ICT雑感:歩きスマホに思う その2

前回(本誌9月号)、二宮金次郎の像は、薪を背負ってうつむき加減に本を読みながら歩く姿をしており、今の歩きスマホにも通じるという話をした。誤解のないよう付け加えておくが、立派な人が歩き読書をしていたからといって歩きスマホを全面的に肯定したり、ましてやお勧めしたりしているわけでは決してないので念のため。
さて、その後ネットで面白い記事を発見したので要約してご紹介したい。
「昨年、栃木県のある小学校で新しい二宮金次郎像の除幕式が行われた。そこで披露されたのは、薪を背負ったまま切株に腰をかけ、読書にふける金次郎の像だった。像を寄贈した団体によれば、『歩きながらスマートフォンを操作する行為を助長しかねない懸念や歩いて本を読むのは危険だなどという市民の声も聞き座像にした』とのことである」(2016.11.23 NEWSポストセブン等)
もともと実際に二宮金次郎が薪を背負い、歩きながら読書をしていたかどうかは定かでなく、定番の金次郎像は、努力、勤勉、ひたむきさといったものを象徴するものであるはずである。座って読書をしているのでは艱難辛苦、刻苦勉励(とても嘆かわしいことだが、ともに絶滅危惧熟語になっているような気がする。もっとも、刻苦勉励の対極にいる筆者には嘆く資格はないことも自覚しているが)は伝わりにくいのではなかろうか。加えて、時代背景、社会情勢が全く異なるのであり、あまり目くじらを立てるのもどうかと感じるのは筆者だけだろうか。泉下の金次郎も目をぱちくりさせているに違いない。
閑話休題、最近自動運転技術の研究開発の進展、そして実用化には目を見張るものがある。さすがに完全な自動運転の実現までにはまだ少し時間がかかるだろうし、道路構造、法規範や保険など運転を取り巻く制度が追い付くまでにはさらに相当の紆余曲折があると思うが、クラッチを離すタイミングがつかめなくてエンストを起こし、よく教官に叱られた筆者などには夢のような時代になってきた。もう古い技術になってしまったが、数年前に購入した車に、ボタンを押すとアクセルいらずで一定速度を保つ機能がついており、初めて使って感動したことを思い出す。もっとも、しばらくは右足が手(足)持無沙汰で、その置き場所に困ってしまったが。
もしも近い将来完全な自動運転が実現すれば、公共交通手段の少ないところの住民、特にお年寄りには大いなる朗報となるし、アクセルとブレーキを踏み間違えて建物に突っ込むといった悲しい事故もなくなるであろう。そして、歩きスマホならぬ運転スマホも何の問題もなくなるであろう。牽強付会を恐れずに言えば、金次郎の像は、努力すれば未来は開けるという夢や希望をも表しているのではなかろうか。
そんな未来が来るまでは、歩きスマホは危険のないところで周囲の迷惑にならないように、運転スマホは決してしないようにお願いしたい。くれぐれも。
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