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2011年10月18日掲載

「フェイスブック」を始めた「ガラケー人間」

グローバル研究G
グループリーダー 真崎 秀介
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 今年6月に「フェイスブック」の利用を始めました。日本でも徐々に利用が拡大していますが、世界では8億人のユーザーがいると言われる巨大な「ソーシャルメディア」です。2010年末にアフリカのチュニジアで起こった「ジャスミン革命」は「フェイスブック」などソーシャルメディアによる情報伝達が大きな力を発揮したということで日本でもその存在がクローズアップされました。その後、「ジャスミン革命」の影響はリビアのカダフィ政権崩壊まで及んでいます。

 「フェイスブック」は「SNS」(ソーシャルネットワークサービス)のなかでも世界各国でトップシェアを占めているサービスですが、これまで日本は「フェイスブック」の利用が少ない例外国の一つでした。しかし、今年に入り、利用者の数が急増し、パソコンだけのユーザーで1千万人を突破したと推計されています。これにスマホの利用者を含めると更にその数は大きくなるものと推計されます。これまで日本ではmixi(ミクシィ)など日本固有のSNSが大きなシェアを占めてきましたが、これからの「フェイスブック」ユーザー拡大の動向が注目されるところです。

何故「ガラケー人間」が「フェイスブック」を始めたか?

 ICT利用に疎い「ガラケー人間」が何故「フェイスブック」を始めたか、その利用体験はどうかをお伝えすることにより、「フェイスブック」利用に躊躇されている皆さんの参考にしていただきたいと思います。

 「フェイスブック」の利用登録は極めて簡単で実名とメールアドレス、パスワードを登録するだけで、その他の情報、例えば本人の顔写真、生年月日、出身地、趣味などの登録は本人の自由選択です。勿論、利用料はかかりません。初めは実名のみを登録し、徐々に個人情報を追加していけば、その情報に関連する友人が増える仕組みとなっています。私が「フェイスブック」を始めた動機は仕事上、社内のホームページや定期刊行物への執筆を知人、友人に知ってもらいためでした。反応があれば、執筆するインセンティブが湧くものです。また、会社は情報発信することが一つのミッションであることから会社のPRにも繋がるというメリットがあると思いました。会社によっては公私の境目がはっきりしないことから「フェイスブック」の利用を認めないところもあれば、会社や製品のPRに繋がることから積極的に利用を勧める会社まで今のところ対応が大きく分かれています。現在、「フェイスブック」上の友人の数は80名を超えましたが、多くが現在の職場関係者や仕事の関係者です。なかには大学の同窓生や職場OBがいて、仕事を離れても趣味の世界で仲間が広がる可能性もあると考えています。

「フェイスブック」を始めてみて

 「フェイスブック」を利用し始めて4カ月になりますが、利用の感想を述べてみたいと思います。

 まず便利な点です。最近は通勤途中など「フェイスブック」で友人情報をチェックすることが多くなりました。これまではスマホでBBCニュースや日本のニュースを見ていましたが、友人発の情報はより親近感があり、友人の趣味や行動が分かり、リアルな場でのコミュニケーション活性化に繋がることが分かりました。また、ジャカルタ事務所駐在当時の職場仲間からも連絡があり、旧交を温めることが出来ました。フェイスブック上に「いいね」ボタンがあり、友人の「いいね」ボタンのリンクにより、有益な情報を得ることも出来ます。「フェイスブック」上の友人に対し、意見を求めたり、分からないことを質問することも可能です。職場の懇親会や壮行会など記念の写真を友人が撮ってくれて、頼みもしないのに自分の「フェイスブック」上に「タグ」付けをしてくれるお友達もいます。
最近「フェイスブック」が自分史を自動的に編集する機能を追加したというニュースが流れました。一時、自分史ブームが起こりましたが、自分史を書きたい人にとっては朗報だと思います。「フェイスブック」上での日々の情報発信や写真がそのまま簡単に自分史になります。

 ここまで「フェイスブック」利用のメリットを挙げましたが、マイナス面もあります。まず、セキュリティ面の問題です。情報発信すればするほど個人の情報が集積され、悪意のある第三者にとっては労せずして個人情報が集められることになることには注意をすべきでしょう。また、「フェイスブック」を有効に道具として使うつもりが、知らぬ間に道具に使われることもあり得ます。パソコンや携帯のメールも同様のことが起こっていますが、友人からのメッセージ、あるいは誕生日の自動連絡に返事をしないといけないと、いつも「フェイスブック」を見ないと落ち着かないということになりかねません。

今後どうなる「フェイスブック」

 情報通信の世界ではあるサービスが一定の量を超えると爆発的に普及すると言われています。「フェイスブック」は既にこの閾値を超えており、スマホ/タブレットの普及と相まって更に普及が拡大するものと思われます。

 最近のニュースとして「フェイスブック」がVoIPサービス最大のスカイプと提携したことが報ぜられました。近い将来VOIPを利用した友人間での安価なビデオチャットが実現する可能性があります。また、個人間の利用だけでなく、ビジネスシーンでの利用の方が進み、これまでの懸案だったビデオ会議が簡易な形で実現するかもしれません。一方、普及に伴う「影」の部分が拡大することも懸念されます。ひとつはビデオチャットなど動画の利用によるトラフヒックの急増。既にモバイルトラヒックが急増し、キャリアはその対策に頭を悩ましており、モバイルトラフヒックを固定回線にオフロードするためWi-Fiやフェムトセルの利用、あるいは料金の「定額制」から「従量制」へという料金制度の見直しが検討されています。また、セキュリティやプライバシーの問題も大きくなるものと思われます。常に悪意のある第三者に情報が漏れるという前提での利用が求められます。

 日本では高度経済成長に伴う「共同体」の崩壊で、孤立化が社会問題になっていますが、ソーシャルネットワークサービスはバーチャルでの共同体復活の動きであり、これがリアルと結びつくことにより新たな「共同体」形成の可能性を秘めているものと思われます。

【関連レポート】「スマホ」を持った「ガラケー人間」2.0

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