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海外情報
2009年1月掲載

2008年海外でのニュース総まくり

 2008年の海外での主な出来事をまとめてみた。月ごとに、おおむね次の順番に整理してある。
  • FCC等の規制関係
  • 元ベル系地域電話会社(AT&T、Verizon、Qwest)関係
  • Sprint/Nextel関係
  • その他の米国電気通信事業者関係
  • その他の米国企業(ケーブル事業者、インターネット事業者等)
  • 欧州の規制当局関係
  • 欧州の電気通信事業者関係
  • アジア・大洋州・アフリカ・中南米等の電気通信事業者関係
  • メーカー関係等

【参考】2008年の主要な出来事

■主要なニュースと新たな潮流

(1)AT&TとVerizonの順調な成長。ただし最近の不況でAT&Tも要員削減へ
 二大事業者は、買収・合併の効果も定着し始め、携帯電話、広帯域の分野での業績の基礎固めのみでなく、ビデオ事業への進出も着々と成果をあげつつある。AT&TはU-verseで100万の大台に乗り、VerizonのFiOSも150万加入に到達した。FiOSはニューヨークに本格的な進出したばかりでなく、ケーブル会社最大手Comcastの本拠地Philadelphiaにも殴り込みをかけている。両社ともに家電製品全般の修理事業に乗り出すのも注目に値する。ただし、最近の経済情勢を受けて、AT&Tも、2009年末までに従業員の4%に相当する12,000名の削減計画を発表した。

(2)その他の米国電気通信事業者はすべて苦境
 Qwestは元ベル系地域電話会社にもかかわらず停滞し、上記2社に大きく水をあけられて、経営も不安定。独立系最大手となったSprint/Nextelも、買収したばかりのNextel部門を売りに出すなど、経営方針も定まらず、買収の標的になり下がっている。Level 3、Vonage、Frontier Communications、等の新顔事業者も破たんスレスレの状態が続く。
Hawaiian Telecomは、会社更生法での再生を目指す。最近の経済情勢の悪化で、その他も次々と要員リストラ等を発表しつつある。

(3)AT&T/Verizon2社とケーブル会社の競争は熾烈化。独でもDTがIPTV。
 AT&TとVerizonのビデオ事業への進出と成功で、ケーブル会社側も通信事業に打って出て、Comcastは第4位の電話会社となった。両陣営ともにトリプル・プレイと称される電話/高速インターネット/ビデオをパッケージ化する努力をしているが、顧客満足度調査では、電気通信事業者のほうが、料金、サービス面で評判が良い。
欧州でもDTがIPTVで10万加入者を達成した。

(4)電気通信事業者の合併/買収が息を吹き返す
 1990年台後半の合併ブームのあと2000年ごろのいわゆる「ITバブル」の崩壊以降、ほとんど影を潜めていた合併/買収が目立ちだした。米国内でのVerizon Wirrelessによるルーラル地域の携帯電話会社Alltelの買収、Sprint/NextelとClearwireのWiMAX のJVのほか、DTはギリシャ最大の電話会社OTEの持ち分の増加し、FTもアフリカ進出意欲を表明、失敗したもののスウェーデン等のTeliaSoneraの買収に動いた。Verizonはスペイン、イタリー、アイルランド、スウェーデンでの拡張工事の終了後に、同一規格のサービスを提供へ。

(5)米国の競争事業者の回線数、大きく減少
固定回線のうち競争事業者が提供するものは2,870万回線で、シェアは17%。全体の減少率4.5%を大きく上回り2006年中に9.2%減少した。FCCが広帯域普及のために既存事業者の投資インセンティブに配意して、1996年電気通信法の設けた競争事業者優遇措置(UNE、リセール)の是正をしたのが響いた。

(6)FCC、テレビのデジタル化のあと空く周波数転用(white space)
FCCは、2009年2月のテレビのデジタル化のあと空く周波数の再利用のためのオークションを行い、落札総額195.92億ドルを国庫収入とした。また、テレビ放送の隙間(White Space)利用の無線免許不要の機器での新サービスの制度を決定した。

(7)インターネットの過大利用の規制の動き
Frontier Communicationsは、近く、顧客が定められた通信容量をこえた場合に、gigabyteあたり1ないし2ドルを加算する課金方式を採用するかもしれない。Time Warner cableもNYのRochesterで新しいモデルをテストしている。Comcastも10月1日からdownloads/uploads を 250 gigabytesに制限した。AT&TはBeaumont, Texasで、高速インターネット利用顧客に利用限度を課すプランのテストを開始することを明らかにした。毎月のダウンロード容量に限度を設け、それを超えた場合に追加料金を課す方式。Nevadaでも同様なテストへ。

(8)欧州議会、加盟各国の電気通信事業規制機関の発言力を後押し
欧州委員会の電気通信事業担当委員Viviane Reding は、加盟各国の規制当局がEUの採択する電気通信事業規制方針にもっと意見を述べられるようにすべきだとする欧州議会の勧告を受諾し、妥協した。同委員はEUの権限強化を策してきたが一歩後退を余儀なくされた。

(9)Obama次期大統領、広帯域の普及促進を表明。IT分野は楽観的な見通し
Obama次期大統領は自身の政権の間に、広帯域の促進を約束した。米国の広帯域普及が世界各国のうちで15位なのを指摘して、「子供はだれでもがオンラインを取得できるチャンスがなければならず、私が大統領になったらそうなるだろう」と述べた。Obama新大統領がIT分野の必要性を認識していることを材料に、新政府でのIT分野は、e-government(電子政府)、医療関係IT、教育等への助成の恩恵を受けると見る業界関係者が多い。)

(10)新Obama政権でのFCC委員長の候補取り沙汰
政権交代に伴うFCCの現Martin委員長の後任については、種々取り沙汰されているが、その主なものは、Obama氏のHarvard大の同級生Julius Genachowski (Reed Hundt元FCC委員長の法律顧問)、元FCC総務部長Blair Levin、および現民主党系委員のJonathan Adelstein 、 Michael Copps である。1月早々にも決定か。

(11)広告依存の無料長距離通信
新しいVoIPサービスであるCalling Americaは、無料通話を米国とカナダで提供し始めた。広告でコストをまかなう方式で、顧客は接続される前に広告を聞かねばならない。登録した顧客は15分間まで、その他の顧客は2分間までに制限されている。

(12)メーカーの経営は深刻
 昨年来、不況に悩んできた通信・情報関連メーカーは、このところの不況の深刻化で軒並み一段と困難な時期を迎えている。Alcatel-Lucentではトップ2名が退任し、Nortelも「事態が急迫しているわけではない」としながらも、ベストな対処策の検討に際して破産の場合をも検討の対象とした。Nortelは、NY証取での上場廃止の危機に瀕し、格付けもダウンされた。

(13)英国政府、公益事業者の「smart meter」構想に巨額補助金
英国政府は来年、2,600万の全世帯にデジタル方式の"smart meter" utility-monitoring systemを設置する契約を提示する。大手通信事業者やシステム・ インテグレーターなどがパートナーシップの形成について話し合いを開始している。Vodafone、BT グループ、O2、Logica、Accenture、IBM、Capgemini等が、政府の107億ドルものメータ設置助成を狙っている。

【参考】2008年の主要な出来事

寄稿 木村 寛治
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