2023.12.27 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

地方創生に利用されるNFTとWeb3.0の仕組み

Pete Linforth from Pixabay

はじめに

Web3.0というと何を思い浮かべるだろうか。本紙の読者であるならば、次世代のインターネットの取り組み、あるいは自律分散型の世界といったような先端的なイメージを頭に浮かべるかもしれない。もちろん、それはWeb3.0のイメージとして正しいイメージだ。そうした先端的イメージとはやや趣を異にするが、本稿では、Web3.0の技術や仕組みが日本の地域課題の解決に向けて活用されている事例について紹介をしたい。本稿を読むことによって、新たなWeb3.0の活用方法、可能性を感じてもらえるのではないかと考えている。

Web3.0とは

具体的な事例の紹介を行う前にWeb3.0とは何かということから始めたい。Web3.0を捉えるためには、Web3.0以前、つまりWeb1.0、Web2.0とはどのようなものだったのかということを振り返ることが理解への近道になる。

Web1.0の時代

Web1.0全盛の時代は1990年代だと捉えることができる。このWeb1.0の時代での情報のやりとりはどのようなものであっただろうか。この時期はインターネットの本格的な普及が始まる時期で、その主な使い方としては、電子メールやウェブサイトの閲覧、書籍の購入などのeコマースといった比較的シンプルなものであった。このような時代においては、基本的にインターネットの利用者はテキスト情報を検索して、入手、閲覧することが中心であった。

Web2.0の時代

前述のとおりWeb1.0とは、インターネットを介して、主にテキストベースの情報を入手、閲覧するものだった。それではWeb2.0とはどのようなものだろうか。

Web2.0は2000年代にWeb1.0に変わり新たなWebの潮流となるが、その特徴の一つとして、いわゆるプラットフォーマーによるブログやSNSのサービスが普及し、テキストのみならず画像や動画といったコンテンツをインターネットを通じて誰もが容易に発信できるようになったという点が挙げられるだろう。もう一つの特徴としては、このようなサービスを提供するプラットフォーマーに「情報」が集中したことがある。この情報を分析、活用することにより、プラットフォーマーはコンテンツの仲介料収入を超えた大きなアドバンテージを得た。インターネット利用者もプラットフォーマーから無料、または安価に提供されるサービスを通じて恩恵を得ることができたが、個人の情報が一部のプラットフォームに集中してしまうことによってプライバシーの懸念が出たということも事実であろう。このように一部のプラットフォーマーに情報が集中する形態を中央集権的なインターネットと表現することもできるだろう。

Web3.0はどうなる

それではWeb3.0はどのように表現されるだろうか。経済産業省が公開する資料では「ブロックチェーン技術を基盤とした、価値の共創・保有・交換を行うトークン経済」という言葉で表現されているが、筆者はその説明の下にある図が最も重要だと考えている。この図では、特定のプレイヤーが中央にいてインターネット利用者がつながる形ではなく、利用者自体がつながりを持つ形となっている。このように、前項で説明した「中央集権的」なWeb2.0に対して、Web3.0では中央となるものがなく、インターネット利用者同士でつながりを持ち情報のやりとりをする「分散型」のインターネット利用が進むと考えられている(図1)。

【図1】Web1.0からWeb3.0までの変遷と定義

【図1】Web1.0からWeb3.0までの変遷と定義
(出典:経済産業省「Web3.0とは」をもとに作成https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/Web3/index.html)

Web3.0を支える技術、仕組み

それでは、この分散型のインターネットを支える仕組みにはどのようなものがあるのか。筆者が考える主なものは「NFT」、「DAO」、「DeFi」の3つだ(図2)。

【図2】Web3.0の主要な取り組み

【図2】Web3.0の主要な取り組み
(出典:事業構想オンライン「Web3は日本社会を変えるか 論点と施策動向を整理」より、
NFT、DAO、DeFiの説明文を引用のうえ筆者作成、下線は筆者による https://www.projectdesign.jp/articles/4523aed5-06ec-439f-89a3-1722ba1a142f)

これらの3つにはいずれも、ブロックチェーン技術が活用されており、Web3.0を支える基盤はブロックチェーンであるといえる。

今回特に注目したいものは「NFT」と「DAO」だ。それぞれの内容について以下で簡単に説明する。

NFT(非代替性トークン)とは

NFTはごくシンプルに説明すれば、デジタルコンテンツであってもオリジナルであるということを証明できるというものだ。例えばインターネットを流通する画像データは容易に複製することが可能だ。デジタルなので、複製しても基本的には劣化することがないといえる。そのため、これまでは、どれがオリジナルで、どれが複製かということを判別することができなかった。NFTはブロックチェーンの技術を活用して、デジタルデータであっても、オリジナルかコピーかということを判別できるというものだ。本稿の読者であればこのようなことは認証機関などを通じてできるのではないか、と考えるかもしれない。NFTがそれらと決定的に異なるのは、特定の(中央集権的な)認証局を必要としないという点だ。これは、参加者が取引のデータを分散して保有し処理する分散型のデータベースと表現することができるブロックチェーンの特性を活用しているためだ。

DAO(自律分散型組織)とは

次にDAOについて簡単に説明をしたい。DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の頭文字を取ったもので、「ダオ」と呼ばれる。

DAOは株式会社に代表されるようなこれまでのトップダウン型の組織形態とは異なり、組織の代表者が存在せず、インターネットを介して誰でも自由に参加が可能で、平等な立場で運営される。これだけではボランティア活動のように受け取られてしまうし、そもそも意思決定はどうやって行うのか、という疑問が生じるだろう。DAOでは意思決定のために、DAOに参加する全員の投票が行われる点に特徴がある。また、組織に参加し、メンバーとして活動するインセンティブとしてNFTが活用される。

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地方創生に活用されるNFTやDAO

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