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Global Perspective 2013
2013年1月10日掲載

ハイチ大地震から3年:サイバーカフェの普及

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2010年1月12日にハイチでM7.0の大地震が起きてから、3年が経つ。東日本大震災の17倍以上となる約25万人以上の死者が出て、いまだに多くの国民が路上や仮設住宅で暮らしているとのことだ。被害総額は約77億5000万ドル以上といわれている。日本からも震災後から延べ2,200人の陸上自衛隊がハイチに派遣され復興支援にあたっている(※1)。ハイチはその後、どうだろうか。

500万回を超えたモバイル送金の利用

2010年11月、ハイチ最大手の通信事業者Digicel Haitiは、Scotia Bankと提携して、ハイチで初めてモバイル送金サービス”TchoTcho Mobile”のローンチした。第2の通信事業者Voila(現Digicel Haiti) も2010年11月、NGO団体MercyCorpsの支援を受けUnibankと提携してモバイル送金"T-Cash"を開始した。
 ビルゲイツの運営する財団The Bill & Melinda Gates Foundationとアメリカ国際開発庁(USAID)は、ハイチでのモバイル送金の導入と普及に向けて1,000万ドルの支援を行っている(参考レポート)。

モバイル送金とは銀行口座を持っていなくとも送金、受金ができることから新興国市場では社会インフラになっていることが多い。出稼ぎで都会や外国に行っている人から家族に送金することで利用されている。ハイチでのモバイル送金は、2012年7月に500万回の利用を超えたと発表された(※2)。ハイチにおいてモバイル送金が社会インフラになりつつあることが伺える。

現在のハイチの携帯電話加入者数は約540万(普及率53%)である。プリペイドカードが主流のため、1人で複数枚保有していることから実際の人口普及率はもう少し低い。とはいえ、2010年には約350万、2011年には約470万の加入者数だったので年々増加はしている。
 ハイチの「コミュニケーション」「モバイル送金」の手段として社会のライフラインとしての携帯電話が今後も増加していくこと期待している。

サイバーカフェでのネット利用

ハイチでは多くの人がインターネットカフェ(ハイチでは「サイバーカフェ」と称されることが多い)でインターネットを利用している。首都ポルトープランスなどにはインターネットカフェが多数ある。インターネットの他に電話やFAXなども利用できる。1時間約25グールド(約48円)でFacebookのようなソーシャルメディアやYouTubeのような動画を楽しんでいる。
 それでもハイチでのインターネット利用者数は100万人程度だから、人口普及率では10%程度である。自宅にPCがあってインターネット環境がある家庭は非常に少ない(世帯普及率では0.2%程度である)。インターネットカフェは普及しつつもあるが、ネット接続も決してブロードバンドではなく、PCのスペックも決して高くない。ハイチ全体ではまだまだ多くの人がインターネットにアクセスできる環境にはない。
 サイバーカフェを利用できる人ははまだ一部のみである。日本のような先進国から見ると粗悪なネット接続環境だが、それでもインターネットが利用できるようになり、多くの情報と接することができるようになったことの意義は大きい。

(図1)ハイチのサイバーカフェ
ハイチのサイバーカフェ

ハイチのサイバーカフェ

まだ国民の大半は貧困生活

大地震からまもなく3年が経つハイチでは未だに復興が進んでいない地域と取り残された人々が多数いる。そのような中でも携帯電話も着実に普及し、それに伴ってモバイル送金でお金のやり取りができるようになってきた。そしてインターネットの利用者も少しずつ増加してきている。
 「人・物・金・情報」の世界的な移動が容易になったことがグローバリゼーションの特徴である。携帯電話、モバイル送金およびインターネットの普及は、ハイチでの「情報」と「金」の流通を促進させていくだろう。携帯電話やインターネットはあくまでも手段(ツール)であるが、これら手段の登場によって人々の生活は少しずつ改善してきている。

一方で、未だに携帯電話やインターネットどころか家を失ったままの人も多い。ハイチでは国民の大半が貧困生活を強いられている。携帯電話やインターネットよりも生活のための水道、電気、食糧といった「ベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)」が満足に手に入らない人が大半である。ハイチではサイバーカフェの利用が1時間で約25グールド(約48円)である。貧困生活者の大半は1日2ドル以下(約160円以下)で生活している。サイバーカフェの利用は、まだ高嶺の花である。
 このような復興(開発)から取り残された人々のことを国際社会は忘れてはならない。ハイチが早期に復旧することを祈願している。

【参考動画】
ハイチでの「サイバーカフェ」

(参考)

*本情報は2012年1月9日時点のものである。

※1 朝雲新聞社(2012年12月20日)
http://www.asagumo-news.com/news/201212/20121225/12122506.html

※2 Bill & Melinda Gates Foundation(2012), “Haiti Mobile Money Initiative Reaches the Five Million Transaction Milestone and Awards Final Prize in Incentive Program,” (2012年7月10日)
http://www.gatesfoundation.org/press-releases/Pages/haiti-mobile-money-milestone-120710.aspx

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