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Global Perspective 2013
2013年4月8日掲載

「Nokia Life Service」はアフリカでのNokia再興になるか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2013年2月26日、フィンランドの携帯電話メーカーのNokiaはアフリカで事業展開をしているインド系の通信事業者Bharti Airtelと提携して発展途上国での情報提供サービスである「Nokia Life Service」をケニアで提供すると報じられた(※1)。2013年2月末にバルセロナで開催されたMobile World Congressの際にNokiaからリリースされていた(※2)。

「Nokia Life Service」

今回、Nokiaがケニアで提供する「Nokia Life Service」は2009年にインドで開始され、その後中国、インドネシア、ナイジェリアといった新興国へと広がっていった。日常の生活に関する情報、健康・医療、農業情報、教育情報、娯楽情報、宗教・スピリチュアルに関する情報などがNokiaの携帯電話を使用している人にパーソナライズした情報をSMSを通じて配信されるサービスである。現在、約90のコンテンツプロバイダー、大学、NGOなどから18の言語で様々な情報が配信されており、全世界で9,500万の利用者がいる。

NokiaとAirtelのアフリカでの取組み

今回のケニアでの「Nokia Life Service」はヘルスケア、教育、エンターテイメント、政治ニュースの4分野を主軸とするほか、ブリティッシュ・カウンシルと提携して英語学習コンテンツなども英語とスワヒリ語で配信する。1日2ケニア・シリング(約2円弱)で毎日様々な情報が配信される。ケニアは約4,000万の人口のうち65%が郊外(ルーラル地域)に住んでいるため、彼らが求めている日々の情報を配信していく計画である(※3)。

また、Nokiaは「Nokia Life Service」以外にも「Nokia Xpress Browser」をAirtelユーザ向けに提供する。このブラウザはNokiaが提供するクラウドベースのブラウザで、データが圧縮されて通信されるため従来のブラウザよりもダウンロードスピードが90%速く、またユーザのデータ通信費用の負担も軽くてすむ。
 さらにNokiaが提供するアプリストア「Nokia Store」からのアプリダウンロード時にAirtelのキャリア課金が利用できるようにする。

両社はケニアでまずサービスを開始して、その後順次Airtel が事業展開している他のアフリカ諸国に拡大していく予定である。

競争が熾烈化しているアフリカでの携帯電話メーカー

アフリカの携帯電話端末市場では中古品の人気が高い。かつては中古品、新品ともにNokiaが圧倒的にシェアは高かった。しかし、最近ではアフリカで地場の携帯電話メーカーが端末の開発、販売を行ったり、中国系の端末メーカーの進出も増加している。かつてのようにNokiaの優位性は大幅に減少した。
 Nokiaはアフリカだけでなく先進国でのスマートフォン開発の出遅れによってかつてのような勢いはない。またケニアでは中国メーカーHuaweiがネットワークから端末まで積極的な活動を行っている(参考レポート)。

今までのように「Nokia」というブランドだけで端末が売れる時代ではなくなってきている。端末販売に結びつくような様々な施策が必要になってきている。アフリカ諸国の平均年齢は10代から20代と非常に若い(参考レポート)。みんな携帯電話を保有したがる。アフリカだけでなく新興国では初めて持つ携帯電話は中古品であることが多い。また今回Nokiaが提供するようなSMSを活用した情報配信サービスはアフリカでも同様のサービスが多く存在している。NokiaとAirtelはこの分野においては後発になる。通信事業者側からすると、端末がどの端末であれ自社の回線を使ってくれることが重要である。そのためにサービスで付加価値をつけることになる、つまり今回のNokiaとの提携で提供する「Nokia Life Service」や「Nokia Xpress Browser」である。しかし他にも同様のサービスがある場合は、通信事業者は多くのサービスから選択して提供することが可能であろう。

今回Nokiaが提供する「Nokia Life Service」や「Nokia Xpress Browser」を利用したいからNokia端末を購入しAirtelの回線を利用しようというユーザがアフリカ諸国にいるだろうか。情報配信という付加価値サービスの提供でNokiaはアフリカ市場でかつてのような勢いを取り戻すことができるのだろうか。Nokiaは他メーカーよりも端末ラインナップが豊富であるという優位性はある。また「Nokia Life Service」は先行するインド、中国、インドネシア、ナイジェリアで9,500万のユーザを獲得した。しかし現在のアフリカには同様の情報配信サービスが存在しており、Nokiaは後発である。
 これからNokiaは端末ラインナップの豊富さに加えて情報配信サービスという付加価値サービスでアフリカ諸国のユーザに遡及していく必要がある。果たしてアフリカにおいて、「Nokia Life Service」がどこまで普及し、Nokiaがかつてのように「アフリカでの携帯電話の王道」になるのか、注目していきたい。

(図1)アフリカで販売されている中華系メーカー「TECHNO」

(図1)アフリカで販売されている中華系メーカー「TECHNO」

(出典:TECHNO)

(図2)アフリカで人気がある端末メーカー「Mi-Fone」の広告でApple、サムスン、Nokiaと自社を学校での授業に例えて表現している。

(図2)アフリカで人気がある端末メーカー「Mi-Fone」の広告

(出典:Mi-Fone)

(参考)

【参考動画】インドでのNokia Life Service

*本情報は2013年4月5日時点のものである。

※1 Venture Africa(2013) Apr 3,2013 “Airtel, Nokia Partner To Provide Value Added Services In Africa”
http://www.ventures-africa.com/2013/04/airtel-nokia-partner-to-provide-value-added-services-in-africa/

※2 Nokia(2013) Feb 26, 2013 “Nokia Life Services to Expand to Kenya”
http://press.nokia.com/2013/02/26/nokia-life-services-to-expand-to-kenya/

※3 Nokia(2013 ) Mar 21, 2013 “Nokia Life in Kenya”
http://conversations.nokia.com/2013/03/21/nokia-life-in-kenya/

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