ICT経済は6期連続でプラス成長、 ただしICT財生産は5期ぶりにマイナスに【InfoCom ICT経済アップデート】

情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について2024年1-3月期がまとまりましたのでご報告いたします。
【2025年1-3月期のポイント(前年同期比)】
2025年1-3月期のICT経済は、総合指標が前年同期比6.8%増と6期連続で増加した(2024年10-12月期:同4.4%増から2.4ポイント拡大)。財・サービス別にみると、ICT財生産は前年同期比1.1%減と5期ぶりにマイナスに転じたが(2024年10-12月期の同7.9%増から9.0ポイント縮小)、ICTサービスは同8.6%増と2024年10-12月期の同3.6%増から5.0ポイント拡大した(図表1)。
今期のICT経済は、供給サイドの財生産では半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置が減少に転じ、電子計算機は増加幅が縮小した。半導体製造装置の減少は、中国や台湾等への輸出が減少していることが背景にある。ICT財の在庫は、電池や電子計算機の在庫が増加し、在庫拡大局面にある。一方、ICTサービスは、ソフトウェア業、通信業の増加幅が拡大し、18期連続で増加し、増加幅が拡大した。デジタル変革(DX)の機運に伴う企業のIT投資意欲は引き続き堅調で、システム構築(SI)事業は好調であることがソフトウェア業の増加幅拡大の背景にある。
需要サイドをみると、ICT消費は4期連続で増加した。スマートフォン等の本体価格は増加に転じ、パソコンは増加幅が拡大した。パソコンについては、Windows 10のサポート終了(2025年10月予定)を見据えた買い替え需要がある。また、ICT設備投資(民需)は4期連続で増加した。電気計算機等は増加幅が拡大し、通信機は減少幅が縮小した。サーバーなどを含む電気計算機等は金融・保険業向けが増加に転じた。当該業種では、生成AIやビッグデータ分析に対応するため、高性能なサーバーの導入が進展していることが背景にあると考えられる。
ICT輸出は、金額ベースでは5期連続で増加した。品目別にみると、半導体等電子部品は増加幅が拡大したものの、半導体等製造装置は増加幅が縮小した。半導体等製造装置は対地別にみると中国や米国向けが減少し、対中国以外のアジア向けの増加幅が拡大した。ただし、数量ベースでは増加から減少に転じた。ICT輸入は、金額ベースは4期連続で増加した。品目別にみると、通信機、半導体等製造装置は増加幅が拡大し、半導体等電子部品は減少幅が縮小した。数量ベースでは2期連続で増加した。輸出入ともに、為替変動の影響がある。
今後については、ICT経済は足元では在庫積み増し局面にあるものの、AI等先端技術への需要拡大を背景に全体としては成長が続くことが期待される。ただし、米国のトランプ政権の通商政策の影響が懸念される。米国の対中制裁関税により米国や台湾企業から日本の電子部品等への代替需要の増加というプラスの影響が考えられるが、相互関税により企業が追加関税を販売価格に転嫁すれば、米国での需要が縮小し、米国への輸出が減少する可能性がある。加えて、アジア諸国など対米輸出が多い国ほど関税引き上げ幅が大きくなるため、当該国の輸出が減少し、景気の低迷リスクがある。アジア諸国は日本の主要輸出先でもあるため日本の輸出が下押しされる可能性があり、先行き不透明感が続くとみられる。
【2025年1-3月期の動向】
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比6.8%増と6期連続で増加し、前期(2024年10-12月)に比べて2.4ポイント拡大した(図表1)。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比1.1%減と5期ぶりに減少に転じ、前期(2024年10-12月)に比べて9.0ポイント縮小した(図表1)。
- 半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置は減少に転じ、電子計算機は増加幅が縮小したものの、集積回路は増加幅が拡大した(図表3)。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比10.4%増となり、前期(2024年10-12月)に比べると増加幅が8.7ポイント拡大した(図表4)。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比8.6%増と18期連続で増加した。前期(2024年10-12月)に比べて5.0ポイント拡大した(図表1)。
- 通信業、ソフトウェア業、インターネット付随サービス業は増加幅が拡大した(図表5)。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比2.8%増と4期連続で増加し、前期(2024年10-12月)に比べると2.5ポイント拡大した(図表1)。
- パソコンは増加幅が拡大した(図表6)。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比6.0%増と4期連続で増加した。前期(2024年10-12月)に比べて2.5ポイント拡大した(図表1)。
- 電気計算機等は増加幅が拡大し、通信機は減少幅が縮小した(図表7)。
- 官公需は同19.7%増と前期の減少から増加に転じた。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比8.4%増と5期連続で増加した(図表1)。半導体等製造装置は増加幅が縮小したものの半導体等電子部品は増加幅が拡大した(図表8)。数量ベースでは同1.7%減と減少に転じた。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比21.2%増と4期連続で増加した(図表1)。通信機、半導体等製造装置は増加幅が拡大し、半導体等電子部品は減少幅が縮小した。数量ベースでは同9.6%増と2期連続で増加した(図表9)。
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