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2014年6月2日掲載 |
アメリカ、中国軍関係者5人をサイバー攻撃の産業スパイ容疑で訴追2014年5月19日、アメリカ司法省は、2006年から2014年にかけて、原子力・太陽光発電や金属分野のアメリカ企業などにサイバー攻撃を行ない、企業秘密を盗んだとして、中国人民解放軍当局者5人を訴追したことを発表した(※1)。この5人は、軍のハッカー組織に関与する『61398部隊』に属する人物であるとのこと(参考レポート)。さらに今回は5人の写真が全世界に公開されている。 アメリカが実際に、サイバー攻撃による企業へのスパイ容疑で海外の政府当局者を訴追したのは今回が初めてであることから注目も高い。そのため日本でもNHKや主要新聞でも取り上げられたので、覚えている方も多いのではないだろうか。 被害を受けたのは、以下の6社と言われている。
ホルダー米司法長官は、外国が軍や諜報の資源と手段を用いてアメリカ企業を攻撃し、自国の国有企業に有利になるよう企業秘密や重要情報を不正入手する場合には、厳しい姿勢で臨む必要があるとの考えを示している。しかし、果たしてアメリカで中国政府当局の5人を訴追して、これからどのように対応するのであろうか。どこまで本当にその5人が関与していたのか、という根拠が見えにくい。 また、毎度のことではあるが、中国側は今回のサイバー攻撃への関与は強く否定している(※3)。さらには中国自身がアメリカからのサイバー攻撃の被害に逢っていることを主張している。これもいつものように「サイバー攻撃をめぐる米中間の舌戦」である。 中国政府によるアメリカ製品への圧力アメリカでは既に中国製品を安全保障上の観点から導入しないようにとの動きは2012年からある(参考レポート)。 2014年5月28日のBloombergの報道によると、中国政府はサイバーセキュリティ上の懸念から国内の金融機関でのアメリカIBMの利用見直しを開始するだろうと報じられている(※4)。またNew York Timesによると「シスコシステムズがアメリカ政府によるサイバー攻撃に加担にしている」という記事が「中国青年報」(China Youth Daily)に掲載されたと報じている(※4)。このような動きは2012年にアメリカ政府が中国製品のアメリカでの使用に懸念を示した頃から存在していたので目新しい話ではない。 アメリカから中国への「警告」サイバー攻撃はお互いが「やられた」「やってない」の舌戦を繰り返している。今回のアメリカによる中国軍関係者5人の訴追と言っても中国にいると、引き渡しを求める、ということなのだろうか。そうであるならば、結局そのままで「警告」という意味であろう。 サイバー攻撃の被害については「手の内」や詳細を明かさないだろうが、何か確証に近いものがあるのだろう。もしくは傍証だけで警告した、ということなのかもしれない。 米中間のサイバー攻撃に関する問題は今後も多く起こるだろうが、不透明な状況のものが多い。但し、今回のアメリカの「警告」的な訴追は、危機状況になったらアメリカはいろいろと対応が出来る、ということを暗に示唆しているのかもしれない。 【参考動画】 *本情報は2014年5月29日時点のものである。 ※1 DoJ(2014)19 May 2014, “Attorney General Eric Holder Speaks at the Press Conference Announcing U.S. Charges Against Five Chinese Military Hackers for Cyber Espionage” ※2 Washington Post(2014) May 2014 Washington Post(2014) May 2014 “China vents outrage over U.S. cyberspying indictment” ※3 Bloomberg May28, 2014 ※4 New York Times (2014) 27 May 2014, “China Pulls Cisco Into Dispute on Cyberspying” |
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