2017年2月1日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

情報通信市場の競争構造変化を加速するデジタルトランスフォーメーション



最近、デジタルトランスフォーメーションが何かと話題になっています。本誌(「InfoCom T&S World Trend Report」2016年11月号)でも「デジタル・トランスフォーメーション」を特集しました。デジタルトランスフォーメーション(digital transformation)とは、簡単に言えばデジタルへの変革であり、企業が提供する製品・サービスだけでなく、ビジネスモデルやビジネスプロセスまで含めたビジネスに関わるすべての面での変革を示しています。加えて、デジタルへの変革は企業活動に限らず社会や個人のあり様を大きく変化させる可能性があります。また、私は本誌2015年6月号の巻頭“論”に「グローバル市場でのB to C情報通信サービスを期待する」との小論を掲載して、“情報通信市場競争構造の変化”について、下記のような図表(今回はそれを加筆修正)を述べました。ほんの1年半程前のことなのですが、その時はデジタルプラットフォームも、デジタルトランスフォーメーションの文字もありませんでした。先見の明のなさを反省しています。今回は改めて整理し直して改訂してみました。

情報通信市場競争構造の変化(改訂版)

情報通信市場競争構造の変化(改訂版)

デジタルトランスフォーメーションによる変化は、サービス化、オープン化、ソーシャル化、スマート化をもたらします。ITはクラウドサービスとして利用することが当たり前になり、広く多くの人が関与する技術や製品の方が進化のスピードは速く、安心・安全が担保されるとの見方が受け入れられてきています。また、デジタルプラットフォームの普及は取引の仲介者をなくし、IoTによって収集された個別の事象はAIによって分析されて、新たな知見や予測、最適解を私達に示してくれます。こうした大きな変革の中で情報通信事業者は対応していかなければなりません。特に、これまで通信事業者が得意としてきたローカル経済圏での利用者を対象にしたBtoC領域から、グローバルとローカル両方に通ずるデジタルトランスフォーメーションに参画することが新しい市場競争になります。その場合、通信会社が主役になることはほとんどありません。BtoCモデルを中核としてきた通信会社が主役でいられたのは、利用者自身が提供される通信サービスの利用方法を決めるので、通信会社は多数の需要に等しく応じることで役割が満たされていたためです。利用者は通信会社に対し単純に通信サービスを求めるだけであったことに由来しています。ですが、今や大多数の需要が満たされ、他方デジタルプラットフォーマーが新しいサービスを代替することで主役交替の危機にあります(土管化現象)。

しかし、デジタルトランスフォーメーションの時代となると、すべての分野の産業・企業がサービス化・オープン化・ソーシャル化・スマート化の動きを示すので、通信会社にとっては新しい出番がありそうです。特にモバイル通信サービスは主役ではないが必ず付いて回る要素なので、これを介して産業・企業のデジタルトランスフォーメーションへの参画が可能です。ですが、ここでも有力な競合が存在しています。デジタルプラットフォーマーです。AGFA (Apple, Google, Facebook, Amazon) はグローバル経済圏では圧倒的に強力なので協力・提携関係が必要でしょう。ローカル経済圏での強みを活かしてデジタルトランスフォーメーションに参画・関与していくことが道筋になると考えます。多様なイノベーションを背景に製造業はじめ様々な産業で進められますので、通信会社の出番としてはオープン化、ソーシャル化をネットワーク面でサポートすることやAIを活用して情報流通の最適化を図ることでスマート化への役割を果たすことができます。それ以上の付加価値提供は通信業としてだけでなく、リサーチやコンサルティング、システム設計・構築・保守管理、利用者や最終消費者との取引実行など多岐にわたり可能です。既に、国内のモバイル通信3社は通信以外の収入比率を高めていますが、自ら手掛けるBtoCモデルだけでなく、他産業がサービス化するのに応じてBtoBモデルを越えて新しくBtoBtoCモデルへと舵を切る必要があります。モバイル通信技術の進展、即ち、LTEの高度化に伴いeMBMS (LTE Broadcast)、LTE to unlicensed spectrum (LTE-U)、LTE for M2M (LTE-M) などLTEインフラ面での付加価値を高める動きが顕著になっていますし、NB-IoTや免許不要周波数帯域を使用するLPWAなどIoTを進めるネットワークとデバイスの取り組みも目立つようになりました。さらに5Gの動向が現実化し、ネットワークスライシングなどネットワーク活用の柔軟性を高める技術開発も進んでいます。まさにAIと合わせてスマート化の推進が図られています。

こうした技術開発を取り込んだデジタルトランスフォーメーションが進めば、新しいBtoCおよびBtoBtoCモデルが通信会社も加わってグローバルに展開できると思います。ただ、デジタルトランスフォーメーションは技術開発の問題として捉えるのは半分でしかありません。課題を発見・解決するために個別の利用者(ユーザー)に共感する力を活用しなければなりません。ここにデジタルトランスフォーメーションの取り組みに不可欠な「デザイン思考」があります。ここで言うデザインとは、いわゆる意匠のことではなく広く設計のことです。デザイン思考 (Design Thinking) もIT業界の究極のハウツウと言うべきものですが、デジタル化が進むが故の人の思考方法の変革と考えるべきです。すべてのスタートは人(その人の個別の想い)への共感から問題を再定義しアイデアを検証することです。デジタルトランスフォーメーション、即ちデジタルへの変革には、人の考える方法や意識、組織構造にまで革新を求める力が内在していることを忘れてはなりません。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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