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情報通信 ニュースの正鵠
2009年12月25日掲載

2009年情報通信業界の10大ニュース

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 2009年も残りあとわずか。今年も個人的に印象に残った情報通信(ICT)業界の10大ニュースをまとめてみたい。ちなみに、昨年の10大ニュースはこちら(2008年情報通信業界の10大ニュース)

 去年とは趣向を変えて、今年は第10位から紹介していこう。

第10位 マイクロソフトと米ヤフーの提携

 昨年1年間、メディアを賑わせ続けた米ヤフーを巡る喧騒は、マイクロソフトとヤフーの検索技術における提携という形で決着した(7月に基本合意し、12月に最終合意)。ヤフーは今後10年間、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」を採用することを約束し、その代わりに検索事業収入の88%を得ることになる(当初5年間)。グーグルに対抗するため検索の技術力を手に入れたいマイクロソフトと、経営を立て直したいヤフーの利害関係が合致した。規制審査は残っているが、およそ2年にわたる米ヤフーを巡る騒動はひとまずこれで幕を閉じる。

第9位 ネットワークのアウトソーシング

 通信業界における最近のトレンドの一つがネットワークのアウトソーシング。昔は、通信事業者が自分自身でネットワーク設備を構築・運営・保守することが当たり前であったが、現在は事情が変わっている。ネットワークまわりを機器ベンダーに任せてしまい、「サービス・プロバイダー化」する事業者が後を絶たない。とはいえ、アウトソーシング戦略はこれまで、体力の無い小規模事業者や、ノウハウを持たない新興事業者が採用する戦略と考えられてきた。ところが今年の7月に、約5,000万の加入者を有する米国の携帯電話事業者スプリント・ネクステルが、エリクソンにネットワークの運用を委託すると発表。アウトソーシングという選択肢が、もはや小規模事業者だけの戦略オプションではないことを印象付けた。エリクソンやノキアシーメンスネットワークといった大手通信機器ベンダーは、多くの通信事業者からアウトソース契約を受託しており、ネットワークに接続されているエンドユーザーの合計はそれぞれ2億加入を超えている。機器ベンダーの運用するネットワークのスケール・メリットは、大手通信事業者のそれをも上回る水準になっているのだ。

第8位 3D映像に脚光

 CESやCEATECなど、今年開催されたさまざまなICT関連イベントにおいて大きな注目を集めたのが3D(立体)映像。ここ数年、3D技術の進歩は目覚ましく、大画面で再現される立体映像には、これまでとは別次元の感動を視聴者にもたらすインパクトがある。2010年には、いよいよパナソニックやソニーなど、日本の大手家電メーカーが3D対応TVの販売を開始、南アフリカで開催されるFIFAワールドカップ・サッカー大会では史上初の3D映像も制作される予定。世界的に注目を集める同大会をきっかけに、多くの人が3D映像の魅力に酔いしれることになるかもしれない。

第7位 次世代無線技術(モバイルWiMAXとコグニティブ無線)

 7月にUQコミュニケーションズがモバイルWiMaxサービスの提供を開始した。提供エリアは限定的であるが、これにより「3.9世代」と呼ばれる次世代無線サービス競争の幕が切って落とされた。来年には競合するLTEのサービス開始も予定されており、「携帯端末で100Mbps」という超高速モバイル通信が利用可能になる日も近い。一方で、これら次世代サービスのカバレッジは、少なくとも当初の段階ではかなり限定的である。そこで、重要になるのが、複数のネットワークを切り替えて利用する技術だ。今年7月に、NTTブロードバンドプラットフォームが発表した「Personal Wireless Router」は、周囲の無線環境を検知して最適なネットワークを自動で選択する「コグニティブ無線」と呼ばれる技術を採用した。2009年は3.9世代携帯と、コグニティブ無線という、今後の移動通信市場において重要な役割を果たすであろう、二つの次世代無線技術が登場した年になった。

第6位 スマートフォン(特にiPhone)の販売が好調

 iPhoneが売れている。2007年7月に初代iPhoneを発売したアップルは、2008年7月に第3世代携帯電話網に対応した「iPhone 3G」、2009年6月には処理速度などを向上させた「iPhone 3GS」と、1年ごとにバージョンアップした機種を投入。着実にユーザーを増やしている。タッチパネルを用いた洗練されたユーザー・インターフェースもさることながら、10万本を超える多様なアプリケーションを利用できる点が支持を集めている。グーグルのモバイルOS「アンドロイド」を搭載した携帯電話も徐々に販売数を伸ばしており、携帯電話とパソコンの境界はさらに曖昧さを増しつつある。

第5位 Twitterブーム

 3年前に提供開始されたTwitterの利用者数が、2009年に急増した。ネットオークションやオンラインショッピングなど、これまで登場したネットサービスの多くは、人々の生活の中に既に存在していた活動を、インターネットと組み合わせることで利便性を増したものである。他方、Twitterは「ひとりごとを世界中の人に公開する」という新たな行動様式を生み出し、従来のネットサービスとは一味違う雰囲気を醸し出している。今後どのような展開を見せるのかが引き続き注目されるサービスと言える。

