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Global Perspective 2014
2014年1月10日掲載

ハイチ大地震から4年:ハイチ初のタブレットメーカー「Surtab」

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2010年1月12日にハイチでM7.0の大地震が起きてから4年が経つ。東日本大震災の17倍以上となる約25万人以上の死者が出て、いまだに多くの国民が路上や仮設住宅で暮らしているとのことだ。被害総額は約77億5000万ドル以上といわれている。本稿でも毎年ハイチの情報通信事情をお伝えしてきたが、その後はどうだろうか。

ハイチで製造されるタブレット端末「Sur7」

ハイチは世界でも最貧国の1つで国民の80%は劣悪な貧困状態に置かれている。経済活動人口の3分の2が農業に従事しているが規模が零細である上に農業インフラの整備の遅れから食糧自給も安定していない。2010年の大震災はそのハイチの経済にさらに追い打ちをかけた。1人あたりGNIは700ドルである(2011年、世界銀行)。

そのハイチで2013年後半から「Surtab」と「Handxcom」の2社がタブレットの製造を開始した。「Surtab」は現地の通信事業者Digicelで働いていたMaarten Boute氏など複数の投資家によって2013年8月に設立され。またPan-American Development Fundから20万ドルの資金提供も受けている。Android OS搭載の7インチタブレット「Sur7」を開発し、当初はケニア市場向けに製造していたが、ハイチのDigicel向けに製造を行い、既に試験品として2,000台をDigicelに納品している。価格は7,000ハイチグルド(約159ドル)と、1日1ドル以下で生活する国民が大多数のハイチにおいては「スーパーハイエンド端末」である。ハイチ全土53カ所のDigicelの店舗で販売されている。またジャマイカのDigicel Foundation(財団)が学校教育用に220台を購入している。

新たな産業として期待されるタブレット製造

2013年8月に設立された「Surtab」では現在50人以上の従業員が働いている。そのうち20人が製造を行っている。1日の賃金が6.81ドルで、最大で13ドル(1日)まで支給される。ハイチの最低労働賃金が4.54ドルであることから、それよりは高い。1カ月で10,000台のタブレット製造が可能であるが、今後は30,000台まで拡大し、雇用も800人まで拡大したいとMaarten Boute氏は述べている。

2013年8月から「Surtab」のようなタブレットメーカーがハイチにも登場してきたが、現時点ではまだまだハイチ全体の雇用確保や情報通信技術の発展に大きく貢献できる程の規模ではない。しかし、これから工場や経済インフラが整備されると、安価な労働力を大量に提供できるハイチは周辺諸国のメーカーがOEM先として注目する可能性はある。そうすれば労働力として雇用の確保にも繋がり、疲弊した農業に依拠しなくても新たな産業として成長するだろう。世界最貧国のハイチが近い将来、タブレット製造の大きな拠点になり、新たな経済発展をしている日がやってくるかもしれない。

(図1)Surtabでタブレット製造を行う従業員

(図1)Surtabでタブレット製造を行う従業員(1)

(図1)Surtabでタブレット製造を行う従業員(2)

(出典:Surtab)

(参考)

【参考動画】

*本情報は2014年1月9日時点のものである。

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