2023.2.27 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:女性専用車両に対する先入観からの考察

Basim Miller from Pixabay

私自身は生まれてこの方、東京およびその近辺で暮らしてきましたが、最近は仕事柄大阪へ行く機会が増えたので地域の違いについて意識するようになってきました。最も端的な例がエスカレーターの乗り方ですが、東京駅、品川駅から東海道新幹線に乗車する際は右側を空け、新大阪駅に到着したとたんに左側を空けるという行為を私も含めて多くの方が実践しています。地域による違いは他にもたくさんあるのではないかと思っていたのですが、今では思ったほど多くはないのではないかと思い直している状況です。以下では漠然と地域差ではないかと感じたものの、よくよく調べてみるとそうではなく、実は私自身の先入観が原因だったということに改めて気づいた事象についてお伝えしようと思います。

きっかけは先日大阪環状線を利用した際、他に比べて空いていそうだと何気なく乗車したところ、周りに女性客しかいなかったため慌てて隣の車両に移動したことです。自分自身の中では女性専用車両は朝の時間帯に先頭車両ないし最後尾車両に設定されているという意識が強かったので、不意をつかれた感覚でした。

そこで改めて女性専用車両について調べてみました。JR東日本のホームページによると、そもそも女性専用車両が設定されているのは、埼京線・川越線、中央線・青梅線、常磐線各駅停車、総武線各駅停車、京浜東北線・根岸線だけで、時間帯は埼京線・川越線のみが平日朝夕、他は平日朝の特定の時間帯に限定されていました。位置は、京浜東北線・根岸線だけが中盤の車両で、その他の路線では先頭車両ないし最後尾車両に設定されていました。一方JR西日本のホームページによると大阪環状線・JRゆめ咲線、学研都市線、JR京都線(一部琵琶湖線含む)、JR神戸線、JR宝塚線、JR東西線、阪和線、大和路線(一部和歌山線含む)、おおさか東線で土曜日・休日も含めた終日、いずれも中盤の車両に設定されていました。JR以外についても調べたところ、東京メトロでは日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、副都心線に設定があり、いずれも平日朝の先頭車両ないし最後尾車両でした。都営地下鉄においては、新宿線と大江戸線で平日朝のみに設定されていますが(大江戸線は2023年1月に導入されたばかり)、新宿線は先頭車両なのに対し、大江戸線は各号車の混雑状況や各駅における階段やエスカレーター等の設置状況などを総合的に勘案し、4号車に設定したとの記載がありました。阪急電鉄では、神戸本線、宝塚本線、京都本線に平日朝のみ設定され、神戸本線、宝塚本線は先頭車両ないし最後尾車両、京都本線は中盤車両にそれぞれ設定されていました。Osaka Metroにおいては、御堂筋線は平日の終日、谷町線では平日朝のみで、いずれも中盤車両に設定されています。

こうしてみると全体的には平日朝の先頭車両ないし最後尾車両への設定が多いものの、地域による差というよりも、鉄道各社の考え方に依存しているのではないかと思いました。痴漢対策を主な目的として登場した女性専用車両ですが、反対する人も少なからずいて裁判になった事例もあります。これについても書きたいところですが、横道に逸れてしまいますので、ここではあまり触れないことにします。

今回の体験を踏まえ個人的には、女性専用車両は平日朝の先頭車両ないし最後尾車両といった先入観を持たず、注意深く駅の表示を見るように心がけることで、より快適な移動を楽しめるのではないかと思いました。現在はスマートフォン等で何でも即座に調べることが可能になっているとは思うのですが、そもそも先入観を持っていては調べようという動機は生まれず、したがって真実にたどり着くことができなくなってしまいます。また、SNSで同質な考え方に染まってしまうことで、固定観念に陥りがちともいえます。今回の私のように具体的に体験することがなければ、普段送っている日常生活の中で自分の中の先入観に気づくことはますます難しくなっていると思います。こういう時代だからこそ、今まで以上に周囲に注意を払い、リアルな体験を大切にして、本質を考えた行動をしていかなければならないと改めて感じました。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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