トレンド情報
トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「95年度の移動体通信サービスを振り返って」

(96.05)

95年度は、移動体通信サービスにとって、エポック・メーキングな年であった。主だったものでは、自動車・携帯電話の相次ぐ料金値下げ、それによって起こった加入数の著しい増加、PHS(Personal Handy-phone System)の公衆サービス開業、ポケットベルのFLEX−TDに基づくサービス開始等が挙げられる。
 以下、自動車・携帯電話、PHS、ポケットベルの3サービスについて、それぞれの95年度の動向と96年度以降の見通しについて、述べてみる。
  1. 自動車・携帯電話
  2. PHS
  3. ポケットベル(ページング)


1.自動車・携帯電話
(1)相次ぐ料金値下げにより、加入数が増加−1,000万加入突破へ

 95年度の自動車・携帯電話サービスは、4月1日のNTTドコモグループの通話料金値下げで幕を開けた。従来の「160km以内」「160km以遠」の2段階区分に「営業区域内通話・営業区域隣接地域通話」区分を新設(デジタル1.5GHzには「県内通話」区分も新設)し、かつ、NTTドコモグループの自動車・携帯電話相互間の通話には、距離に関係なく最も安い区分の料金を適用するとした(後に、他社の自動車・携帯電話との通話にも、この料金区分を適用することに改める)。翌5月1日には、他社もこれに追随した。この結果、対地によっては、通話料金が公衆電話よりも安い場合が発生した(例えば、東京から長野にかける場合、公衆電話が3分220円なのに対し、ツーカーセルラー東京及び東京デジタルホンでは3分180円である)。

 6月1日には、IDOを除く全社が新規加入料・手数料の値下げを実施した(IDOは遅れて同様の値下げを実施)。これらの値下げ効果もあり、月間の新規加入数について、4月(31.5万)、6月(42.3万)、7月(47.4万)に、それぞれ最高記録を更新した。8月以降も、月間で40万の大台をキープし続けた。

 NTTドコモグループは、11月1日に月額使用料の値下げを、12月1日に新規加入料の値下げを実施した。他社も12月1日、これに追随して月額使用料・新規加入料の値下げを実施した。この効果もあって、12月の新規加入数は、57.2万と過去最高を記録した。96年1月には首都圏・関西・東海以外の地域に第3事業者としてデジタルツーカー九州が開業、月額の新規加入数も61.7万と60万台に乗り、累計加入数も867万とちょうど94年度末の数字(433万)の倍となった。この月(1月)の10日から、従来の識別番号「030・040」に加えて新番号「080・090」が導入されたが、一部事業者では電話番号が足りないため、「10日まで使用できません」と断わった上で、10日以前に販売を行うほどであった。翌2月には、日数が少ないながら、1月を上回る68.9万を記録した。さらに3月には、84.3万と月間では空前の新規加入数を記録、累計加入数は1,020万と、ついに1,000万を突破した。(95年度の月別の加入数の推移)

 96年3月に、IDOは通話料の値下げと「160km」の距離区分の廃止を郵政相に認可申請した。従来は、まずNTTドコモグループが料金値下げを申請し、他社がこれの後を追うというのが従来のパターンであったが、今回はIDOがまず口火を切った点が注目される。3月中にNTTドコモグループも同様の値下げ申請を行い、共に4月1日から実施された。他社も5月1日から、これに追随した。

 自動車・携帯電話サービスが開始された83年度からの累計加入数の推移は、この通りである。93年度末には213万であった加入数が、94年度には端末の売切制度の開始、新規事業者の参入、料金値下げ等の効果で約2倍の433万となった。それが、95年度にはさらに2倍以上の加入数を達成したことになる。

