2018年9月1日掲載 ITトレンド全般 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

猛暑とICT



今年は本当に暑い夏でした。まだ9月に入ったばかりなので、これからも猛暑の日が続くかも知れません。体力も限界に近く、一日も早く涼しさが戻ってほしいものです。今月はこの猛暑がもたらした様々な影響について取り上げてみたいと思います。特にICT分野を中心に考えてみます。

まずは天候についてですが、気温が7月23日(月)に41.1度の過去日本最高記録に達した埼玉県熊谷市をはじめ、東京の青梅市や岐阜県の下呂市・美濃市、新潟県の胎内市でも40.8度になるなど、日本各地で最高記録を更新しています。毎日毎日、口から出るのが「今日も暑いですね」から始まる会話でした。日々のニュースに熱中症による救急搬送人員数が話題になり、そのうち死者が出るたびに高齢者や小さな子供のことを取り上げて注意を促していました。総務省消防庁の8月28日の発表では、今年の4月30日~8月26日までの熱中症による救急搬送人数は89,305人で昨年より約8割増加しているとのこと。死亡者数は146人に達していて、両者とも7月上旬から急増しています。救急搬送された人は半数が高齢者、発生場所も住居が半数となっているので、仕事場や道路、人の集まる場所はあまり多くありません。猛暑の際に、熱中症に気を付けなければいけない人と場所は明らかです。家の中で冷房の下にいるのが一番ということです。

熱中症となるともっぱら気温が注目を集めますが、実は環境省が以前から熱中症予防情報サイトで、「暑さ指数(WBGT)」の実況と予測を公表しています。この暑さ指数は人体と外気との熱のやり取り(熱収支)に着目した指数で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れたものです。具体的には、気温1:湿度7:輻射熱2の割合で算出しています。全国の暑さ指数(WBGT)で簡単に検索できますので、スマホやタブレットで天気予報以上の頻度で確認しておくとよいでしょう。

ところで、熱中症による死亡者数について、少々ショッキングな現実があることは御存知でしょうか。ニュースなどで報道される死亡者数は、熱中症で救急搬送された人のうち初診時に死亡が確認された人数(消防庁が速報発表)で、その他の熱中症が原因で死亡した人数はカウントされていません。厚生労働省の人口動態統計における熱中症の死亡者数によると、消防庁の速報値の約10倍の人が熱中症で亡くなっているのです。毎年の6月~9月の両者の差は大きく、消防庁の発表では毎年50人から100人位の死亡数となっている一方、厚労省の数値では死亡数は毎年500人から1000人で推移しているのが分かります。毎夏に500人から1000人が熱中症で死亡しているという現実があり、猛暑の夏に急増するという事態は、既に災害と認識すべきものと言えます。台風や地震で500人から1000人の死者が出たら、それこそ大災害と認定されるでしょう。私達は毎夏、熱中症による人的被害を受けているのです。家が流されたり、倒壊したりしないので経済的被害は少ないのですが、これだけの毎年の人的被害を放置することはできません。具体的な方法は簡単ではありませんが、当事者本人の自覚や行動を含めて対策が求められます。地球温暖化の傾向から、夏の暑さはますます強まるでしょうから、風水害対策だけでなく、熱中症対策も含めた対応が急がれます。ICT分野においても、センサーによる見守りや早期症状の発見など簡便で低コストの熱中症対応ヘルスケア機器、例えば、前述の暑さ指数を組み込んだセンサーなどの見守りサービスの充実が必要でしょう。

熱中症に続いて夏の暑さ対策として、今年話題となっていることに、サマータイム制の導入があります。2年後の東京オリンピック・パラリンピックが東京の真夏の期間中に開催されるので、競技者はもちろん、ボランティアや観客、見物人など多くの参加者の暑さ対策、特に熱中症対策が懸念されています。もし、2020年の夏に熱中症による死亡者数が急増する事態となると大変です。日本ではもう2度と夏のオリンピック・パラリンピックは開催できなくなるのではないでしょうか。それだけではなく、他の大きなスポーツ大会や万博などの屋外での集客イベントも真夏には日本での開催は難しくなってしまい、政治的にも経済的にも我が国の受けるダメージは測り知れません。東京オリンピック・パラリンピックでも競技開始時刻を早めて対応することを組織委員会は決めていますが、併せて2020年のサマータイム制度の導入を安倍総理に正式に要請しています。「ひとつの解決策かも知れない」と安倍総理が応じたとの報道があり、政府・与党内で検討が始まっているようです。サマータイム制度(夏時間)は過去2005年と2008年に議員立法で導入が検討されたが実現しなかった経緯があります。既に多くの国々で導入されていて、社会生活上も各国で経験が積み上っているので、実施上の課題は国民全体の理解とITシステムの手直しの2点になります。国民全体の理解は今年の夏の暑さの経験と東京オリンピック・パラリンピックの成功を望む気持ちから、以前より一歩進んでいるように思えます。もちろん、反対論もまた多いですが…。

残る課題は、ITシステムの手直しです。これまでITシステムの修正では、過去に2000年問題、うるう秒問題があり、来年には新元号が予定されていますが、サマータイム制度となると経済・社会システム全体に及ぶので影響の大きさが懸念されます。ただ、世界の多くの国々では、それが故の混乱が起きている訳でもなく、ITシステムの対応も経験済みなので大きな心配はないと感じます。むしろ、今なら、新元号への対応と合わせて対策を実施できるメリットがあるように思います。ITソフトウェア業界もまた人手不足の状態なので、2つのシステム修正イベントを合わせて実施する方がよいのではないでしょうか。サマータイム制度の導入には当然、かなりの長期に渉る準備と周知期間が必要となるので早期の検討と結論が求められます。サマータイム制導入によって「脱炭素社会の実現」に向けての、東京オリンピック・パラリンピック大会の重要なレガシー(遺産)になるとの意見は傾聴に値すると思います。

最後に、身近かな重要な点に触れて今月のこの風見鶏を終えることにします。それは、スマホやタブレット、ノートPCなどのICT機器類の暑さ対策についてです。体感温度が40度を超える中、スマホなどに負荷をかけ過ぎると機器の熱を逃がすことができず、一気に性能が落ちることがあるし、一時的に機能を停止することがあります。例えば、iPhoneの場合、アップルが公表している適正環境温度は0~35℃とされています。もちろん、アンドロイド端末でも同様で本体温度が高温になると「高温注意」が画面に表われて注意を促します。スマホなどの発熱はバッテリーが原因で季節とは関係なく、長時間の通話やゲームなどによる大量の電力消費によるものですが、ただ猛暑の中では、日差しの強い屋外での使用や車内の直射日光の当たる場所に放置するなどで非常に高温になることがあるので要注意です。要は、スマホなどからの放熱を心掛けることが大切なのですが、人体に長時間直接触れているとスマホによる低温やけどの恐れがあります。高温になったら(高温注意がでたら)、まずはアプリケーションを終了し、充電を止めることです。バッテリーは小さいものですが、スマホやタブレットなどのIT機器を何時間も動作させることができるエネルギーを溜めているので、取り扱いを間違えると危険です。スマホ火傷に気を付けましょう。

それにしても、この暑さはいつまで続くのでしょうか?一日も早く秋風の吹く、虫の音が楽しめる季節になることを願っています。

 

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