2026.3.30 ITトレンド全般

ICT雑感:昨今の出産事情

AIによる生成画像です

少子高齢化という言葉は、今やわが国の社会を象徴する代名詞ともなっていると言えます。たしかに家の周辺を歩いていても、子どもよりも高齢者ばかり見かけるという印象を受けます。そうした中、わが家では一昨年に結婚して家を離れた娘が、里帰りをして出産するという出来事があり、改めて昨今の出産事情について調べてみました。

厚生労働省のデータ[1]によると、令和6年の出生数は68万6,061人で、前年より4万1,227人減少しました。出生数は昭和24年の269万6,638人をピークに、昭和50年以降は減少と増加を繰り返しながらも、全体として減少傾向が続いています。第1子出生時の母の平均年齢は前年と同じ31.0歳でした。また、合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当)は1.15となり、前年の1.20から低下しています。一方、令和6年の婚姻件数は48万5,063組で、前年より1万322組増加しました。婚姻件数は昭和47年の109万9,984組をピークに、昭和50年代以降は増加と減少を繰り返しており、令和6年は2年ぶりに増加したものの、近年は減少傾向が続いています。令和6年の平均初婚年齢は、夫が31.1歳で前年と同年齢、妻が29.8歳で前年の29.7歳より上昇しています。

ベネッセコーポレーションの「たまひよ妊娠・出産白書」[2]は、全国の生後0カ月~1才6カ月の子どもを持つママ・パパ約2,000名を対象としたウェブ調査で、産前産後における父母の意識や、父親の育休取得を含む育児環境、育児への関わり方などを毎年把握しているものです。「たまひよ妊娠・出産白書2025」(2024年度調査)によると、「産後パパ育休(出生時育児休業)」については、32.4%が利用しており、前年から9.5ポイント増加しています。制度の利用が着実に拡大していることがうかがえます。休暇を取っていない割合は9.8%と、2年連続で減少しており、出産・育児にあたって約9割の人が何らかの休暇を取得しているようです。妊娠中から産後にかけて、近親者からのサポートを受けた人の割合は約9割となっており、前年から微増しています。一方で、里帰り出産の割合は39.6%で、4年前と比べると17.2ポイント減少しています。妊婦検診への配偶者やパートナーの同伴は半数を超えており、出産時の立ち合いについても6割を超える結果となっています。

上記のデータからは、私自身の頃と比べて、出産や育児の在り方がだいぶ様変わりしているという印象を受けました。出産・育児を母親が一人で抱え込むのではなく、近親者、特に父親が積極的に関わるようになってきていることは、とても良いことだと思います。わが子の出産や成長を間近に見ることは、子どもへの愛情を育む上でとても大切なことではないでしょうか。出生数自体は大きく減っていますが、両親からの愛情をたっぷり受けた子どもたちが巣立っていくことは、社会にとっても大変喜ばしいことだと思います。

データの裏付けがあるわけではありませんが、自分の娘の様子から受けた印象についても述べておきます。まず、DNA鑑定等の検査精度が向上したことにより、妊婦および胎児の状態をより正確に把握できるようになり、以前よりも必要な対応を的確に行えるようになっていると感じます。また、以前は自身の近親者から得ることが中心だった出産・子育てに関する情報が、今ではSNSを通じて幅広く共有されていることも感じます。SNSで情報を収集しつつ、検診の際に産科医に確認するということが一般化しているようです。さらに、生成AIを活用して自身の状況を確認することも行われているようです。検診のたびに撮影される胎児のエコー写真も、以前と比べてかなり解像度が高くなっているという印象を受けます。技術そのものは以前からあったようですが、近年では無痛分娩が普及し、妊婦の出産時の身体的・精神的な負担軽減が図られているように感じました。

一方で、行政等の仕組みに関しては、まだまだ効率化の余地が大きいのではないかとも感じています。もちろん、わが国の医療システム全体に関わる問題ですので、ハードルが極めて高いことは認識しています。とはいえ、出生から亡くなるまでの各個人の情報がシームレスに流通する仕組みを構築することができれば、必要な人に、必要な時に、必要なサービスが届く社会を実現できるのではないかと思います。世界で初めて母親と子どもの記録を1冊にまとめたとされる日本発の母子手帳も、現在は紙のままです。近い将来電子化され、更なる利便性の向上が図られるのではないかと期待しています。

子どもたちは将来のわが国を支える貴重な宝ですので、出産・育児を社会全体で支える仕組みを是非とも実現する必要があると思います。現在、各自治体が出産・子育て支援に熱心に取り組んでいることは心強い限りです。高齢化の進展や地政学的な緊張など、課題が山積しており、財政に余裕がないことも事実です。そうした中で、いかに効率よく支援を実現していくか、国や自治体だけでなく、私たち一人一人が当事者意識を持って知恵を絞っていく必要があると思います。その実現に向けて、ICTは大変重要な役割を果たしていくと考えられます。NTTグループが活躍できる余地も大きいのではないでしょうか。

[1] https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai24/dl/gaikyouR6.pdf

[2] https://st.benesse.ne.jp/press/content/?id=146241

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開したものです。

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