トレンド情報 トレンド情報 -トピックス[1996年]<移動通信>
「95年度の移動体通信サービスを振り返って」(96.04)


  1. 自動車・携帯電話
  2. PHS
  3. ポケットベル(ページング)


3.ポケットベル(ページング)

(1)ポケットベル事業が抱えるいくつかの問題点
 ポケットベルの累計加入数は、96年2月末でNTTドコモグループ634万、NCC(テレメッセージ)グループ432万、合計1,066万となっている。95年3月末の累計加入数は935万であったので、今年度も2月までで131万と昨年度の129万並みの新規加入を記録している。

 堅実な上昇を続けているように見えるポケットベル事業であるが、この事業は現在、以下のような問題点に直面している。

  • 端末の売り切りが進まない
     ポケットベルの端末の売り切りは95年3月に開始された。事業者としては返却機器の点検・管理にコストがかかるレンタルよりも売り切りの比率を延ばしたいところであるが、思惑に反して売切りはあまり進んでいない。地域によっても異なるが、だいたい新規加入者の80〜90%はレンタルを選択している。売り切り制度の開始に伴って普及が一気に加速した携帯電話とは全く別の現象が生じている。原因としては、現在のユーザーの主流を占めるパーソナル・ユーザーが、ポケットベルを一つの遊び道具ととらえており、新機種が出ればそちらに乗り替えたいという欲求があるからである。
     事業者側では端末売り切り促進策として、(1)売り切り専用機種の投入(2)端末価格の値下げ(3)求めやすいパッケージ販売の導入(4)レンタル・ユーザーへの預託金制度の導入(5)レンタル料を定額制から変額制に変更、等の施策を採っている。

  • トラヒックの輻輳が発生
     加入者の増加に加えて、文字表示式の普及によりメッセージ打ち込みに時間がかかっていることから、トラヒックが輻輳して呼び出しがかかりにくくなっているという現象が発生している。事業者の中には、一部or全部の新規加入をストップする事例も起こっている。  輻輳緩和のためには設備の増強が必要であるが、ポケットベルは月額基本使用料が定額制であり、またポケットベルの呼出に要する通話料はNTTへの収入となるだけでポケットベル事業者には入らない制度になっているため、設備増強に要するコストを、増えたトラヒックから回収できないことが問題となっている。
     メッセージの打ち込みを簡単にするため(結果的に打ち込み時間の減少が図れる)、考えられたのがトーン・ダイヤラーという装置である。これは、メッセージを装置上で作成すると、そのメッセージをトーン信号の形で音声送出する仕組みになっている。送信者はまずポケットベルの番号をダイヤルし、メッセージ投入の際に受話器にこの装置をあてて使用する。NTTドコモの「ページングトーク」、テレメッセージの「ニコット」「コロンボ」などの高機能端末はこのトーン・ダイヤラー機能を内蔵している。

(2)ポケットベルの新動向
−FLEX−TD方式とFM多重ページング

 95年度においてポケットベルについて注目される新動向は、NTTドコモが96年3月からFLEX−TD方式に基づく高速ページング・サービス「ネクスト」をスタートした点である。
 従来のポケットベルの信号伝送速度は、1,200b/sである。これを高速化すればその分多くの加入者を収容することができる。また、多くの情報量が送信できることから、データ通信やニュースの配信サービスの提供が容易になる。この発想から、世界的にページャーの高速化の動きが起こっている。NTTドコモが導入したのは、米国モトローラが開発したFLEX方式に、タイムダイバーシティ(TD)方式(一種のエラー訂正機能)を付与したものである。
 NTTドコモが導入した「ネクスト」サービス用のページャーは5機種あり、その中の「センティーネクストB11」は、カナ文字を最大48文字まで表示できる(従来機種は30文字)。提供エリアはワイドエリア・サービスのみで、従来機種よりも月額使用料を100円安く2,100円としている。その代わり、ヘビーユーザー対策として、この料金で呼び出せる回数を200回と設定し、それを超えると、超えた50回ごとに300円が加算される。また、従来機種と差別化する意味で、ボイスメール、メッセージ再送サービス、パスワードサービスといった新しい付加サービスを提供している。
 FLEX−TD方式は、東京テレメッセージ等のNCC各社も96年度に導入する予定である。

 96年度内に新しく提供が開始されるサービスとして、FM多重ページングが挙げられる。これは、FMラジオ放送の電波の隙間を利用してページング・サービスを実施するもので、既存のFM放送設備を利用するために設備投資が抑えられ低料金でのサービス提供が可能となる。また、伝送速度が16〜19kb/sと速いため、情報提供サービス等が期待できる。一方、デメリットとしては、FM放送の届く範囲でしか利用できないため、着信面では従来のポケットベルに比べて不安がある。すでに米国などではサービスが提供されている。
 郵政省は、95年10月6日に事業化の方針を決定した。それによると、第一種電気通信事業者であること、すでにページング事業を営んでいる事業者(NTTドコモやテレメッセージ各社)以外が営むこと、提供地域はおおむね地域ブロック単位とすること、等となっている。これを受けて、FM東京とカシオ計算機は、事業化のためのプロジェクトチームを発足した。両社は96年夏にも共同出資で企画会社を設立し、秋にはサービスを開始する。

(海外調査部 正垣 学)

(入稿:1996.04)

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