の価格低下等により家庭の情報武装化が進んだ結果実現した。米運輸省の推計では、2002年にはテレワーク(大手企業社員の在宅勤務。多くは週1-2回程度)だけで750-1500万人に達する(92年には200万人)とのことであり、ホワイトカラーの生産性向上と、オフィス機器や通信ネットワークの新規需要期待などから注目されている。
- (2)調査結果の特徴
- 在宅勤務できる仕事をしていて、全面的にまたは部分的に在宅勤務したいとする回答が5割強あり、希望あるが仕事が在宅勤務に不向き(32%)及び希望なし(11%)で4割強を占める。
- 在宅勤務の問題点としては、仕事量の増を心配する(62%)ほか、職場の人とのコミュニケーションが心配(53%)、チームワークが生かされない(47%)など、日本的就労スタイルからもたらされる心配も多い。
在宅勤務の業務範囲の制約に関しては、不要(14%)もしくは条件緩和(67%)で8割以上だが、現制度が妥当とする回答が2割弱あり、他の規制項目に比して比率がやや高い。
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