先月19日、アップルが第3四半期(4〜6月期)決算を発表した(アップルの会計年度は9月締め)。
各種メディアが報じた通り、引き続き業績は絶好調。第3四半期を終えた時点で、売上、利益ともに、昨年度の年間業績を既に大きく上回っている。

好調な業績発表を受けて株価も値上がり。7月26日には初めて400ドルの大台に乗せた(その後少し値下がり)。業績不振にあえいでいた1997年頃と比較すると、株価は80倍に膨れ上がった。
7月末時点で、アップルの株式時価総額は3,620億ドル(約29兆円)。これは、マイクロソフト(2,295億ドル)とインテル(1,182億ドル)の合計よりも大きい。マイクロソフトのウィンドウズとインテルのプロセッサーを搭載した、いわゆる「ウィンテル」パソコンに市場を席捲され、経営危機に陥っていた時代のアップルを知る者にとっては、隔世の感がある。

7月末現在、アップルの株式時価総額は、エクソン・モービルの3,931億ドル(約31兆円)に次ぐ世界第2位。株価のトレンドを見る限りにおいては、アップルが世界一になる日は近いように思える(過去5年間にアップル株価は6倍になったが、エクソン・モービル株価は16%増にとどまっている)。
躍進の足がかりとなったのは、言うまでもなく音楽プレイヤーのiPod。2001年に発売されたiPodは2004年頃から人気に火が付き、発売後5年半で1億台を販売。2006年にはアップルの売上の半分がiPodを含む音楽関連事業になった。

iPodの成功で黒字基調に転換したアップルの成長を、さらに加速させたのがスマートフォンのiPhone。2007年に発売されると、毎年バージョン・アップを繰り返し、そのたびに話題を呼んだ。販売台数は4年弱で累計1億台に達し、現在ではアップルの売上の45%を占める稼ぎ頭となっている。
さらに昨年発売されたタブレット端末iPadも大ヒット。発売後1年間で約2,000万台を販売し、その売上は既にiPodを上回っている。
起業したばかりの新興企業ならいざしらず、売上規模数兆円の大企業が、新製品を発売するたびに、大きく売上構成を変化させ、なおかつ売上、利益ともにこれほどの急成長を続けていくというのは、過去に例がない。21世紀に入ってから、世界的な大ヒット製品を3つも出したアップルならではの離れ業である。

音楽プレイヤー市場でトップをひた走るiPod、スマートフォン市場において大きな存在感を持つiPhone、タブレット市場で独走するiPad。各端末の好調な売れ行きは、iTunes、App Store、iBookstoreの顧客拡大を意味する。急成長を支えているのは主としてハードウェアの売上であるが、各プラットフォーム上での取引に付随する手数料収入も徐々に増えている(2011年度は第3四半期までで39億ドル)。
垂直統合型で、サードパーティが提供するアプリケーションの中身まで厳しく審査するアップルのビジネスモデルは、しばしば批判の対象となってきた。iPhoneやiPadが「90年代のPC市場におけるマッキントッシュと同じ運命をたどるのではないか」という指摘は、予測であるとともに相当数の業界関係者にとっての願望でもある。しかし、今のところアップルの勢いは増すばかり。
この非常識なまでの急成長はいつまで続くのだろうか。