第4位 政権交代

 流行語大賞にも選ばれた「政権交代」。「非自民政権」という視点で見れば、1993年の細川内閣もそうだが、あの時は「8党連立」というウルトラCを使っており、いわば政治的駆け引きの産物であった。それに対し、総選挙で過半数の議席を獲得した鳩山民主党政権の誕生は、国民が求めた政権交代であり、本当の意味での「55年体制の終焉」と位置づけることもできる。情報通信政策は、政権交代による変化が比較的少ないと言われているが、民主党の政策集(インデックス)に書き込まれた日本版FCCの創設や周波数オークションの実施など、いくつかの課題が注目を集めている。また、情報通信技術が人々の生活に深く浸透している現代社会においては、国際競争力の強化や、行政改革、環境対策など、多くの主要な政策課題に情報通信が深く関与してくる。したがって政権交代は、情報通信業界にとっても、非常に大きな意味を持つものである。

第3位 モバイルARサービスの登場

 AR(拡張現実:Augmented Reality)とは、インターネット上の情報を現実に重ね合わせること。例えば「建物に携帯電話をかざすと、ビルの中の店舗の情報が表示されるサービス」の提供などが考えられている。2009年には頓知・(トンチドット)の「セカイカメラ」、KDDIの「実空間透視ケータイ」、ドコモの「直感ナビ」や「友達レーダー」など、複数のモバイルARサービスが登場して注目を集めた。サービスがまだ実験レベルであることと、一般的な認知度がそれほど高くないことから3位としたが、将来的に人々の生活に与えるインパクトという視点で見ると、1位にしても良いかもしれない。

第2位 クラウド・コンピューティングの台頭

 ICT業界の今年の流行語大賞を選ぶとしたら「クラウド」だろう。クラウド・コンピューティングとは「サービスやアプリケーションなどのコンピューターの機能を端末側に持たせるのではなく、ネットワーク側(インターネットの雲〔クラウド〕の中)で提供する」という概念。導入コストが抑制できる点や、常に最新のアプリケーションを利用できる点など、さまざまなメリットがある。行政改革の一環として、中央政府のITシステムを統合する「霞が関クラウド」や、各自治体のITシステムを統合する「自治体クラウド」といった構想も出てきた。一方で、重要なデータを雲の向こうのどこかに預けてしまうことに対する、セキュリティ上の懸念もある。特に、データセンターが国外に存在する場合、いざという時に日本の国内法で保護できない。クラウド・サービスの提供で先行している事業者が、アマゾンやグーグル、セールスフォースなど、米国企業ばかりという事情もあり「国産クラウド」の台頭を期待する声が日増しに高まっている。

第1位 グリーンICTへの注目

 クラウドとともに、2009年に注目を集めたもう一つのキーワードが、環境に配慮する「グリーンICT」。特に、鳩山首相が国連で「温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減する」と演説したことを受けて、温暖化対策におけるICTの役割がクローズアップされた。地球温暖化の進展自体を疑問視する専門家もいるが、温暖化対策なのか省エネ運動なのかはさておき、社会全体のエネルギー効率を改善させるなど、環境対策においてICTが果たす役割は大きい。また米国のスマートグリッドや中国の電気自動車への取り組みなど、温暖化対策をビジネス・チャンスと捉えて積極的に推進する動きも目立ち始めており、これらの分野は今後数年間注目を集めそうだ。一方、携帯電話の普及などにより、世の中に出回っているICT製品の数は既に膨大であるが、今後さまざまな製品に通信機能やセンサーが組み込まれるようになると、その数はさらに増える。ICTによる温暖化対策だけでなく、ICT業界自身が環境に優しい体質を目指すこともあわせて重要になる。

番外 グーグル・ブック騒動

 世界中の書籍をデジタル化しようという「グーグル・ブック」の壮大な試みは、著作権者から強い批判を浴びて3年前に訴訟になった。昨年、全米出版社協会とグーグルが和解で合意したが、この和解の効果が「米国著作権を有するすべての人物に適用される」ことから、欧州や日本の権利者団体が強く反発した。今年の11月に修正された新和解案では、対象が「米国著作権局に登録された作品か、カナダ、英国、豪州で出版された作品」に絞られ、日本への影響はとりあえず限定的となった。インターネット時代においては、著作権問題への対応が非常に難しいことを象徴する出来事である。


 2009年は1月に米国、9月に日本と、世界の2大経済大国で政権交代が起き、情報通信政策への影響が注目を集めた。しかし、一年間のニュースを並べてみると、政策以上に重要な変化を、情報通信業界にもたらしそうなニュースが数多くあった。1位、2位にランクインしたグリーンICTやクラウド・コンピューティングは言うに及ばず、一般的な認知度はそれほど高くないが、コグニティブ無線やネットワークのアウトソーシングなどは、通信業界の構造にパラダイム転換をもたらす可能性がある。また、モバイルARやTwitterなどのサービスは、人々のインターネットへの関わり方を大きく変えるかもしれない。

 情報通信業界では、数年前から「融合化時代」とか「ユビキタス社会」という表現で、業界が転換期に差し掛かっていることが指摘されてきた。しかしそれらの言葉が指し示す新しい社会のイメージはこれまで、必ずしも具体的なものではなかった。

 2009年は「新しい時代における情報通信業界の姿が見え始めた年」と位置づけることができるのではないだろうか。


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