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Global Perspective 2011
2011年8月26日掲載

ドイツ:「Mpass」〜NFCサービス普及のカギは“遠くの親戚より近くの他人”

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 ドイツの主要3通信事業者Vodafoneドイツ、ドイツテレコム(T-Mobile)、 Telefonicaドイツ(O2) が、2012年に共同でNFCによるモバイルペイメントサービスを開始すると発表した。3社は既にMpassという会社でSMSのモバイルペイメントサービスを行っており、今回はNFCサービス提供に向けた同社の強化によるモバイルペイメント提供となるようだ。

 当初はスティッカー(シール)タイプのNFCサービスを2012年初頭に開始し、続いてNFC対応のスマートフォンによるサービス提供を予定している。

 ドイツテレコムは、2011年2月に自社でNFCに対してコミットメントを表明していた。その時は、ドイツの他通信事業者との提携については明言せずに自社グループの他国でのサービス開始を公表していた。そして半年後の8月にはドイツでのNFCサービス提供に向けての3社での提携である。またT-Mobile UKは既にOrangeとのJVである「Everything Everywhere」NFCサービスを提供している。Vodafone UKもイギリスではイギリスの通信事業者らと連携をしている。Telefonicaもスペインでは自社でNFCサービスの展開を検討している。

 Mpassで対応できる店舗、銀行、カード会社は今回のリリースでは明らかにされていない。今後のドイツでのNFCによる通信事業者間連携によるサービス展開に期待したい。2012年初頭にサービス提供を目指すのであれば、もはや時間の猶予はない。

 Mpassにはドイツ主要事業者のうち第3位のE-plusが加入していない。今後のE-plusの動向にも注目していく必要がある。

 現在欧州では、各国で同国での通信事業者間によるNFCサービス提供に向けたJV設立や提携が非常に積極的に行われている。グループ会社が海外にあってもペイメント機能は国内ユーザを対象に事業者間で連携した方がよいことの証であろう。また海外のグループ会社との協力よりも、国内のライバル会社と提携した方が自国ユーザへのNFCサービス提供においては、特にリアル店舗との連携や決済機能、端末の共有などメリットが多いのであろう。またNFCサービスは市場投入に向けてスピードだけでなく利用者の利便性、安全性も要求される。一見スケールメリットがありそうなグループ会社での協力もそれぞれの国において商習慣や決済機能の異なる海外のパートナー企業との連携よりも、それらを共有する自国ライバル企業と提携した方が自社にとっても利用者にとっても利便性が高いだろう。
自国内でのNFCサービス普及のカギは「遠くの親戚より近くの他人」ではないだろうか。

 「近くの他人」はそれぞれ自国の携帯電話市場では競合他社である。各社がビジネスモデルを確立し、ドイツ市場においてNFCサービスが根付くために積極的に働きかけてもらいたい。

 最後にドイツ携帯電話市場について簡単にみてみたい。
携帯電話加入者約1億960万人。加入率約134%。MVNOも多く乱立する飽和市場である。(2011年3月現在)

1.Vodafoneドイツ
・シェア33.5%
・イギリスVodafoneグループ
2.T-Mobile
・シェア31.5%
・ドイツテレコムグループ
3.E-plus
・シェア19.1%
・オランダKPNグループ
4.Telefonica ドイツ
・シェア15.8%
・スペインTelefonicaグループ(旧O2ドイツ)

(参考サイト)Mpass

【参考動画:Mpassに関するニュース(2009年)】

*本情報は2011年8月18日時点のものである。

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