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情報通信 ニュースの正鵠
2011年10月11日掲載

直感的なユーザ・インタフェース

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 アップルのスティーブ・ジョブズ前CEOの訃報を受け、先週末は世界中が喪に服したようだった。

 ジョブズ氏と彼が興したアップルが情報通信分野にもたらした影響はいろいろあるが、個人的にもっとも大きいと思うのは、MacやiPhone/iPadなどの製品を通じて、情報端末のユーザ・インタフェースを、直感的に理解可能なものにしたことだ。

 現在、多くの消費者はタッチパネルを搭載した新しい端末を前にしても、さほど戸惑わない。

 「スワイプ」(指を画面上ですべらせる操作)をすれば画面が切り替わるだろう、とか、「ピンチアウト」(2本指を遠ざけるように拡げる操作)をすれば画像が拡大されるであろうといった、基本動作についてはだいたい想像できる。

 こうした操作方法は、今では「あたり前」のように感じるが、決して必然的なものではない。

 iPhoneでウェブ・ページを見ていると、画面を拡大しようとしたつもりが、サイトに埋め込まれているリンクに触れてしまい、別のページに切り替わってしまうことが時々ある。「ユーザの意図を正確に伝える」ことが、「良いユーザ・インタフェースの条件」であると考えるならば、小さな画面のスマートフォンにおいてすべての操作をタッチパネル上で行わせることは賢明ではない。

 では、iPhoneに「画面拡大/縮小ボタン」や、「ページ切替ボタン」を付けたらどうか?

 おそらく、入力の正確性を増すというプラス以上に、操作の爽快感を損なうというマイナスの効果をもたらすだろう。「操作していて気持ちいいこと」や「直感的に理解できること」を重視して、「入力の正確さ」については割り切った。それがiPhoneの爆発的なヒットにつながった一つの要因と言えるだろう。

 最近、知人から面白い話を聞いた。1才半になる子どもが、画面を見るとタッチパネルだと思い込んでしまうというのだ。テレビを観ている時にピンチアウトして映像を拡大しようとしたり、スワイプして画面を切り替えようとしたりするらしい。

 ジョブズ氏のこだわりが創り上げた、直感的に理解できるユーザ・インタフェース。今後しばらくの間、人々と情報通信の間をつなぐ重要な役割を果たすことになりそうだ。


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