シェアリングエコノミーは新型コロナでどうなったか -2021年シェアリングエコノミー調査報告 第1回-

新型コロナ感染症(以下、新型コロナ)によって社会・経済は大きな打撃を受けた。インターネットを利用してモノやサービスを共有するシェアリングエコノミーにもマイナスの影響が心配された。
実際はどうであったか。情報通信総合研究所がシェアリングエコノミー協会と共同で行った調査の結果、シェアリングエコノミーの市場規模は新型コロナ前の予測を上回る成長を見通せることが分かった。シェアリングエコノミーは、マイナスの影響を受けた面もあったが、かなりのシェアサービスは、新型コロナを乗り越える手段となり利用が拡大したのである。
今回から数回にわたって新型コロナの影響を踏まえたシェアリングエコノミー調査の結果を紹介していく。
(報告書の概要、データ集フォーマット等はこちらの詳細をご覧いただけます。)
第1回目は、2020年10月実施のアンケート調査で明らかになったシェアサービス利用への新型コロナの影響を取り上げる。
(シリーズ一覧はこちら)
自らの資産・スキルによりシェアサービスを開始した人
図1は、
新型コロナの影響で自らの資産・スキルを活用し、シェアサービスを開始した人の割合をサービス別に示している。各サービスの説明は巻末の表にまとめている。
これを見ると、6つのサービスで50%以上の人が新型コロナの影響でシェアサービスの提供を開始したと回答している。
回答割合が高い順にみると、上位3サービスは持っている資産を活用して収入を得るサービスである。「モノ(レンタル)」はブランドバッグや高級家電等を貸すサービス、「スペース(民泊)」は自宅の部屋等を旅行者に貸すサービス、「移動(カーシェア)」はマイカーを貸すサービスである。新型コロナによる収入減に対応するために、身近な資産を利用してシェアサービスを提供し始めたことがうかがえる。
「スペース(民泊)」は海外からの旅行者が減った影響が懸念されたが、国内旅行者の利用が見込めることから提供を開始した人が少なからずいたとみられる。利用が見込まれる背景として、例えば、不特定多数の人が滞在するホテルの利用を避けたい場合、もしくは、家族だけの空間に宿泊し感染リスクを抑えたい場合に戸建てを利用するメリットがある。このサービスを提供開始した人は50代の割合が高い。要因として、この世代は家を所有している人が多いこと等が考えられる。
また、「移動(その他)」は、飲食店から料理を自宅等に配送するサービス提供者(例えば、Uber Eatsの配達員)が増えたとみられる。背景には、手軽に始められることと、新型コロナによって在宅時のニーズが拡大し、仕事が増えたことがある。「移動(その他)」サービスを始めた人は40代の割合が高い。育児、子供の進学、家の購入等様々な費用が掛かる年代のため、収入を得やすいUber Eatsを始めた人が多いことが考えられる。
「スキル(非対面型)」はオンラインでの料理や語学等のレクチャーや、記事執筆あるいはデータ入力を行うものである。新型コロナ禍にあり自宅に居ながら隙間時間を活用して収入拡大を図れることがサービス提供者を増やしたと考えられる。「スキル(非対面型)」を始めた人は、30代の割合が高いが、この世代は「スキル(対面型)」の割合も高いという特徴がみられた。
シェアサービスを利用し始めた人
次に、シェアサービス利用者について注目する。利用者でも新型コロナによる増加がみられる。
20年度にシェアサービスを利用し始めた人の中で新型コロナをきっかけに開始した人の割合は、高い方から、「移動(その他)」、「お金(その他)」、「移動(サイクルシェア)」となっている。「移動(その他)」は、前述の飲食店から料理を自宅等に配送するサービス(例えば、Uber Eatsの配達員)の利用拡大が背景にある。また、「お金(その他)」は寄付等を集めるクラウドファンディングであり、新型コロナで困窮した個人事業主等の支援目的などの利用が増加している。「移動(サイクルシェア)」は公共交通機関の移動による新型コロナ感染を避けるための利用や自宅等への配送サービスのための利用が拡大したとみられる。
◇◆◇
以上みてきたように、新型コロナによって飲食業、サービス業を中心に外出自粛、営業自粛の影響が広がる中、シェアサービスに対するニーズは今後も堅調に推移するであろう。またシェアサービスを提供する側も新たな収入源として副収入の必要性は高まっており、シェアサービスで収入拡大を図る動きは続くとみて良いだろう。
今回取り上げた調査結果はごく一部である。詳細は「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」(https://www.icr.co.jp/publicity/3703.html)にまとめているのでご覧いただきたい。上記データの年代別の詳細や、市場規模の予測、ユーザの特性やシェアサービス事業者との連携のメリット等を記載している。
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