先月(2018年2月)号で鉄道が好きなのは鉄道のない村で育った反動かもしれないと書いた。我ながらしつこいと思うが、実は鉄道のない村で育ったことでさらにもう一つ筆者の性格に歪みをもたらしたものがある。スワローズが好きなのである(誤解のないよう急いで付け加えるが、鉄道やスワローズが好きな人の性格が歪んでいるというわけではない。好き嫌いに本来理由はいらないはずであるのに、筆者の場合は好きになる動機が不純だということである)。
ただ、そう言われても若い人にはその結びつきがわからないであろう。スワローズは筆者の少年時代は「国鉄」スワローズであった。しかも昭和5年にデビューした特急「燕」は、東京―大阪間を8時間20分で結ぶ当時の「超特急」、国鉄の看板列車であった。以来幾星霜、今でも九州新幹線には「つばめ」が走っているし、JRの長距離バスの側面にはツバメが軽やかに舞っている。筆者の中では鉄道とツバメは分かちがたく結びついているのである。
さて、そのスワローズであるが、昨シーズンは実に悲惨であった。45勝96敗、勝率.319、首位カープとのゲーム差44.0。このままではかつてのようにお荷物球団と言われる日も近いと思われる。したがって、筆者としても我が身を顧み、会社のお荷物と言われないように日々精励しなければならない。そう思わせてくれるのはスワローズのおかげである。だからスワローズびいきはやめられない。
朝起きると家人がにこにこしている。にわかカープ女子(おばさんと言った方が的確)としてはスワローズが負けて筆者をからかうのが面白いらしい。悔しいが負けたという事実の前では何も言えない。おかげで家庭の平和は維持される。だからスワローズびいきはやめられない。
最近はネットであらゆる情報が、しかもほとんど瞬時に提供される。プロ野球も例外ではなく、テレビやラジオの中継がなくても一球ごとに状況を表示してくれる。通常であれば、つい気になって部屋にこもり、パソコンに見入ることになる。しかし、昨年のスワローズは序盤で先発投手が崩れて大量点を許す、中盤までそこそこ戦っていても救援陣が大崩れして結局は大敗するといったパターンが多く、一球速報を見ても見なくても結果は予想できる。そこで、一喜一憂しなくてもすむことに感謝しつつ静かにパソコンを閉じて、読書にいそしむことになる。おかげで教養がますます深くなる。だからスワローズびいきはやめられない。
ここまでつきあってくださった読者は、この文章には何の価値があるのだろう、一体これをどう読めば示唆に富む教訓や人生の指針が得られるのだろうと疑問に思われることであろう。そうした読者にはまことに申し訳ないが、駄文・雑文に辟易するからこそ本誌の鋭い論考(同じ会社の禄を食む者としては手前味噌になって恐縮である)が輝きを増す、敗者あっての勝者の栄光ということだけはご理解いただけるのではなかろうか。
だからやっぱりスワローズびいきはやめられないのであるが、今年はせめてもう少し何とかならないものであろうか。
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