あらすじ
(1) 日米のB to C ECビジネスの現状比較
◆ 米国のB to C ECビジネス
- 米国のB to C ECは、全体としての市場規模が急激に拡大し、成功する商品やサービスの分野も多様になっている。個別ビジネスを見ても、年収6億ドルを超えるビッグビジネスが出現している。
- ECの市場規模は98年で80億〜100億ドルに拡大と推定
- 成功ビジネスは、年商数千万ドル〜数億円のオーダーに成長
- 個別ビジネスを見ると、米国の成功事例はベンチャービジネスが中心で、ベンチャービジネスの成功を大手企業が追随するパターンになっている。これは、米国ではベンチャービジネスの株式上場が比較的容易で、ビジネスの収益が出なくても将来性があれば資金調達が可能であるからである。
- また、米国の成功事例は日本の例に比べマーケティングを重視している。マーケティングの充実度、サービスの密度では、日米の大きな格差がある。
- 利用者サイドを見ると、米国では幅広い年代層がインターネット・ショッピングを利用しており、年代が高いほど購入額が高い。書籍やギフトを購入するようないわゆるオンライン・ショッピングだけでなく、自動車購入、旅行予約、株式売買等利用サービスの種類も多様になっている。米国では、インターネット・ユーザーの暮らしにECが浸透してきている。
- 米国のインターネット・ユーザー数は日本の約7倍
- 米国インターネット・ユーザーの約4割が40代以上
- 米国インターネット・ユーザーの8割弱がショッピングを経験
- ジェフリー・ムーアの言葉を使えば、米国のB to C ECビジネスは「カズム」を渡り、「トルネード」が起こっていると言える。
- 日本のB to C ECは、市場規模は拡大しているが米国の伸びには及ばない。成功する商品やサービスの分野は米国の成功分野のごく一部分である。個別ビジネスを見ても、年商数千万円〜数十億円レベルで、日米格差は10倍以上。
- ECの市場規模は97年で818億円と推計
- 成功ビジネスは、年商数千万円〜数十億円レベルで日米格差は10倍以上
- 日本の成功事例は、ベンチャービジネスは少なく、大手企業の新規事業か米国成功ベンチャーの日本法人が中心である。日本では、マーケットが小さいためか各社が様子見の状態。試行的段階から本格的ビジネス段階へ移行中である。ユーザーサイドに立ったマーケティングは不十分で、サービス内容は未成熟である。
- 日本のインターネット・ユーザーは、20代、30代が中心で40代以上はごく少数である。インターネット・ショッピング経験者は約4割、購入回数も少ない。ショッピングの経験率、購入頻度ともに日米には格差があり、日本ではインターネット・ユーザーの暮らしにECが浸透しているとは言えない。
- 日本のECは、「カズム」に差し掛かっている。このままではカズムを渡れず失速してしまう可能性もある。
- 「カズムに差し掛かっている」とは、ライフサイクルでいえば、「ビジョン提唱者」から「実用主義者」に広がろうとしている段階
- 「ビジョン提唱者」---多少不完全なサービスでも将来性を期待して利用する。新しい技術の習得が楽しい。不完全な部分を一緒に改善していくことに喜びを感じる
- 「実用主義者」---完全なサービスを望む。
- ユーザーが、「ビジョン提唱者」から「実用主義者」に広がるとき、マーケティングの方法を変えないといけない。
- 日本のインターネット・ショッピングの利用者は、現在は、25〜35歳を中心とするビジョン提唱者層。商品数が少なくても、検索機能が不完全で商品が探しにくくても、注文方法が面倒でも、ハードルを乗り越えて、他の人より先にサービスを利用するのが楽しい人々。
- これからは、実用主義者に。より年代層の広い、女性層を中心とする人々になっていく。
(2)エレクトロニック・コマースは日本でブレイクするか?
◆日本はどうしたらよいのか
- B TO C ECの「実用主義者」となるのは、女性、30代、40代、50代。「実用主義者」をターゲットにしたマーケティングが実践できるか。
- 高度に顧客中心のマーケティング戦略が重要
- 現在の日本のECは、事業者中心すぎるのではないか
- 当初は赤字を覚悟した、本腰を入れた人的、経済的投資が必要
- 資金調達の仕組みを作る
- 大手企業がECビジネスに本格的に人的資源や経済的資源を投入する
- 社内ベンチャー制度などで、大手企業が若い世代が力を発揮しやすい環境を整える
- インターネット利用環境の改善
- 電話料金の市内定額料金サービスの導入
- 新たな端末の可能性
- ビジネス支援サービスの充実
- 新たなビジネス市場の開拓
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