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情報通信 ニュースの正鵠
2012年12月11日掲載

いつもクールな学生達がこぞって共感を示した携帯電話の歌

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3年くらい前までは、大学の授業で情報通信関連の新製品や新サービスを紹介すると、結構盛り上がったのだが、最近は冷静な反応が返ってくることが増えて来た。

今年の授業で「3Dプリンター」の話をした時もそうだった。動画を見せた時には「すげー!」という驚嘆の声が上がったが、「10万円程度で買える3Dプリンターが今年発売される予定ですが、欲しいと思う人!?」と聞いても誰も手を挙げなかった。興味を持っていそうな学生に訊くと、「スゴイとは思いますけど、利用シーンが思い浮かばないので必要ないかな...」という答えが返ってきた。

そんな私の授業で、今年、学生達の共感をもっとも多く集めたのは、新製品・新サービスではなく、RADWIMPSの携帯電話という歌だった。

2年ほど前の歌だが、現代の若者の気質をよく捉えているような気がしたので、授業で流してアンケートを取ってみた。

すると「ケータイ世代の私達の気持ちを代弁しているような気がした」とか、「ケータイを持っている人は、一度はこんな思いをしたことがあると思う」など、ほぼ全員が「詩の内容に共感できる」と回答した。また「ケータイなんて無い方がいいと思ったことがあるか?」と質問したところ、過半数の学生が「ある」と回答した。

日本に携帯電話が登場したのは1987年で、1990年代の半ば以降急速に普及が進んだ。今の大学生は大半が1990年代生まれなので、早ければ小学生でケータイを持ち始め、高校生になると「持っているのが当たり前」という環境で育った。

大人になってからケータイを手にした世代は自分の判断でケータイを買うかどうかを決めた。便利さよりも煩わしさが上回ると思えば「ケータイを持たない」という選択肢もあった。一方、今の大学生にとってケータイは持っていて当然のツールである。それだけに、窮屈さを感じた経験を持つ者も多い。

「即レスがマナー」になっている彼らの世代は、自分が送ったメールに対してすぐに返事が来ないと不安になったりする。返信を返すタイミングも一つのメッセージなのである。

今年のクラスの中に一人だけ、「普段はケータイの電源をOFFにしていて、使う時だけONにする」という学生がいた。その学生は「メールの返信でイライラしてほしくないので、『あまりメールをチェックしていない』ことをあらかじめ友達に伝えている」と言っていた。

そうした学生達にとって、フェイスブックやツイッターなどのSNSは、新たな気苦労の種でもある。メールでは、自分と相手との距離感だけを気にしていれば良いが、SNSでは友達同士のやり取りも見えてしまうからだ。

「自分が送った大切なメールには返事をしてこないのに、SNSでどうでもいいような内容をつぶやいていた」とか、「他の友人には『いいね』を押しているのに、自分の投稿には『いいね』を押してくれない」とか。ちょっとしたことで嫌な思いをする。

もちろん「そんなこと気にしませんよ」という鷹揚な学生もいるし、SNSで交友関係を広げて楽しんでいる者もいる。一方で、もともと繊細なタイプの学生にとっては、気苦労の材料が増えている。

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