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2013年1月22日掲載 |
今年も1月上旬にラスベガスでCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)が開催された。 すでに多くのメディアが報道しているが、当コラムでも簡単に振り返っておきたい。3,000社以上が出展している大イベントなので、到底すべては網羅できないが、会場を歩きまわって特に印象に残ったトピックを分野別に紹介しよう。 (写真)2013CES模様 ![]() 1. 4Kテレビ昨年のCESでは日本メーカーが4K(ultra HD)テレビを展示して注目を集めたが、今回は、サムスン、LG、Hisense、Haier、Skyworthなどの海外勢を含め、多くのメーカーが展示を行った。4Kテレビは「日本メーカーの技術志向の製品づくりの象徴」として批判されることが多いが、世界の大手テレビ・メーカーはみな視野に入れている。 もっとも、市場が今すぐに立ち上がるというわけではなく、どのようなアプローチで製品をつくれば需要を喚起できるのかを考えていく必要がある。 その意味で気になるのは、コンテンツの動向だ。現状では4Kテレビを購入しても、フルHDのコンテンツを4K向けに変換(アップコンバージョン)して楽しむくらいしかない。変換技術も進化してはいるが、やはりネイティブ・コンテンツにはかなわない。今回のCESでは、LG電子が韓国KBSの4K放送、サムスン電子がネットフリックスの4Kコンテンツを展示して注目を集めた。 2. 3Dプリンター1年くらい前から認知度が急速に高まってきた3Dプリンターも、注目分野の一つ。複数の企業がプリンター本体を展示したほか、3Dプリンターを利用したサービスや製品も展示された。 それらの展示製品の中で、会場で特に目立っていたのが3D Systems社の“Cube X”。 【映像】 Cube Xの製品紹介ビデオ 同社は昨年のCESにおいて、「1,299ドル(当時のレートで約10万円)で買える3Dプリンター“Cube”を発表し大きな注目を集めたが、今回は、最大3色まで使えるコンパクト3Dプリンター“Cube X”をお披露目した。 筺体が大型化し、価格もアップ(単色印刷のCube Xが3,588ドル、二色印刷のCube X Duoが4,066ドル、三色印刷のCube X Trioが4,784ドル)するため、お手軽感は薄れたが、先代のCubeと比べると、造形できる製品のサイズが大きくなり、解像度も向上した。何より、マルチカラーの3D印刷がこのコンパクトな製品で利用できるというのは魅力だろう。 同製品は今年の2月から米国で発売予定。 3. スマート家電スマート家電も注目分野の一つ。 LG電子は2年前のCESから、積極的にスマート家電の提案を行ってきたが、2013年に一連の新製品を販売すると発表した。 【映像】 LG電子のプレス・カンファレンス模様(スマート家電に関する発表は2分40秒あたりから) 遠隔で故障個所の診断が可能なスマート洗濯機、スマートフォンを利用した調理設定が可能なスマート・オーブン、食材管理システムを搭載したスマート冷蔵庫、スマートフォンからビルトインカメラの映像などを確認できるスマート掃除機。これらの製品が今年中に発売される。 日本では、スマート家電について厳しい意見が多いが、海外の市場でこれらの新製品がどのような受け止め方をされるのか、注目されるところだ。 4. フィットネスCESでは、数年前から健康関連製品の製品展示が目立つようになってきた。 最初の頃は、ヘルスメーターや血圧計などで測定したデータを近距離無線技術でスマートフォンやパソコンに自動転送するといったヘルスケア製品が多かったが、最近は、運動時に利用するフィットネス系のガジェットも増えてきた。 【映像】 4iiii社Sportiiiis 4iiii - Corporate Video from Circle Films on Vimeo. 4iiii社が提供するSportiiiisは、サングラスやメガネに装着して利用するガジェット。心拍数やスピードなどの測定データをもとに、運動の負荷の程度を色で表示してアスリートにフィードバックする(あらかじめ設定した負荷レベルにあっていると緑、基準値を外れると黄色や赤に変化)。また音声でデータを確認することもできる。 すでに149ドルで発売中(心拍センサーなどは別売り)。 5. クルマの情報化クルマ社会の米国で開催されるイベントらしく、CESでは毎年、数多くの車載エレクトロニクス製品が展示される。 かつてはカー・オーディオやカーナビが展示の主役であったが、ここ数年はクルマで利用できるスマートフォン・アプリやICTを活用したセーフティ関連技術が目立つようになってきた。 今年のCESには、GM、フォード、クライスラー、トヨタ(レクサス)、スバル、アウディ、ヒュンダイ、キアなど、世界の大手自動車メーカーが出展し、車載エレクトロニクスがいまや、クルマ自身の差別化につながる戦略技術になっていることをあらためて印象付けた。 そんな今年のCESにおいて、もっとも大きな注目を集めたのは、クルマ用スマホ・アプリのSDK(ソフトウェア開発キット)を公開したフォードの発表であろう。 “クルマが情報端末化していく”という方向性は、昨年のモーターショーなどでも示された未来図であるが、SDKを公開して誰でもクルマ向けのアプリを開発できるようにするという戦略は、そうした未来に向けた大胆な一歩ということができる。 6. BMIマイクロソフトのKinectの登場により、モーション認識や音声認識がユーザ・インタフェース(UI)として実用に耐え得ることが証明された現在、UIにおける次の注目分野は脳波による入力BMI(ブレイン・マシーン・インタフェース)だ。 すでに多くの取り組みがあるが、脳波を測定するために頭部になんらかの装置を取り付けるのが一般的だ。しかし、それはあまりスマートではない。そんな課題を解決するのがFreer Logic社のBodyWaveだ。 【映像】 Freer Logic社のBodyWave 同社が開発しているBodyWaveは頭ではなく、腕に取り付けて脳波を測定する。展示会場では「BodyWaveを装着して『集中』するとテレビ画面に表示されたダイバーが潜水していく」というデモをやっていた。 BMIの将来を考える上での関連トピックとして注目しておきたい。 7. その他最後に紹介するのはDisplair社のエア・ディスプレイ。 【映像】 Displairの紹介ビデオ 同社は2010年にロシアの大学生が起こしたベンチャー企業で、水蒸気を含んだ空気を噴出し、それをディスプレイ代わりに利用する製品“Displair”を提供する。モーション認識技術を組み合わせることで、インタラクティブな操作も可能である。 私が訪れた時には、ブースに英語を話せる人がおらず、詳しい話を聞くことはできなかったが、「2013年から量産される見込み」と「ロシアNOW」が伝えている。 【リンク】過去の関連記事 |
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