ICT雑感:言葉にできない ~伝説のコンサートからもうすぐ40年
この秋のポップス界最大の話題として、1970年代から80年代初頭にかけて活躍し、一世を風靡したスウェーデンのグループ「アバ」(ABBA)の復活があります。
昔のグループなので、あまり御存知でない方のために簡単に紹介すると、もともと男性2人のデュオとして活動していたビョルンとベニーにアグネッタとアンニフリッド(フリーダ)の2人の女性が加わって4人組となり、1974年に欧州の著名な音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」で優勝、1976年に発表した「ダンシング・クイーン」で世界的な人気を獲得しました。メンバーの4人はアグネッタとビョルン、フリーダとベニーがそれぞれ夫婦となりましたが後に2組とも離婚、やがてグループ自体も1982年に活動を停止しました。
活動停止後もアバの音楽は、そのポップな親しみやすさと確かな音楽性で世界を魅了し続け、ミュージカル『マンマ・ミーア!』などを通じて若い世代にも受け入れられて、ポップスのスタンダードとなり現在に至っています。
そのアバが、およそ40年の時を経て活動を再開、この秋にはニューアルバムをリリースすることになっています。さらには来年コンサートも行うとのこと。このコンサートは、報道されるところによると、モーション・キャプチャーなど最新のデジタル技術を駆使して、彼女らのアバターが生バンドとデジタル的に共演するスタイルになるとのことです。
既に配信されている新曲のミュージック・クリップでは、若々しい姿の彼女らがパフォーマンスしているかのような映像になっています。なので、ステージでもそうした姿が見られることでしょう。もう一度あの4人が見られるとは! それと、どんなテクノロジーが使われるのだろう? という点でも興味が尽きないところです。ワールドツアーで日本に来てくれるのなら、ぜひ観てみたいものです。
さて、このように、最新のデジタル技術を使えば、若い頃の姿で歌い演奏するような姿を見せられたり、まるでそこにいるかのような映像を映し出すことができるとなると、かつての伝説のコンサートなども再現できるかもしれないですね。もしそうなら、ぜひ観てみたい、体感してみたいと思うコンサートがあります。これも、およそ40年前のことですが……。
1982年6月、その5人組のバンドは、前代未聞の日本武道館での10日間連続のコンサートにチャレンジしていました。グループの名前は「オフコース」。当時私は20歳を少し過ぎた頃でしたが、ファン層の中心もその辺りの世代でしょうか。オフコースは当初、小田和正、鈴木康博の2人のデュオとして活動していましたが、後にサポートメンバーの3人が正式に加入して5人に。サウンド的にも厚味が増し、「さよなら」の大ヒットも出てメジャーな存在になりました。アルバムも出すたびに大ヒット! ところがしばらくして、解散するのでは? デビューからずっとやってきた鈴木さんが抜けるのでは? という話が伝わってきて……そういう中での武道館連続コンサート。10万枚のチケットに50万以上の葉書の応募があったといいます。
最終日のコンサートの模様は映像化され、最近でもテレビで放送されたりしているので、ご覧になった方もおられるでしょう。後に保険会社のCMに使われて有名になる曲「言葉にできない」で、小田さんが途中声を詰まらせて歌えなくなる場面があり、曲のエンディングでステージ上のスクリーンに、畑一面のひまわりの映像と“We are”“over”“Thank you”の文字が映し出されます。あぁ本当に鈴木さんは出て行くんだな……その後も、オフコースは数年間4人で活動を続けますが、鈴木さんが共にステージに立つことは二度とありませんでした。
アバは復活の日を迎えましたが、オフコースの場合は、国民的歌手となった小田さんはもちろんのこと、鈴木さん始め他の元メンバーも精力的に音楽活動はしているものの、リアルに同じステージに立つことはないでしょう。ならばせめて、残されている映像、録音その他のデータをもとに、現在の技術を駆使して、当時のステージをコンサート空間で再現することができないだろうかと思ったりするわけです。場所はもちろんあの武道館で。きっと、嬉しくて、嬉しくて、言葉にできないだろうなぁ……。
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