ホーム > Global Perspective >
Global Perspective
2011年4月15日掲載

サムスン・VISA:ロンドンオリンピックにおけるNFCモバイル決済への取組み

グローバル研究グループ 佐藤 仁
[tweet]

 2011年3月31日、韓国の携帯電話メーカーサムスンとクレジットブランドVISAは、2012年のロンドンオリンピックでNFCによるVISAの決裁が可能な端末を提供すると発表した。

  サムスン、VISAともに同オリンピックのスポンサーである。 オリンピック期間中、VISAはロンドンで6万店舗以上のショップやレストランでNFC対応端末での決済を可能にする予定だ。両社はスポンサー契約をしているオリンピック選手にこの端末を無料で提供する。また通信事業者を通じて一般ユーザに販売する。モバイル決済を実施するには、VISA対応の専用SIMカードが必要になる。
サムスンはNFC対応のAndroidOSのスマートフォンやサムスン独自OS「bada」のNFC対応スマートフォン端末を提供する。今回のオリンピックを足がかりに両社はイギリスを皮切りに欧州、世界へ展開をしていく予定だ。

 過去にも数回にわたってイギリスや世界のNFCについてレポートしてきた。特にイギリスは2012年ロンドンオリンピックに向けてNFCへの取組に積極的である。今回のサムスンとVISAの提携のインパクトは大きい。まずVISAが利用可能な店舗をロンドンで6万店舗開拓したことだ。モバイル決裁は端末やSIMで対応してもリアルに利用できる店舗がなければ宝の持ち腐れになってしまう。その点から今回はリアルな店舗はVISAが開拓したので心配はないだろう。あとはサムスンがいかにNFC対応端末とVISA決裁可能なSIMカードの販売を通信事業者や販売代理店と協力して流通させるかにかかっているだろう。店舗に決裁端末だけあっても利用者がいないのではモバイル決裁のエコシステムが回らない。

 今回、大手スポンサー2社が協力してNFCによるモバイルペイメントをオリンピックという世界中から人々が集う時に実施することは注目に値する。特にロンドンの6万店舗で利用できるというメリットは大きい。
一方で、今回のモバイル決裁には、NFC対応の専用端末とVISA対応のSIMカードが必要であることから、誰でもすぐに利用できるわけではない。ユーザにとっては利用するためのハードルがある。先進的なユーザでないと利用しないかもしれない。ユーザにとって、端末やSIMを変更してまで利用したいと思わせるようなインセンティブがないと利用しないだろう。また通信事業者にとっても、VISA専用のSIMカードが必要なことからSIMの変更をされることによって既存のユーザを他社に流出してしまう可能性も考えられる。今後両社はユーザと通信事業者に対して、このサービスと端末をどのように訴求していくのか注目すべきだ。

 欧州VISAはiPhone向けの決裁サービスもリリースした。現在、世界ではNFCによるモバイルペイメントが注目を集めている。そして多くの通信事業者や銀行、メーカーが名乗りを上げてトライアルやコミットメントをしている。規格や方式が乱立し、ユーザや店舗が混乱してしまわないようにすべきである。

 サムスンのオリンピックへの関わりは、1998年の長野での冬季オリンピックから始まっている。それ以来オリンピック時にはWireless Olympic Works (WOW)と呼ばれる無線通信ネットワーク構築で協力してきている。

 ロンドンオリンピックに向けて、現在イギリスのICT業界は非常に活況を呈している。サムソンもVISAもオリンピックのスポンサーであり、勢いのある会社である。オリンピックに向けた両社のNFCに対する今後の取組は引き続き注目していきたい。そして現在世界で乱立している各国でのNFCへの取組に対するモデルケースになることを期待している。

(参考URLサイト)
VISA:http://www.visaeurope.com/
Samsung:http://www.samsung.com/

【参考記事】

本情報は2011年4月5日現在の情報である。

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。