2015年9月1日掲載 ITトレンド全般 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

防災の日とICTの役割


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毎年秋になると思い出すことに、9月1日の「防災の日」があります。この防災の日は1960年(昭和35年)に閣議了解により制定されたもので、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんでこの日が選定されました。また、例年8月下旬から9月上旬には台風の襲来が多くみられ、ちょうどこの時期が二百十日にあたっているので風水害への備えとの意味があります。毎年、全国各地で防災訓練が行われるシーズンとなっています。私が子供だった昭和30年代には防災の日というより震災記念日と呼ばれていて関東大震災の慰霊祭などの行事があちこちで行われていた記憶があります。関東大震災の被災記憶が遠のくなか、改めて災害に備える趣旨で「防災の日」の制定となった経緯があります。

さらに、まだ記憶に新しい2011年3月の東日本大震災を教訓として同年6月に「津波対策の推進に関する法律」が制定され、11月5日を「津波防災の日」と定めています。地震や津波被害の甚大なことは過去幾度も経験してきた私達ですが、毎年起こる台風とは違って人々の記憶にとどめて、備えへの関心と理解を高めることがこれらの記念日を定めている意義です。11月5日は1854年、安政南海地震で紀伊国(和歌山県)を津波が襲った時に、稲に火を付けて暗闇の中で逃げ遅れた人たちを高台に避難させて命を救った「稲むらの火」の逸話に基づくものです。この稲むらの火こそ、地震時の津波への警戒とその伝達及び早期避難の大切さを示していて、情報通信技術(ICT)の発達した現代にも通ずるものがあると感じます。

(参考)   稲むらの火の逸話は1937年から10年間、国定国語教科書に掲載され、防災教材として高く評価されています。

防災活動は、減災対策、災害準備、災害対応、災害復旧のサイクルで行われていますが、各段階それぞれでICTを活用することで効率的・効果的な災害管理を図ることができます。もちろん防災分野のICTは平時の情報通信ネットワークやアプリケーションとしても利用可能であり、環境など他分野でも活用できるものです。防災ICTも平時と同様に機能としては、観測・収集、分析、蓄積、配信とに区分されるし、他方、ICTサービスレイヤーとしては同じく端末、アプリケーション、プラットフォーム、通信インフラとに分類できます。このように全体の領域は平時と同じですが、災害発生時の特徴として、緊急性と情報共有の必要性が極めて高いことがあげられます。我が国では、こうした事態に対応すべく政府レベルにおいてJアラート(全国瞬時警報システム)とLアラート(災害情報共有システム)の2つが整備されています。前者は国から住民まで緊急情報を瞬時に伝達するシステムで、人工衛星を用いて送信し市区町村の同報系の防災行政無線を自動起動して伝達する緊急性を確保するものであり、後者は災害時等の情報伝達の共有基盤を全国に普及しライフラインを含めた災害情報の内容と関係者間の連携という共有化を進めるものです。特に住民への情報伝達にあたって、テレビ・ラジオ事業者、ネットやモバイル事業者などが連携して役割を果しています。また東日本大震災以降、ICTを活用した防災・減災等に役立つさまざまなサービスが、緊急通報、安否確認、災害情報管理、コミュニティー・生活支援など民間ベースで数多く取り組まれています。ただ民間部門の取り組みだけに相互の情報交換・流通やシステム運用が意識されているかという点では残念ながらまだまだ懸念があります。

こうした中、最近の動きをみると「G空間防災システム」に今後の発展性を感じています。これは“G空間(地理情報と空間情報を結合)×ICT”というコンセプトの下、G空間プラットフォームを構築してこれに各種の情報を多層的に組み合わせて、災害情報の伝達や情報収集、救援活動の効果・効率を高めようとするものです。GPSやビッグデータ分析といった最近のICTの発展を十分に取り入れたもので、主に政府や自治体などに閉じている片方向の情報を扱うJアラートやLアラートとは違って民間の情報や活動が主体となるこれからの新しい防災システムです。

G空間×ICTプロジェクト

出典:総務省「G空間×ICTプロジェクトについて」(2014.3.18)

さらに、来年から始まるマイナンバー制度の利用方策として避難や生活支援、医療活動などに活かす途がこれに加われば、住民マスとしての災害対策に加えて住民個々人への救援・支援活動がより効率的・効果的に進められることになります。従来、避難に際しての携行必需品は携帯電話やスマホ・タブレットなどのモバイル端末の類と言われてきましたが、これに加えてこれからはマイナンバーカードも財布などと一緒に身に付けて避難することが救援や支援を上手に受けられることに繋がってくるかも知れません。

最後にもうひとつ、モバイル端末の多くがスマホなど新しい機種に移行し多様化していますので、以前のフィーチャーホン(いわゆるガラケー)と比べて電池の持ち時間が短くなっており、さらに充電器の型式統一が進んでいませんので避難時には小型の充電器も併せて持っていく必要があることに要注意です。

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