 今後の見通しとして、96年4月22日に郵政省の諮問機関である電気通信技術審議会が、これからの需要予測を答申した。それによると、これまで2000年に1,250万に達するとしていた自動車・携帯電話の需要予測は大幅に上方修正され、PHSと併せて2,500〜3,250万に達するとされている。
 これだけの加入数を収容するとなれば、周波数の容量不足が懸念されるところである。NTTドコモグループでは、95年12月に、音声情報を従来の11.2kb/sの半分である5.6kb/sに圧縮するハーフレート化を実施して、容量アップを図った。他事業者も、96〜97年中にハーフレート化を実施する予定である。

 また、NTTドコモグループでは、96年秋から5〜7年かけて、アナログ方式をデジタル方式に全面更改して、周波数の有効利用を図る計画である。従来のPDC方式に加え、米国で開発されたCDMA(符号分割多重アクセス)方式も視野に入れており、96年4月24日にはCDMA方式でサービスを行っている韓国移動通信と技術交流を行うことで合意している。一方、DDI系セルラー電話会社は98年からCDMA方式を導入し、21世紀までにアナログ方式を全廃する意向である。IDOにもCDMA方式を導入する計画がある。

(2)多様なサービス
−NTTドコモ追随型から各事業者の独自路線へ

 従来は、料金面だけではなくサービス面においても、まずNTTドコモグループが新サービスを提供し、その後他社がこれに追随するという図式が続いたが、95年に入ってからは、各事業者独自のサービスがいくつか登場してきている。

 まず、NTTドコモグループでいえば、4月に9,600b/sの高速通信を可能にする「ハイパー・ムーバ」端末を市場に投入している。また、3月には、NTTの衛星「N-STAR」を利用して、山間部での通話を可能とした衛星携帯電話サービスが開始されている。

 NTTドコモグループ以外で、付加サービス導入に熱心なのはツーカーグループである。ツーカーグループ3社は、95年11月に業界初のVPNサービスの認可を申請した。携帯電話及びNTT加入電話相互間の内線通話を可能にするもので、ツーカーセルラー東京では、「ツーカービジネスネット」の名前で、サービスを開始している。

 ツーカーホン関西は、携帯電話の着信払いサービスの開始を96年6月頃に予定している。このサービスの開始を予定しているのは現在のところ、関西のみであり、グループ内でも独自性をだしている点が注目される。また、ツーカーセルラー東京及び東海では、通話料金の分計サービスを96年3月から開始している。同様のサービスは、PHSではすでに導入されているが、携帯電話では初めてである。

 DDI系セルラー電話会社グループは、プッシュ式回線からの操作によって、セルラー電話機にメッセージを送信できる「セルラー文字サービス」を96年4月から開始した。ポケットベルと類似のサービスであるが、携帯電話機の電源が切れていたりサービスエリア外にいた場合は、48時間以内なら、着信可能時に改めて通知される点が、ポケットベルよりも優れている。

 今後予定されているサービスとしては、まず、DDI系セルラー電話会社グループが予定している「長期割引サービス」がある。これは、携帯電話を長期間使用しているユーザーの通話料を、自動的に割引くというものである。DDI系セルラー電話会社グループでは96年7月からのサービス開始を予定している。同様のサービスは、NTTドコモグループも導入を予定している。

 これから新しく出てくるサービスとしては、非電話系のサービス−データ通信が挙げられる。NTTドコモでは、1.5GHzデジタル式携帯電話を使用したデータ通信サービスについて、通話料を電話の場合の半額の1分20円(予定)としたモニターサービスを開始する。NTTドコモでは、このモニターによって、非電話系の需要動向を探っていく。
 データ通信のもう1つの方向として、携帯電話のネットワークを使用したパケット通信がある。96年1月から、自動車・携帯電話事業者5グループは、デジタル携帯電話を使用した無線パケット通信の標準化に向け共同で検討作業を開始した。実現すれば、最大28.8kb/sの通信が可能になる。今後は携帯電話に組み込むソフトウェアや無線インターフェイス等の面で標準化案を作成し、電波産業会(ARIB)に持ち込んで正式採用を働きかけることになる。実用化のめどは2000年が予定されている。

このページの最初へ


トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トレンド情報-トピックス[1996年]