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情報通信 ニュースの正鵠
2011年2月16日掲載

史上最速ペースで売れまくるマイクロソフトKinectがもたらすもの

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 先月初めにラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)。個人的にもっとも印象に残ったのは、マイクロソフトのバルマーCEOの基調講演において「(ゲーム機Xbox 360に接続するモーションセンサー)Kinectが既に800万台売れた」と発表されたことだ。

 Kinectが発売されたのは昨年の11月。2カ月間でなんと800万台も売れたという。ちなみに、昨年大ヒットしたアップルのiPadは、最初の6カ月で約750万台だった。単価が違うとはいえ、Kinectの売れ行きは凄まじい。マイクロソフトによれば、Kinectは「歴史上もっとも早いペースで売れているコンシューマ・エレクトロニクス」だ。

 ハイペースで売れまくるKinectはマイクロソフトの収益構造にも変化をもたらしつつある。1月27日に発表された同社の2010年10月〜12月期(2011年会計年度第2四半期)の業績資料によれば、「エンタテイメント」事業(Entertainment and devices division)が大きく売り上げを伸ばした。

図表:マイクロソフトのセグメント別売上

 エンタテイメント事業が大幅な増収となった最大の要因はKinectの登場。同製品でいくら稼いだのかははっきりしないが、仮に1台平均140ドルで800万台売れたとすると、それだけで11.2億ドル(約940億円)の売り上げになる。また新しいユーザ・インタフェースの登場は、Xbox 360本体やゲームソフトの販売を押し上げていると考えられる。

 その結果、エンタテイメント事業は、マイクロソフトの売上の19パーセントを占めるビジネスに成長した。Xboxはいまや、「Office」や「Windows」に比肩し得る戦略商品である(Officeの売上はビジネスセグメントに含まれている)。

図表:マイクロソフトの売上構成

 モーションセンサーというと任天堂のWiiを思い出す人が多いかもしれないが、Wiiとは違い、Kinectはリモコンを使用せず、人の動作を直接認識する。リモコンを利用しないモーションセンサーには高度な技術が必要なため、製品化は遅れたが、より多くの用途に対応できるというメリットをもたらした。

 例えば、プレイヤーの全身を認識することで複雑な動作のセンシングができるし、顔を識別すれば誰がプレーしているのかの判別も可能だ。さらに、マイクロソフトによれば、表情(facial expressions)を読み取ることもできるのだという。笑っている顔、ムスっとした顔、眉毛をピクピク動かす仕草。そういった細かい表情の変化を認識して、キャラクターに反映させれば、プレイヤーの分身を創り出すことが可能になる。

 マイクロソフトは、実際にそれをやろうとしている。同社は今年の春以降、オンライン・サービスXbox Liveの有料会員向け付加機能として、「Avatar Kinect」を提供する予定である。

図表:Avatar Kinect

 このようなサービスが広く利用されるようになれば、従来は単なる記号でしかなかったアバターが、文字通り「ユーザの分身」として、オンライン世界を動き回ることになる。

 Kinectは、人々のネットライフを次なるステージに誘うポテンシャルを持つものになるかもしれない。

※Kinectについては、昨年5月にもコラムを書いていますのでそちらもご覧ください。→「GUI(グーイー)とNUI(ニューイー)」へのリンク
(当時は「プロジェクトナタル」と呼ばれていました)


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