2025.10.30 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

データセンターネットワークの動向

Image by Akela999 from Pixabay

データセンター市場の成長と電力問題については本誌2025年7月号の拙稿で述べたが、データセンターを置きたい場所で十分な電力が得られないという問題を解決する方法としては、さまざまなものが考えられる。機器の消費電力削減や冷却の効率化など、その場所で対処する方法もあるが、十分な電力供給が得られる場所や、寒冷地など効率的な運用が行える場所にデータセンターを置くことも提案されている。ただし、そのような場所は大需要地(すなわち大都市)からは離れた場所となる可能性が高い。データセンターを遠隔地に置くためには、そのデータセンターまで、高性能のネットワークを整備する必要がある。

サービス提供者からすれば、ユーザーに高品質なサービスを提供するためには、ネットワークは、大容量、低遅延で、可用性が高く(切断されることがなく)、かつ低価格であることが望ましい。データセンターが大都市もしくはその近郊に立地してきた理由の一つは、ネットワークが、概して近距離であればあるほど高性能で高品質となり、低価格となるためである。

しかし、クラウドや生成AIの利用が増えるのに伴い、データセンターへの需要が増加する一方で、電力や用地などの課題も大きくなり、大都市やその近郊に十分な規模のデータセンターを建設することが難しくなってきている。電力や用地などの課題解決を優先すれば、立地では妥協するしかない。立地で妥協して遠隔地に建設をした場合でも、ユーザーへの提供品質を維持しようとすれば、ネットワークが近距離の場合と同様に利用できることが求められる。

そこで本稿では、このようなデータセンターネットワークの高度化に関する最近の動きの一部について報告したい。

大手クラウド事業者の動向

まず、データセンターを利用してサービスを提供している大手クラウド事業者の動向を見ていきたい。

AWSは2024年7月に、一部のロケーションで「AWS Direct Connect」によるネイティブ400 Gbps専用接続の提供を開始したと発表した。「AWS Direct Connect」は、AWSとデータセンター、オフィス、コロケーション施設との間で、プライベートかつ高帯域幅の接続を提供するものである。これにより、ユーザーはAWSの複数のデータセンターや自社拠点の相互間で高速な通信を行うことが可能となっている。[1]

Microsoftは、2025年9月に、米国ウィスコンシン州に建設するAIデータセンター「Fairwater」について発表した。この中で、「これらのAIデータセンターを分散型ネットワークで連結する革新技術により、効率と演算能力を指数関数的に増幅させ、世界的なAIサービスへのアクセスをさらに民主化している」と述べている。また、これらの新しいAIデータセンターは、広域ネットワーク(WAN)を介して相互接続されたAzure AIデータセンターのグローバルネットワークの一部を形成している。これは単一の建物ではなく、分散型のシステムとして設計されており、耐障害性・拡張性に優れている。さらに、この分散した複数のデータセンターが連携して動作することで「単一の強力なAIマシン」として機能するとしている。同社のAI WANは、地理的に分散した複数のAzureリージョンを接続し連携させることで、大規模な分散トレーニングを可能にしている。それにより、ユーザーは非常に強力なAIスーパーコンピューターのパワーを活用できるとしている。同社は、データセンターのリージョン間でコンピューティング・ストレージ・ネットワークリソースをシームレスにプールし、統一的に管理・制御できる分散システムを構築したとアピールしている。[2]

Google Cloudは、2025年4月に実施した年次イベント「Google Cloud Next 2025」において、「Cloud Interconnect」と「Cross-Cloud Interconnect」に関し、400G化するとの予告を行った。2025年後半に提供予定とされている。これについても、AIモデルを最大限に活用するために、膨大なデータや高負荷処理に対応できるように設計された「AI最適化ネットワーク」として提供される。[3]

これらの動向をみると、各社のデータセンター間接続の詳細な仕様は明らかになってはいないものの、こうしたサービスの拡充や拠点の拡大によって、遠隔地にあるデータセンターを含めた複数の拠点間の連携が容易になり、データの保存や処理を行う場所の選択の自由度が高まっていると考えられる。

※参照したサイトはすべて執筆時点(2025年10月2日)に閲覧したものである。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
以下ご覧になりたい方は下のバナーをクリックしてください。

通信事業者の動向

ベンダーの動向

政策

まとめ

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

[1] AWS Direct Connect announces native 400 Gbps Dedicated Connections at select locations (2024/7/1)https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2024/07/aws-direct-connect-native-400-gbps-dedicated-connections-select-locations/

[2] Inside the world’s most powerful AI datacenter (2025/9/18)https://blogs.microsoft.com/blog/ 2025/09/18/inside-the-worlds-most-powerful-ai-datacenter/

[3] What’s new with Google Cloud networking (2025/4/10)https://cloud.google.com/blog/ products/networking/networking-innovations-at-google-cloud-next25

当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。InfoComニューズレターを他サイト等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。また、引用される場合は必ず出所の明示をお願いいたします。

情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。

調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。

ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら

関連キーワード

左高 大平 (Taihei Sadaka)の記事

関連記事

InfoCom T&S World Trend Report 年月別レポート一覧

メンバーズレター

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

メンバーズ登録(無料)

各種サービスへの問い合わせ

ICTに関わる調査研究のご依頼 研究員への執筆・講演のご依頼 InfoCom T&S World Trend Report

情報通信サービスの専門誌の無料サンプル、お見積り

InfoCom T&S World Data Book

グローバルICT市場の総合データ集の紹介資料ダウンロード